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独裁者の姫 (一章完結!「表紙有り」)  作者: ジョンセンフン
二章 切り札

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第四十一戦

「ねぇ、それで貴方、どうするつもりなの? 本気で死ぬつもりなの? 上手いことミリアにハメられたみたいだけど、このままだと貴方、間違いなく死罪になるわよ。私より先に楽になろうなんて思ってないでしょうね?」


 ベッドに横たわる姫の言葉に、中将は耳を傾けた。


「仕方がありません。あちら側に切り札があった以上、これが最善の手であると判断したまでです。リアナ皇女が私を助けた事による罪も、たった半日限りの誤りであったという事にすれば後はオルディボ閣下が上手く収めてくれます。それに……」


 中将は、壁から距離を置くと日が沈み行く空を窓から見つめる。


「私も、すぐに死ぬわけじゃない。陛下が帰還されるまでは、投獄されるに過ぎん。陛下の許可無く今、私を殺した事が外にしられたら大変なことになる。奴らに出来るのは、私を外に放り出し陸軍に始末してもらう事だけ。明日以降は、ノワール大佐と共に行動して下さい。陛下が帰還されるまでに何としても皇后陛下を暗殺した犯人を特定する必要がある。でなければ…… ミリアも私も、首を吊る事になるでしょう」


「そう…… 貴方、あんな事されておいてミリアの心配するのね。二人でペラペラと喋ってたみたいだけど、アレは全部、本当のことなのよね? 初耳なんだけど」


 僅かに、中将に鋭い視線を向ける姫。それに対し、中将は未だ空を見上げたままに口を開いた。


「ええ…… 事実です」


「なんで、黙ってたのかしら? 貴方も皇族殺しに関わった事、私に黙ってたでしょ? 昔お父様と協力していたことも…… 私に知られると何か不味かったのかしらレナード?」


 中将は、姫に視線を向ける。その表情は、どこか寂しくもあった。


「ミリアを…… 巻き込みたくはなかった。あの話をする為には必ずミリアの存在が必要になる。でなければ、軍人の私が、あんな秘密を知る事など無いのですから。ミリアがいたからこそ私は皇族の側へいられた。少し…… 情が湧いた……」


「そう…… 意外ね。貴方にも情なんてモノがあったのね」


「…………私も、人間です。情の一つくらい、あります」


 そう言うと、中将は僅かに口角を上げた。


「えっ!? でも、さっき、この人、私を観葉植物の鉢に埋めようとしてましたよ? しかも六等分で! 情の一つくらいとか言ってますけど、多分それも六等分にされたやつなんじゃないですか?」

 ルカの一言に部屋が凍りつく。


「そうですよ! そんな事より、レナード中将、明日、投獄されるんですよね? 私も、連れてってくださいよ!」


「ハ? ルカ、貴方何を言ってるの? 馬鹿なのかしら?」

 


「 "馬鹿ですッ!" "馬鹿で良いんですッ!" こういう時は馬鹿ほど長生きするものなんですよ! リアナ皇女は、この世で一番安全な所が、どこか知ってますか? それは獄中なんですよ。悪人を逃しまいと門番が命をかけて守ってくれるんです! 皇后陛下が暗殺されてるのにレナード中将もいなくなるんですよ? 私は勝ち馬に乗りたいんです。生まれ変わるなら絶対に家畜になりたい! ララサ大公妃のように食って寝てクソするだけの人生を送りたいんです!」



 ルカの、熱弁に姫は思わず表情を歪めた。


「貴方、今ララサの事、家畜呼ばわりしてなかったかしら? あまり大きな声で言わないことね。国家機密漏洩罪で首が飛ぶわよ」


 呆れたように溜息を吐く姫の眼前で中将が視線を変えた。


「ルカ…… お前…… 家畜になりたいのか……?」


「えっ? まあ…… 楽じゃないですか?」


「知っているのか? 家畜には、自由がないんだぞ?」


 そう言うと中将は扉へと向かうようにルカのすぐ横を通り過ぎる。


「もちろん知ってますよ! だって自由なんかより私は命が……」

 


「俺が、言っているのは、『生きる自由』すら無いという意味だ」

 


 中将は、ドアノブに手をかけると、姫へと視線を戻した。


「明日の朝、また迎えに参ります。リアナ皇女、ルカが退出した後、必ず鍵をかけておいて下さい。明日私が来るまで決して扉を開けないように。それと、コレを」


 不意に中将は、姫のベッドの上に自らの拳銃を、そっと置いた。


「何が起きるか分からない。用心しておいて下さい」


「待ちなさいよ。どういうこと? 貴方、何をかんがえているのかしら。私は、皇女よ? 誰が私を…………」


 その脳裏に皇后の死顔が過ぎる。その瞬間、姫は、無意識に拳銃を手にした。


「以前使われていた空砲型の拳銃と使い方はさほど変わりません。お気を付けて」


「待って! 貴方は、どうするの? 武器もなしに……」


「武器? 何を言っているのですか。軍人を銃を持っただけの一般市民とでも思っているのですか? 存在そのものが、既に兵器です。では、失礼します……」


 中将は、そう言うと部屋を後にした。姫は、しばらくの間、その拳銃をじっくりと眺めた。


「レナード中将も心配が過ぎますよね。流石に、そんな危ないモノを持つのは良くありませんよね。間違え暴発でもしたら大変ですよ。リアナ皇女、私が明日まで預かっておきますよ」


「いやよ!」


 姫の一言に、ルカの身体が止まる。


「貴方も早く部屋に戻りなさい。睡眠の邪魔になるから」


「でも、それを…………」


「命令よ。皇帝代理として貴方に命令するわ。早く出ていきなさい」


 思わずルカの空いた口が閉じる。


「はい。失礼致しました。お先に失礼致します……」 


 ルカが退出したのを確認するや否、姫は部屋の鍵に手を伸ばした。

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