第25話 恐怖のグループ分け。災厄の魔猿と、勇者の『クワ』覚醒
「ポチたちは南の森で遊んでおいでー。今日のバーベキュー用のお肉もよろしくね!」
タロウが軽く手を振ると、ペット軍団は神話級の殺気を撒き散らしながら、南の森へダッシュしていった。
「セシリア、クロエ、アレンの三人は北側をお願い! 俺は中央の開けた場所で、みんなが休めるベースキャンプを作っておくよ!」
アレンは静かに立ち上がり、セシリアの肩に手を置いた。
「……行くぞ。タロウ師匠の言う『安全』は次元が違う。俺たちが心配するべきは、自分たちの命だ」
◆ ◆ ◆
びくびくしながら北の森を進む人間組の三人。
突然、森から鳥たちが一斉に飛び立ち、不気味な静寂が落ちた。
ズンッ……ズンッ……と地面が揺れ、圧倒的なプレッシャーに空気が重くなる。呼吸するだけで肺が潰れそうだった。三人は本能的な恐怖でその場から動けなくなる。
前方の木々をへし折りながら姿を現したのは、見上げるほど巨大な『猿の化け物』だった。全身から赤黒いオーラを放ち、その眼は明確な殺意に満ちている。
「……最悪。Aランクどころじゃないわ。あれ、Sランク手前の災厄級魔獣……『災厄の魔猿王』よ」
言い終わるが早いか、クロエが瞬時に魔猿の背後へ回り込み、首筋へ愛用の短剣を突き立てる――
ガキィッ!!
「くっ……!」
だが、その鋭い刃は分厚い赤黒いオーラに容易く弾き返された。
暗殺者の本気の一撃すら通じない。その圧倒的な絶望の前に、勇者アレンはポツリと呟いた。
「……詰んだな」
「勇者が諦めないでよぉぉ!! 聖剣抜いて!!」
セシリアが叫ぶ。
しかし、アレンは聖剣の柄には手をかけず、背中に背負っていた『使い込まれたクワ』を静かに構えた。
「だが……タロウ師匠の畑で毎日素振りをし、鍛え抜かれたこの筋肉と『クワ』があれば……!」
「えっ?」
「災厄の魔猿王よ!! 極上の畑の肥料にしてくれる!!」
「だからなんで聖剣抜かないのよぉぉ!!」
セシリアの悲痛なツッコミが、ジャングルに響き渡った。
◆ ◆ ◆
一方その頃。
島の中央エリアに一人残ったタロウは、遠くから聞こえる音に耳を傾けていた。
ドゴォォォォン!! キャイン! ギャウゥゥン!!
南の森からは、ペットたちがSランク魔獣を遊びで蹂躙している信じられない規模の爆発音が。北の森からは、セシリアの悲鳴と魔猿の咆哮が聞こえてくる。
「おっ、みんな元気よく開拓してるみたいだな! よーし、俺も負けずに最高のキャンプ地を作るぞー!」
タロウは呑気に麦わら帽子を直すと、目の前の地面を見つめた。
そこには、島の中央で眠る巨大なSランク魔獣『大地の岩竜』の岩のような背中が広がっていた。
「いい感じに平らな巨大岩があるじゃん。ちょっとゴツゴツしてて邪魔なところを削るか」
タロウはそれがSランク魔獣だとは微塵も気づかず、満面の笑みで愛用のクワを高く振りかぶった。
クワが振り下ろされる瞬間――
巨大な瞳が、ゆっくりと開いた。
その視線の先には――満面の笑みでクワを振り下ろす男
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