表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
二章 切り札

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

150/150

第四十四戦

「……外で待機しております。準備が出来ましたら、またお呼び下さい」


「ありがとう」


 姫は、そう言うとクローゼットから自身の着替えを取り出し、窓の外を見下ろしながら着替えを始める。


 今の状況は、良くない。これを打破するためには、外にいる陸軍達を宮殿の中にいれて陸海軍の均衡を再び正常に戻す必要がある。窓は閉められてるわね…… 割って、叫べば助けを求められるかしら。いや、流石に聞こえないか。割るだけ損ね。騒ぎが大きくなるだけ。賭けるわよ……


「ルカ? 開けて良いわよ。準備出来たから」


 姫は、ポケットの中に銃を隠すと扉の前に仁王立ちする。


「失礼します…… わっ! 本当に一人で着替えられたんですね。下着のまま出てくるんじゃないかとドキドキしてましたよ」


「ハラハラしなさいよ。その感じだと、さいあく私が下着のまま出ても止めなかったでしょ貴方」


「まさか…… リアナ皇女ばかりに恥をかかせるわけにはいきません。その時は…… 私も脱ぎます!」


「やめて。二倍恥だから。で? 海軍達は、どこに行ったの?」


 辺りを見渡す、姫を横目にルカは、考える様な素振りで応える。


「皆さん、下の階に向かってましたよ。多分、図書館とかじゃないですか?」


「そう。なら、急いで向かった方が良いかもね」

 姫は、部屋を後にする。


「あらあら、随分と時間がかかるんだねリアナ皇女。何時になったら部屋から出てくれるのかと待ってたんですよ? ほら、早くやるよ!」


 部屋を出るとすぐ、ビアンカと、そのメイド達が部屋の中へと進んで行った。思わず、ルカを見つめる姫。


「何で言わなかったの?」


「勘弁して下さいよ。こっちだって色々と立場があるんですから!」


「まあ、いいわ。行きましょ」


「待ちなリアナ皇女」


 ビアンカが、そう言うと姫の足が止まる。


「随分と物騒な物を持っているみたいじゃないか。そんな物持ち歩いてどうするきだい?」


「護身用よ」


「自決用の護身用かい? 訳わかんないね。どうせ、出来やしないんだから。間違えて誰かやっちまう前に早く渡しな」


「出来ないってどう言う意味かしら?」


「自分に銃口向けたんだって? 撃てもしないのに何やってんだか。いいかい。それが出来るのは失う物が何も無い奴だけさ。リアナ皇女。あんたには失う物が多すぎるのさ。まあ、良いさ。間違えて撃っちまった時は私に言いな。その時は、身代わりになってあげますから」


「余計なお世話ね……」


 階段を下る姫、ビアンカに失礼しますと一礼をし、姫の後をルカが追う。しばらくすると、人集りが目に入る。図書館付近に多くの海軍兵が押し寄せる。


「そんなに、集まって何をしているのかしら?」


「リアナ皇女?」


 人集りからガルマン中将が姿を見せた。


「ここで、行き詰まっているってことは、図書館の中へは入らせてもらえてないってわけね。可哀想」


「何の用だ。冷やかしに来たのか?」


「そうよ。駄目かしら? …………ところで、なんだけど。もし私が、レナードの場所を知ってるって行ったらどうする?」


 姫の、言葉にガルマン中将は、眉を顰める。


「知っているのなら、早く応えてはどうですか?」


「条件があるわ。レナードの場所を教える代わりに、レナードと外の兵士達を交代させてくれないかしら? レナードを外に追いやれるんだから悪くないでしょ?」


「ハァ………… 何でも良い。早く場所を明かせ。話はそれからだ」


「せっかちね。そこに地下室への扉があるでしょ。そこを降りた先にある書庫があるわ。その中にいるわよ。ルカ? 正門にいる兵士達に、鍵を開けておく様に伝えて、もうすぐレナードが向かうから」


