第15話 ハーベイの魔道士③
同時刻、馬車内――
外壁の上に浮かぶ青白い光を、揺れる視界の端で捉えた瞬間、背筋にざらりとした感覚が走る。
「蒼雷が来るぞ!ちゃんと掴まってろよ!」
荷台の板に手を叩きつけるように掴み直し、揺れに合わせて体を沈める。隣でウェンティも同じように力を込め、指先が軋む。
ふと、外壁へ視線を引かれる。
(あの光…電撃か?)
滲むような青白い光の縁から、細い電流が空気を裂いて漏れ出し、肌に触れる前から刺すような気配を伝えてくる。
すぐ背後、黒影の荒い息遣いが耳のすぐ近くまで迫る。
「ウェンティ!低く屈め!感電する可能性がある!」
叫びと同時に体をさらに沈めると、ウェンティも慌てて身を折り、荷台に張り付くように伏せた。
光が一段と強まり、視界が白く弾ける。
次の瞬間、光の矢が一直線に走り――
ゴゴゴゴ――
腹の奥に響く低い振動とともに、閃光が馬車のすぐ脇をかすめていく。
バシュシュシュ!!
弾けた光が一瞬、馬車ごと包み込み、そのまま背後の黒影を貫き、跡形もなく消し飛ばした。
残った電流が、荷台の木板を這うように微かに走る。
「な、なんじゃ……光の塊が黒影を一撃で貫通した……。」
ウェンティの声が、まだ揺れの中でわずかに震える。
(間違いない…覚えてる…水で電流を作ることが出来るのは一人だけ……。)
喉の奥で息が止まり、知らず歯を食いしばる。
――
同時刻、ハーベイ外壁上――
ピシッ……ピシシッ……。
空気の表面を這う残り電流が、細く弾けながら周囲に散っていく。
「一体消滅。」
荒野から目を離さず、リアが短く告げる。
「よし。二撃目、出すぞ。」
その声に合わせるように、ダンゲルの腕に再び電流が集まり始め、空気がわずかに震える。
「はい。次は馬車の真後ろに位置するため、上方向から下に誘導します。」
淡々とした報告の中で、視線だけが正確に動きを追っている。
「同じく蒼雷出力30…距離850…速度57…。」
数値をなぞる声とともに、呼吸がゆっくりと整えられていく。
ダンゲルが腰を落とし、狙いを定めるように構えた瞬間、周囲の音がわずかに遠のく。
――
再び馬車内――
「さすがダンゲルさんだ!このまま二撃目が来るぞ!」
揺れに耐えながら顔を上げ、街へ伸びる一直線の道を見据える。
馬車は速度を緩めることなく、ただ前へと走り続ける。
再び、外壁の上に青白い光が灯り、次の瞬間には視界が弾けるほどの輝きへと膨れ上がる。
「体勢!低くしろ!頭上を通る!」
声に合わせて三人の体がさらに沈み、荷台に押し付けられる。
ゴゴゴゴ――
背後から迫る気配が、空気ごと押し潰すように近づいたその瞬間――
黒影が馬車へ飛びかかる軌道に、重なるようにして蒼雷が落ちる。
バシュシュシュ――
閃光がそのまま黒影を貫き、影は形を保つ間もなく霧散した。
「ひゅ~、ダンゲルさん遠慮なしだな。」
揺れの中で息を吐きながら、かすかに笑いが漏れる。
(あと一体…大型がが残ってる。)
胸の奥で感覚が引き締まり、視線が自然と後方へ向く。
(しかもこいつの動きは変だ…蒼雷の軌道を読みにきてる動きをしている。)
違和感が確信へと変わり、背中に冷たいものが走る。
ハーベイの街まであと700――




