第54話 対黒影戦②
一方クリフト――
巻き上がる砂煙の向こうで、黒影の輪郭が揺れている。
クリフトは魔光銃を開くと腰のポケットから魔光弾を取り出し、差し込んだ。
ガチャ――
カポッ。
ガチャン!
続けて安全装置を下げる。
カチン……
(距離……50……)
ゆっくりと銃を構える。
黒影は進路を変えず、真っ直ぐこちらに向かってくる。
クリフトは引き金を軽く引いた。
ヒュィィ――ン……
銃中央の確認窓が青白く光り始める。
(20……)
風が強まるにつれて砂煙が高く舞い上がり、黒影の姿がその向こうへ消えた。
「………。」
わずかに息を止め、耳を澄ます。
ハッ――ハッ――ハッ――
荒い息遣いだけが砂煙の向こうから届いた。
ヒュィィ――ン……
魔光弾の反応音が続く。
(10……)
黒影の息遣いが近づく――
確認窓の光も強くなる。
そして――
音が消え、青白い光だけが確認窓の奥に残る。
ハッ――ハッ――ハッ……。
聞こえていた息遣いが不意に消えた。
「………。」
頬を撫でた風だけが通り過ぎる。
静寂――
ガアァァァ!!
砂煙を突き破り、黒影が真横から飛び込んできた。
牙が見え、血走った目……開いた口の奥まで見える距離。
クリフトは身体だけを捻った。
銃口が黒影の口へ向き、迷いなく引き金を引く。
ズドォォォン!!
魔光弾が黒影の口内へ吸い込まれた。
次の瞬間――
ボバァァァン!!
黒影の身体が内側から弾ける。
広がった黒い霧は風に煽られ、そのまま崩れるように散っていった。
「………。」
やがて魔光銃の両脇から白い蒸気が噴き出した。
プシュゥゥゥ――……
熱を逃がす音を聞きながら、ゆっくり銃を下ろす。
吹き荒れていた風も少しずつ弱まり、落ちていく砂の向こうに荒野が戻ってくる――
砂煙の向こうに魔鉱三輪の影が見えた。
ブロロロ――
近づいてくる車体を見ながら、クリフトは魔光銃をホルダーへ戻す。
「お互い終わったみたいだね。」
隣へ並んだアリーシャがゴーグルを額まで上げた。
「ああ。」
「こっちの黒影も意志はあるみたいだな。」
アリーシャが荒野へ目を向けると、風に押された砂が地面を転がっているのが見えた。
「そうだね……無意識には襲ってはきてない。」
少しだけ目を細める。
「ちゃんと考えて動いてる……。」
クリフトも視線を遠くへ向けた。
(10年前から急に意志を感じるようになった……。)
吹き抜けた風が砂煙をさらっていく。
(気のせいではないみたいだな。)
「さ、戻るぞ。」
アリーシャが小さくうなずく。
ブロロロォォォ――
二台は並ぶように走り出した。
頬を抜ける風の向こうで、ハーベイの防壁が少しずつ大きくなっていく。
アリーシャは前を向いたまま操縦桿を握り直した。
クリフトも速度を合わせ、二台はそのまま街へ向かった――




