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第16話:考えられること

「そういえば、私が最初に起きてからアウラを解雇させてまた眠った時、ローラさんに会えなかったですよね?」


 2人での作戦会議中、カンナはふと浮かび上がった疑問を口にした。

 

「ええ、確かにそうでしたね。私はてっきりカンナさんが身体に入ったから仕方のないことだと思っていたのですが……」

「でも今こうして話せてるって事は……眠りの深さが関係してる、とか?」

「ん〜……それはあり得そうですけど、昨夜は一度起きてからまた起きるまでに、数時間ありましたし……」

「ですよねぇ」


 うーんと頭を悩ませる2人。すると、ローラが「あっ!」と声を上げた。


「疲労ではないですか?」

「疲労?」

「カンナさん、今日は何度か腕を伸ばす仕草をしていましたし、私に成り代わる為の言動にも注意していましたよね?さっきも緊張していたと言っていましたし……あれだけお父様達と口論して、使用人への躾もしたんですから、相当疲れていたのでは?」

「なるほど〜!確かにめっちゃ疲れてはいましたね。休憩ついでに寝落ちしちゃったし……」


 だから目の前にまたローラが現れたことにカンナは驚いたし、喜んだわけだ。


「では、これも一つの仮説としましょう。疲労が溜まってる状態でぐっすり眠ると、この精神世界に戻ってこれる……と」

「そうですね。考えられる可能性は多い方がいいですし」


 彼女達の作戦会議では、話し合っていくつかの仮説を用意しておくのが通例になっていた。ラグナ達がロディアス達に加担していた可能性も、そうだと決めつけるよりも、最初は仮説の一つに収めていた。実際はその仮説が正しかったのだが、もしもの事を考えての作戦も、2人は念の為に考えている。

 

「私は、可能ならカンナさんとこうしてお会いして、いつでもお話したいんですが……」

「私もですよ〜!でも状況が状況ですからねぇ。できるならなるべくそうしたいところなんですけど……あっ、じゃあこうするのはどうですか?」


 何か閃いたカンナにローラは「なんですか?」と聞き耳を立てる。


「体力作りをしましょう!ローラさんってさっきも言いましたけど細過ぎるし、これからちゃんと死ぬためには体力も必要だと思うんです」

「なるほど……それは私も賛成です!でもそれがどうして疲労に……?あっ、そういう事ですか!」


 カンナの話に一瞬首を傾げたローラも、意味を理解した。要するに、運動して体力を作ると同時に、身体に疲労を溜めていくという事だ。


「まだ仮説ではありますが、試してみる価値はありそうですね」

「そうと決まれば早速やってみましょう!……って、あっ!もうこんな時間!そろそろ起きたほうが良いですよね?」

「そうですね。今出た仮説も検証したいし、他の話もだいぶ纏まりましたし……部屋に鍵をしていましたから、お父様達が中で何をしているのかと焦っているかも」

「それはそれで見たいですけど、流石に今日は意気消沈してるんじゃないですか?」

「ふふ、確かにそうかもしれませんね。カンナさんの言葉であんなに取り乱してましたし」


 悪戯っ子のようにクスクスと笑い合う2人。

 

「じゃあ行ってきます。一旦今日はやるべき事全部終えてるんで、仮説が正しいか証明する為に食事とか運動とか色々済ませたら、またここに来れるか試してみますね!もし来れなくても、来れるように頑張ります!それまで待っていてください、ローラさん!」

「ええ、ずっと待っています!」


 そうしてローラと別れたカンナは、身体へ意識を集中させる。最初に目覚めた時もこうして意識を集中させていたのだ。ならば要領は同じはず。集中するカンナの傍で、ローラは祈るように手を組んだ。


「カンナさん、どうかご無事で」










「んっ……あ……?おぉっ……?」


 次に目が覚めた時、カンナの視界に映ったのはローラの部屋の天井。


「戻って来れた……!」


 そう喜んで起き上がると、身体の節々の骨が鳴った。


「ん〜変な体勢で寝てたからちょっと身体痛い……でもローラさんと話せたし結果オーライかな」


 そうして立ち上がったカンナは、鏡の前で身なりを整えると、鍵を開けて部屋を出る。


「あっ、ローラ姉様!」


 しかしカンナが部屋を出てすぐ、扉の傍でしゃがみ込んでいたルイに遭遇した。


「ルイ……何しに来たの?」

「あ、えっと」


 カンナがそう聞けば、ルイはその鋭い視線にビクッと震えながらも言葉を続けた。


「ローラ姉様と、ちゃんとお話出来ていなかったので」

「お話?……ああ、朝食の時の」

「あの、僕はローラ姉様を下に見た事はないです!本当なんです!」

「待ちなさい。ここは廊下だから一度私の部屋に入って、話はそこで聞くわ」

「は、はいッ!」


 ルイを部屋に招き入れたカンナは、彼を部屋にあった適当な椅子に座らせる。その正面に来るように、彼と向かい合うように椅子に座ったカンナは、緊張しているルイを真っ直ぐに見つめる。


「話す前にこれだけは言っておくわ。覚えておきなさい」

「は、はい」

「サロンでも話した通り、私は貴方の姉であるローラじゃないわ。それを分かった上で話をするのよ。いい?」

「ッ……はい」


 カンナの厳しい言葉にも、ルイは姿勢を正してそう返事をした。それを聞いたカンナは、ルイの話を聞く体勢に入った。


(ルイくんって、私の世界だと中学1年生くらいだっけ……初めて顔を見た時はそれよりも幼く感じたけど、今は年相応って感じがする)


 カンナが思わずそう思ってしまうくらいには、出会った頃のルイはエリーラやレオンから過保護に守られていたように思う。だが、自分の意思でここへ来たであろう彼の目には、カンナと……いや、ローラときちんと向き合うという覚悟を感じられる。


「僕は……ローラ姉様の事が大好きでした」


 ルイは、静かに話し始めた。

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