「は、はい…… でも、私なんかの言葉で……」


 すると、姫はかけていた純金のネックレスをルカに手渡す。


「それがあれば、私からだって分かるはずよ。終わったら戻って来なさい」


 ルカは、急がんと言わんばかりに走り出す。ゆっくりと、階段を下る姫を前にガルマン中将が応える。


「しかし、リアナ皇女よ。書庫へは鍵が必要になるが……」


「貰えば良いじゃない。ララサが持ってるんだか。あ、そう言えば、貴方達じゃ駄目だったわね。道を開けなさい。私が、もらってくるから」


 姫が、海軍達の間を通り抜ける。そして、厚く閉ざされた扉に軽くノックを入れる。


「ララサ? 私よ。少し用があるわ開けてくれない?」


 僅かに静寂が流れる。


「ララサ……?」


「ああ、すまんすまん。少し仕事をしとった! 誰だ?」


「私よ。寝てないで早く開けてほしいんだけど」


「私? そんな名前の奴は知らんぞ?」


「リアナよ。ベニート・リアナ。知らなきゃ極刑よ」


 扉が開くと、ひょっこりと司書が顔をのぞかせる。


「すまんすまん。冗談だ。それで、どうしたんだ?」


「地下の書庫に行きたいんだけど鍵を貸してくれないかしら?」


「構わんが、何を……」


「貴方には関係ない事よ。早くして」


 そう言うと、司書はポケットから一つの鍵を取り出すと、姫に手渡した。それを手に姫はガルマン中将の元へと詰め寄る。大丈夫。正門の方には既にルカが、話を通している。レナードを一度、外に逃がせさえすれば後はどうにでもなる。紙に書いてあった通りにはしてるはず…… 大丈夫よね。


「分かってると思うけど、変なことはしないでよ。レナードを外に届けるまで、ちゃんと見届けるから。ちなみに地下は火気厳禁よ」


「ああ、分かっている。全員、地下へ向かえ。奴は、銃を所持していない。しかし、気は抜くな」


 ガルマン中将は、そう言うと先頭の兵士に姫から渡された鍵を手渡すと、壁に背を付け様子を伺う。兵士達は、持っていた武器を下ろすと地下の闇へと突入して行く。


「地下って前にも行った事があるんだけど、結構暗いのよね。ちゃんと鍵穴に鍵を通せるかしら。私が、行ってあげようかしら?」


「いらん。私達だけで、どうにかする。それより、今になってなぜ、レナードを引き渡した。最初から隠れる必要も無かっただろ」


「こうしないとレナードがミリアのいる檻に送られるでしょ。あの人、怖いから何するか分からないでしょ。なら、捕まる前に、直接外に出した方が安全と思ったのよ。レナードに今、死なれると困るから」


 姫は、平然と応えた。実際は、貴方達に始末されないためだけ……


「ふん。確かに、奴ならやりかねんかもしれんな。どちらにせよ、レナードを外に追いやれるなら構わない。時間は掛かったが…………」

 


 "ギィィィ……"

 


 ただ二人残された両者が視線を見合わせる。その音は、さっき聞いた。姫は、ゆっくりと視線を背後へと、図書館の扉へと向ける。


「ララサ? 何かあったかしら…………」


 違う。男は、何食わぬ顔で、自然と歩みを始める。思わず、姫とガルマン中将は言葉を失う。男は無言のまま姫の横、そしてガルマン中将の側を通り過ぎる。


「レナード…………」


「き、貴様、地下にいるのではなかったのか? リアナ皇女、これはいったいどういうことだ。おい、待てッ!」

 


 "ガチャッ"

 


 中将は、持っていた鍵を取り出すと、何の躊躇いもなく地下への扉に鍵をかける。咄嗟にガルマン中将が、拳銃をかまえる。


「リアナ皇女! 私の後ろへ! レナード今すぐに、扉を開けろ。兵士達を一箇所へ隔離する行為は、明確な反逆行為だ。断れば、この場で刑を執行するっ……」

 


 "バンッ……"


 

 ポタポタと、雫の垂れる音。反動で、拳銃が宙を舞う。思わず、手元を押さえるガルマン中将の、足元には段々と赤い血溜まりが、出来た。


「なぜ、銃を持っていないはずでは……」


 ガルマン中将が、姫の方向に振り向く。あれ? 無い…… いつの間に、取られたの? さっき通り過ぎた時? 中将の、手には確かに、姫が懐に隠していたはずの拳銃が握られていた。


「リアナ皇女。伏せておいて下さい。危険です」


 中将は、いたって冷静に応える。


「まって! 何をしてるの? 紙には地下にいるって……」


「作戦変更です。紙は、リアナ皇女以外の人間に渡るリスクがありました。今回の様に、偽の情報を記載し、相手を撹乱させるのが、最も賢いやり方です」


 中将は、そう言うと、静かに帽子に手をかける。


「この宮殿には、リアナ皇女の命を狙おうとしている輩が海軍そして秘密警察と、多すぎる。私達で、御守りしなくてはならない……」

 


