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風は巡り、再び戻る。~風に導かれた出会い~  作者: Masa&G
第1章 ハーベイの魔道士編
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第26話 報告

足裏の感触が砂から板へと変わる。扉に手をかけ、そのまま押し開くと外の空気が流れ込み、声が奥へ届く。


「ターニャ!戻ったぞー。」


声を張ると同時に、室内の静けさがわずかに揺れる。奥から足音が近づき、ターニャが顔を出す。


「あ、お帰りなさい。海はどうだった?」


視線が自然とウェンティへ向く。頬に残る塩気を舌で確かめるようにしながら、眉を寄せる。


「景色はよかったが飲んだらよくなかった……。」


その顔を見て、ターニャの動きが一瞬止まる。


「え……飲んだの?」


横で靴を脱ぎながら、マーベリックが肩をすくめる。


「強制的に波に飲まされた。」


すぐ横から視線が刺さるのを感じる。


「マーベリック……言うな。」


低く押し出すような声に、マーベリックは口元を緩めたまま何も返さない。


そのまま三人は部屋へと入り、椅子の軋む音とともに空気が落ち着いていく。湿った衣服が乾ききっていない感覚がまだ残る中、ターニャが台所へと向かう。


「今紅茶煎れるね。」


その背を目で追いながら、ウェンティの頬がわずかに緩む。


「おぉ。わしはターニャの紅茶好きじゃ。」


自然とこぼれた声に、ターニャが振り返り、柔らかく笑う。


「ふふふっ。待っててね。」


足音が離れていく中、残された空気に小さな静けさが落ちる。椅子に体を預けながら、マーベリックがふと口を開く。


「そういえば海にエディの姿が見えなかったが……。」


視線だけを台所の方へ向ける。


「あ、ごめんなさい。漁場は反対側なんだ。もうそろそろ正午だから帰ってくるはずだよ。」


返ってきた声に、わずかにうなずく。


「そうか。」


天井へ視線を流すと、木の梁の隙間から差し込む光がわずかに揺れているのが見える。


――


1時間後――


戸が開く音とともに、外の気配が室内へ流れ込む。


「今戻った。」


その声に、ターニャがすぐに反応し、足を向ける。


「お帰りなさい。」


背後から椅子の動く気配。


「戻ったか!」


「大変だな。朝早くから。」


声をかけられながら、エディは肩の力を抜くように荷物を下ろす。


「やれることはやらないとな。」


そのまま息を整えようとしたところで、ターニャが一歩近づく。


「エディ。ちょっと。」


視線で台所を示され、軽くうなずくとそのまま後を追う。二人の距離が離れ、水の音と火の気配が混ざる場所へと入っていく。


声を落として交わされるやり取りは、外までは届かない。


――


戻ってきたエディが視線を上げると、さっきと同じ場所に二人がいる。


「マーベリック、ウェンティ。二人が海に行ってた時にリアが来たみたいだ。」


言葉を置くと、マーベリックが顔を上げる。


「リア?ハーベイの魔道士だったな?」


「ああ。そうだ。ダンゲルさんが二人と面会したいと伝言を残していったそうだ。」


記憶をたどるように一拍置いてから続ける。


「今日の17時、ダンゲルさんの屋敷で。案内にリアがまた迎えに来るそうだ。」


言い終えたところで、台所から足音が戻る。湯気とともに紅茶の香りが広がり、空気がやわらぐ。


ターニャがカップを一つずつ配り、その動きを追うように、ウェンティの表情が緩む。


「じゃあ俺達は時間まで待っていればいいんだな?」


カップを受け取りながらマーベリックが言うと、エディは小さくうなずく。


そのままマーベリックはカップを口元へ運ぶ。立ち上る湯気が視界をわずかに曇らせる中、意識が内側へ沈む。


(俺はダンゲルを知ってる…向こうも俺を覚えているだろうな……。)


温かさが喉を通り、胸の奥にわずかな重さだけが残る。


――


3時間前、ダンゲルの屋敷――


扉が開く音とともに光が差し込み、その中をリアの足音が静かに進む。


「ただいま戻りました。」


声を落としながら頭を下げると、机に向かっていたダンゲルが手を止める。


「ああ。ご苦労だったな。」


低く返された声に、リアはそのまま一歩距離を詰め、再び会釈する。


「ダンゲル様、ターニャからお二人の名前を聞きました。」


顔を上げ、言葉を続ける。


「マーベリックとウェンティ。」


その名を口にした瞬間、ダンゲルの手が止まる。


「マーベリック?」


ゆっくりと顔を上げる動きに合わせて、視線がリアへ向く。


「はい。」


短く返すと、再び静けさが落ちる。


「そうか。」


その一言だけ残し、視線は再び書籍へ戻る。


(マーベリックか……。)


ページに落ちる光がわずかに揺れる中、思考だけがそこに残る。


机の前に立つリアは手を前で組み、わずかに視線を落とす。動かない空気の中で、木漏れ日が書籍の端を照らし、紙の白さがやわらかく浮かび上がっている。

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