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【第7回:鳴り止まない多局着信と、母のSOS — 善意のネットワークの限界】

1. 地域の善意で繋ぎ止めた、脆弱な生命線

母の「家で暮らしたい」という願いを支えるため、もはや家族やケアマネジャーだけの力では足りなかった。

母は「自分の名前と住所」は言える。しかし、道が分からない。誰かに尋ねるたびに、親切な通行人や店の従業員の方が状況を察し、110番通報をしてくれる。


その結果、私の携帯には、時間に関係なくあらゆる方面からの着信が刻まれるようになった。


警察(数カ所)、消防、市役所、近所の方、近所のスーパー、ドラッグストア、小児科、郵便局、病院……。

画面を埋め尽くす着信履歴は、母の生命線が、地域の人々の「善意」という細い糸で、かろうじて繋ぎ止められていることを示していた。


2. 申し訳なさと、他に手段のない絶望

警察署へ迎えに行くこと8回以上、パトカーでの保護も5回以上に及んだ。

近所の店舗の従業員室には、母の写真と私の連絡先が貼り出されていた。お世話になっている方々への申し訳なさで胸が締め付けられる思いだったが、当時の私には、これ以上の手段がどこにもなかった。

小規模多機能のサービスを限界まで活用してもなお、インシデントは発生し続ける。「無理」の一歩手前で、全員が首の皮一枚で繋がっているような状態だった。


3. 苛立ちのSOSと、やるせない独白

そんな極限状態の中、2022年9月26日、母から一本の電話が入る。

それは弱音ではなく、「ずっと一人で住むつもりはない!どうすればいいのよ!」という、怒りに満ちた八つ当たりだった。


自身の衰えを頑なに認めず、制御不能な日々に苛立ち、その矛先を私にぶつけてくる母。私はその電話を冷静に聴きながら、やるせない思いにかられていた。

母は認知症ゆえに「覚えられない」のだから仕方ない。それは分かっている。


だが、認知症であることを認めないその頑なさが、どれほど周囲を削ってきたか。父を「他人」と認識し、殺意すら抱いた母。その暴走から父の命を守るために、私は苦渋の決断で父を施設へ送らざるを得なかったのだ。

そんな母に何も言えず、黙ったまま悩み、そのストレスで自らの認知症を進行させてしまったであろう父。それらを思うと、母に対して「自業自得ではないか」と心の中で責める自分がいた。


しかし、病のせいで本人はそのことすら分からない。

本人には決してぶつけられないその「責めたい気持ち」の行き場はなく、私はただ、親子の絆を壊し、父を追い詰め、母を変えてしまった「認知症」という病そのものを、激しく憎んだ。


4. 【提言】「申し訳なさ」が限界のサイン

地域や行政に迷惑をかけているという「申し訳なさ」で心が折れそうになった時、それは決してあなたの努力不足ではない。

それは、一人の人間を「在宅」という環境で安全に運用するコストが、社会のリソースをもってしても賄いきれなくなったという客観的なアラートだ。


親がキレながら放った「どうすればいいのよ!」という言葉。

私はそれを、親不孝への誘いではなく、「次の安全な環境へ移行マイグレーションせよ」という、母からの正式なラストオーダーとして受け止めることにした。


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本作はXでの投稿を再構成したアーカイブですが、Xでは『今この瞬間』の気づきや、VR空間での試行錯誤をダイレクトに綴っています。ぜひ覗いてみてください。

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