 —— 二章 ??? ——

 


「どう言うこと? 均衡を保つんでしょ? 陸軍を中に入れて……」


 長髪とまでは言えないが、確かに長い襟足。その全貌を姫は、初めて見た。中将は、帽子を手に取ると、センター分けされた髪を垂らしながら、帽子に付けられた陸軍のシンボルをマジマジと見つめる。


「レナード、貴様何が狙いだ? もはや言い訳も出来まいぞ」


「そうよ。早く陸軍達を中へ入れましょ。そして、お母様を殺した犯人を探して私達の罪を……」


 中将は、視線を姫に向けた。


「犯人? それなら、もう見つかっているではありませんか」

 


 "ドンッ ドンッ ドンッ"

 


 地下への扉が激しく叩かれる。中に閉じ込められた海軍兵達が、その扉を強く叩きつける。しかし、鉄製の扉はまるでビクとも動かない。

「それ…………」


 姫が、中将の手元に視線を送ると、中将は一つのハンカチを握っていた。薄汚れた、小さなハンカチ。それが、ミーシャの形見である事に気がついく。


「返し忘れていました。ただ…… あまり、時間が取れず中々、洗えなかった。先日、溢したワインの匂いが、まだとれていないが…… 構いませんかリアナ皇女?」


「ワイン…………?」


 その言葉に、姫は僅かに言葉を詰まらせる。

 


『腐った果実の匂いがする……』

 


『赤黒いシミ……』


 

「それって…………」



 姫の、脳裏に皇后へ、そのハンカチを手渡した時の記憶が過った。最悪の、シナリオが頭を過ぎる。まるで、哀れむかの様な表情で中将は、姫を見つめた。お前……

 


 "カーンッ" "カーンッ" "カーンッ" "カーンッ……"

 


 —— 二章 切り…… ——

 


「四度の鐘? 一体誰だ。誰が鳴らした! 鐘の音は三度までしか意味が無いはず……」


「あるさ………… 私達、陸軍にとっては意味のある鐘。…………殲滅の合図。…………皇族にたてついた海軍を、殲滅する為の合図……」


 その瞬間、宮殿のどこかから、銃声が響いた。一つじゃない。そこら中で…… 合図と言わんばかりに、正門から流れ込む陸軍達。その全てが、逃げ惑う海軍兵を撃ち抜く。状況も分からぬままに死にゆく海軍兵に、宮殿は殺戮場と化した。


「……どういうこと?」


「逃げろ! リアナ皇女!」


 姫を背後に突き飛ばすと、落ちていた拳銃へと手を伸ばすガルマン中将。

 


 "バンッ"

 


 額から、流れる大量の血液。姫は、ただ、それを眺めているだけだった。一瞬にして、その場が血の池地獄と化す。目の前の、光景に、姫のトラウマが蘇る。思わず崩れ落ちる。


「ここまで来るのに二十年もかかった……」

 


 —— 二章 ……札 ——



「リアナ皇女! ご無事ですか? 何だが、急に騒がしくなって……」


 慌てた様のルカに対して中将は、容赦無く銃口を向ける。


「ルカか…… 海軍が裏切った。咄嗟にリアナ皇女を守ったが、まだ安全を保証できない。しばらくは私が宮殿を管理する。そのネックレスを渡してくれ」


 ルカは、じっと辺りを見渡す。しかし、そうは見えない……


「分かりました…………」


「感謝する。安全を確保出来るまで、リアナ皇女と共にララサ大公妃の寝室で待機してもらう。外の兵士達も中へ入り終えた頃だろう。さあ中へ」


 中将は、倒れたガルマン中将の懐から鍵を取り出すと部屋の扉を開けた。


「さあ、行きましょうリアナ皇女。……今は従って下さい」


 ルカは、姫を抱えると、言われるがままに部屋の中へと入る。

 


 "ガチャッ"

 


 中将は、壁にもたれかかると、天井を見上げたまま帽子を再び被る。ほんの少し、僅かに笑みを浮かべると、思わず呟いた。


「サリエフ…… 俺達は、まだ負けて無い…………」

 


 —— 二章 切り札 始 ——

 随分と時間が空いてしまったので、今回はかなり長く書きました! かなり、ストーリーが動いたのでは無いでしょうか? タイトルも、変更となり、二章切り札が、いよいよ始まります! 投稿も遅れない様に頑張ります。今後ともよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