第44話 魔鉱石
同時刻――ダンゲルの屋敷。
紅茶の湯気がゆっくり揺れる中、マーベリックは向かいに座るダンゲルへ視線を向けた。
「ダンゲルに聞きたいことがある。」
「なんだ?」
「この屋敷の結界はテセルス式だな?」
その言葉に、ダンゲルの眉がわずかに動く。
「よく気付いたな。ただそれだけじゃない。」
そう言うと椅子から腰を上げ、窓際へ歩いていく。
窓から差し込む光の中で、置かれていた魔鉱石の欠片を手に取った。
「テセルスより、ここの結界は強い。」
マーベリックは顎髭を撫でながら目を細める。
「たしかに……魔力が吸収されるような……そんな感じだ。」
ダンゲルが口元を緩めた。
「吸収……遠くない答えだ。」
戻ってくると、そのまま魔鉱石をテーブルへ置く。
小さな音を立てて転がった欠片へ視線を落としながら言った。
「触ってみろ。」
マーベリックは手を伸ばし、指先で魔鉱石に触れた。
「……。」
トクン……
トクン……
指先から伝わる微かな振動に、思わず眉を寄せる。
「鼓動……生きているのか?」
ダンゲルは椅子へ深く腰を下ろした。
「俺達の源……それが魔鉱石だ。」
「源……。」
ダンゲルは手元の魔鉱石へ目を落としたまま続ける。
「大地を潤し……風を吹かせ……」
「海を揺るがし……命を宿す……。」
わずかに息を吐く。
「魔鉱石は生きている……。そうかもしれんな。」
その横顔を見ながら、マーベリックは再び魔鉱石へ視線を戻した。
(魔鉱石には別の力がある……。)
「この結界も屋敷にある魔鉱石の結晶から力を借りている。」
ダンゲルが指先で机を軽く叩く。
「吸収というより中和だ。」
互いの目が合う。
「魔鉱石は、均衡を保とうとしている……。」
「均衡を?」
「ま、これは俺の推論だがな。」
ダンゲルはカップを手に取り、紅茶をひと口飲んだ。
マーベリックも湯気の向こうに揺れる魔鉱石を見つめる。
(均衡を保つ……何と?黒影か?それとも別の何か……。)
「ずいぶん難しい顔になったな。」
ダンゲルがニヤリと笑う。
「魔鉱石に関しては、俺より北の鉱山都市、さらに北にある魔鉱石研究所の連中のほうが詳しい。」
「俺も、まだ勉強中の身……なんでな。」
「ああ。気になったんで時間が出来たら行ってみようと思う。」
「今、地盤調査で、海底都市の連中が来ている。今度会わせてやる。」
「すまない。」
マーベリックは紅茶へ軽く息を吹きかけ、そのままひと口飲んだ。
向かいでは、ダンゲルがテーブルに肘をつき、顔の前で手を組む。
「俺からも一つある。お前と共有したいことがな。」




