表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/49

第10話 下山①

夜明け前――


ひんやりとした空気が肌にまとわりつき、息を吸うたび胸の奥まで冷たさが通っていく。足元の水際にしゃがみ込み、手ですくった水を顔に当てると、その冷たさで意識が一気に引き締まる。


バシャバシャ


(ふぅ…やはりこの辺には黒影は出ないのか……。)


水滴を払うように顔を上げ、静かな湖面を見つめる。


(山の向こう側ももしかしたら安全な場所なのかもな。)


布で顔を拭いながら立ち上がり、そのまま寝床の方へと足を向ける。視界の端で空がわずかに明るみを帯び、朝日がゆっくりと顔を出すと、その光が水面に落ちて細かく揺れ、きらきらと反射していく。


「ウェンティ。そろそろ起きろ。」


横になっているウェンティへ声を落とす。


「ん……。」


わずかに体が動き、もぞもぞと布の中で身じろぐ。


「……。」


再び静けさが戻る。


マーベリックは小さく息を吐き、ウェンティにかけてあったマントをめくる。中で丸くなっていた体がわずかに縮まり、そのままゆっくりと伸びる。


「さぁ、起きろ。」


「ん…ん、起きる…起きるぞ…。」


寝ぼけたまま上体を起こし、ふらりと揺れる。


「湖で顔洗ってこい。目が覚める。」


声に従うように、ウェンティは目をこすりながら立ち上がり、そのまま湖へと歩き出す。足取りはおぼつかず、今にも崩れそうで、その様子を横目に見ながらマーベリックは寝床を片付けていく。


「大丈夫か…?」


背中越しに声をかけるが、返事はない。


「寝ながら向かってないか?あれ……。」


次の瞬間、水際に踏み込んだ片足が沈み、体勢が崩れる。


バシャッ!


「わわっ!」


バシャァァン!!


前のめりに、そのまま体ごと水へと突っ込んだ。


「言わんこっちゃない!」


思わず声を上げ、マーベリックは駆け出す。濡れたウェンティのもとへと一気に距離を詰め、水面に手を差し伸べる。


「大丈夫か?」


引き上げられたウェンティは、全身びしょ濡れのまま顔をしかめる。


「おかげで目が覚めたわ……。」


「はっはっは。また乾かしてやる。」


「笑うな……。」


むくれた顔のまま口を尖らせる。


そのまま二人は畔に腰を下ろし、マーベリックが風を起こすと、湿った衣服と髪がやわらかく揺れ、温もりを帯びた風が全身を包み込んでいく。


「ん―…暖かくて心地良いのぅ……。」


目を閉じ、力を抜いたウェンティの前髪が風に揺れる。


「昨日も同じことしたよな?」


「そうじゃな……。」


乾いていく感触を確かめるように肩を動かす。


「マーベリックはわしの乾かし係じゃな。」


どこか誇らしげに言い切るその様子に、マーベリックは小さく笑う。


「だいぶ乾いたろ?片付けたら行くぞ。」


「見えた集落まで距離だいぶあるからな。」


ウェンティは立ち上がり、服についた砂を手で払い落とす。


寝床を片付け終え、二人は山の反対側へと向かい、昨日立った場所へと足を運ぶ。朝日が大地を照らし始め、視界の奥まで光が広がっていく。


「よく見ると集落というよりは街だな。」


目を細め、遠くを見据える。


「しかも昨日は気づかなかったが海沿いだ。」


風が二人の間を抜ける。


「人がいっぱいいるのか?」


「ああ。あの大きさの街ならいるだろうな。」


「よし、山を下りるぞ。」


ウェンティがうなづき、そのまま二人は斜面を下りていく。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