第26話 人間組の死闘。暗殺者の分析、姫騎士の盾、そして勇者の『クワ』
ズンッ……ズンッ……と地面が揺れ、圧倒的なプレッシャーに空気が重くなる。
前方の木々をへし折りながら姿を現したのは、見上げるほど巨大な『猿の化け物』だった。全身から赤黒いオーラを放ち、その眼は明確な殺意に満ちている。
「……最悪。あれ、Sランク手前の災厄級魔獣……『災厄の魔猿王』よ」
クロエが冷や汗を流した、その瞬間だった。
『グルオォォォォッ!!』
魔猿王が両腕を高く振り上げ、大地へと叩きつけた。
ドゴォォォォンッ!!
大地が爆発し、凄まじい土砂と赤黒い衝撃波が三人を容赦なく飲み込もうとする。
「王家の名に懸けて! ここは一歩も通さないわ!!」
セシリアが前に飛び出し、白銀の盾『聖騎士の盾』で衝撃波を真正面から受け止める。
ピキリッ……!
防ぎきれないほどの圧倒的な威力に、強固な白銀の盾にヒビが入り、セシリアの顔が苦痛に歪んだ。
「くっ……! なんて馬鹿力……!」
さらに魔猿王は、追撃とばかりに口を開き、辺りの酸素を奪うような巨大な『業火の火球』を練り上げ始めた。
「させないわ!」
クロエが瞬時に死角へ回り込み、首筋へ短剣を突き立てる――ガキィッ!!
だが、鋭い刃は分厚いオーラに弾かれ、突風の余波でクロエの頬に一筋の血が滲んだ。
「……ッ、なんて硬さ。でも、分かったわ。奴のオーラは胸と関節が薄い……狙うならそこよ!」
暗殺者の冷静な分析が響く中、魔猿王は鬱陶しい小蝿を潰すかのように、引っこ抜いた大樹を真正面の男へと全力で振り下ろした。
巨大な魔猿王と大樹の影が、勇者アレンを完全に飲み込む。
――だが、勇者は一歩も退かなかった。
彼の手にあるのは、輝く聖剣ではなく、一本の使い込まれた『クワ』。
クワを握った瞬間、アレンの脳裏に、タロウと共に汗を流した過酷な『農業(修行)』の日々が鮮明に蘇る。
(そうだ……師匠は言っていた。「どんなに根深い雑草も、根元を見極めればスッと抜ける」と……!)
「二人とも、見事な連携だ! セシリア、光を!」
「ええっ! 輝け、『白銀の光剣』!!」
セシリアの剣が太陽のような閃光を放ち、魔猿王が一瞬だけ目を眩ませる。
その隙を突き、クロエが投擲した三本のナイフが、オーラの薄い関節(膝と肘)に正確に突き刺さった。
『ギィッ!?』
「今だ!! タロウ師匠直伝! 雑草の根を的確に踏み潰す足捌き……『草むしりステップ』!!」
アレンは奇妙かつ完璧な軌道で大樹の薙ぎ払いを躱し、魔猿王の懐へと潜り込んだ。
勇者の莫大な魔力が、ただの『クワ』の刃に一点集中する。
「凝り固まった土を粉砕する究極の農作業……『天地返し(クワ・スマッシュ)』!!」
ズドォォォォォォォン!!!
クワの刃が魔猿王の胸に叩き込まれた瞬間、強固な赤黒いオーラが、まるで『耕された畑の土』のようにボロボロと崩れ去った。
防御を完全に貫通された魔猿王は、白目を剥きながら数百メートル後方へと吹き飛ばされ、ジャングルの木々を何本も薙ぎ倒して地面に激突した。
「……はぁ、はぁ。さすがは災厄級……手強い『雑草』だった……」
「いや強っ!? なんで農具で災厄級のオーラ砕けるのよ!!」
「……腰の鞘で、一度も抜かれてない聖剣が泣いているわね」
息を切らすアレンに、ボロボロになったセシリアとクロエが全力でツッコミを入れる。
『……ッ!? ギ、ギィィィィッ!!(あいつらヤバい!!)』
吹き飛ばされた魔猿王は、クワを持つアレンを見て本能的な「死の恐怖」を覚えた。
あんな異常な武器で自分を殴り飛ばす人間など、絶対にまともではない。
魔猿王は涙目で立ち上がると、一目散に「安全そうな中央の開けたエリア(タロウのベースキャンプ)」へと逃げ出していった。
「あっ! 逃げたわよ! しかも中央エリアの方へ!」
「まずい! あっちにはタロウが一人で残っているはずよ! 合流しましょう!!」
強敵を退けた三人は、武器を構え直し、慌ててタロウのいる中央エリアへと走り出すのだった。
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