第28話 王都で買った種から『災厄の妖精』が爆誕した。
タロウは岩竜テーブルの横で、「よし、果樹園の前にまずは夏野菜を植えるぞ!」と王都で買った種を土に埋めた。
「ウーちゃん、お水よろしくー」
腰のジョウロ(水精霊王)がドヤ顔で極上の清流を注ぐと、Sランクの土壌の力も合わさり、種は一瞬で発芽。大人の背丈ほどある、神秘的な光を放つ巨大な『つぼみ』が膨らみ始めた。
「待って……あの魔力、ただの花じゃないわ! あれは伝説に聞く『災厄の妖精』の……!」
クロエが顔面を蒼白にして短剣を構えた、その瞬間。
ポンッ!
花が弾け、まばゆい光と共に小さな影が飛び出した。
中から現れたのは、キラキラと光る鱗粉をまとった、手のひらサイズの小さな妖精だ。
妖精は目をパチクリさせると、自分に極上の魔力(水と土)を与えてくれたタロウを真っ直ぐに見つめた。そして、弾丸のようなスピードで飛んできて、タロウの鼻先にピタッと抱きついた。
「……パパぁっ!!」
「ええええええええ!? 災厄の妖精が、なんでただの農家をパパって呼んでるのよ!!」
セシリアが絶叫するが、タロウは1秒の迷いもなく満面の笑みを浮かべた。
「おっ、花からすっごい可愛い女の子が生まれたぞ! そっかそっか、俺が種から育てたんだから、俺がパパか! よーし、初めまして! パパですよー!」
「ぱぱー!」
タロウは妖精をそっと両手で包み込むと、自分の『麦わら帽子の上』に乗せてやった。妖精はそこがすっかり気に入ったのか、タロウの頭の上を特等席にして、嬉しそうに小さな足をパタパタさせている。
「うーん、でも困ったな」
タロウが腕を組んで、植えたばかりのトマトやキュウリの苗を見下ろした。
「ここは南の島だけど、夜は少し海風が冷えるから、夏野菜の苗には厳しいかもしれない。本当は、温度を一定に保てる『ビニールハウス』みたいなものがあれば一番いいんだけど……」
その言葉を聞いた瞬間、麦わら帽子の上にいた妖精娘がパッと立ち上がった。
「パパ! わたし、おてつだいするー!」
「おっ? どしたの?」
妖精娘はタロウの頭からふわりと飛び上がると、くるくると楽しそうに宙を舞い、キラキラと輝く鱗粉を畑の周囲に振りまき始めた。
それは本来、国一つを光の空間に閉じ込め、外界のあらゆる物理・魔法干渉を完全にシャットアウトする
『絶対封印指定の古代魔法』の発動詠唱。
シュゥゥゥン……!
畑の上空を覆うように、見えないけれどほんのりと温かく、完璧に温度と湿度が保たれた『光の半球ドーム』が形成された。
「うわーっ! 中がすっごくぽかぽかしてる! 外の風も全然入ってこないぞ!」
「お前、魔法で『ビニールハウス』作れるのか! これなら一年中、最高に美味しい夏野菜が育てられるぞ! よしよし、すっごく偉いぞー!」
タロウが指の腹で優しく頭を撫でてやると、妖精娘はタロウの頬にすりすりとおでこを擦り付けた。
「えへへー! パパ、やさしい!」
「……神話の時代に魔王を封印した絶対結界が、ただの『温室』に使われてるわね」
「なんで伝説の封印魔法でトマト育ててるのよぉぉ!!」
「よーし、これで夏野菜が安定するぞ!」
「えへへー! パパだいすき!」
畑の外では、岩竜が結界に触れないようにそっと距離を取っていた。
こうしてタロウは、災厄の妖精の「パパ」になった。
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