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四国同盟③

「それで、君達だけ戻って来たってわけだ」


 ゼルバの元へ行ったものの、すぐに戻って来た三人から話を聞いたジェスルリイドはそう言った。


「気が付いたらゼルバ様がいなくなっていたから仕方なくな」


 シルルは仕方がないを強調する。


「別にこっちは戦にならない限りは僕だけでも大丈夫なんだけどね」

「それでは駄目だろ」


 ジェスの言葉に、ローゼオロメメアが冷静に突っ込みをいれる。


「まあ、ギラグ国に生まれた女は大変だって言うからね」

「知っているの?」


 ジェスが訳知り顔で話すので、ミュエネは気になって聞く。


「ああ、レシヘストから色々聞いたからね。村の男達が彼女の体を求めて決闘を挑んでくるんだってさ。負けたらその男の物ってね」


 三人はそれを聞いて、言葉こそ出さなかったが、嫌そうな顔をする。


「勝ち負けじゃなく、顔を見せるだけで決闘を挑まれるんじゃ面倒だよね。だから、ついてくるなって言ったんだろうね」

「なるほど」

「まあ、しばらくゆっくりできて僕は嬉しいよ。毎日レシヘストの訓練に付き合わされていて……は疲れるからね」


 ジェスは何故か一度言葉を切ってから、言い直した。

 シルルとミュエネは不思議に思いながらも、その理由はわからない。


(うんざりとか、困ると言おうとしたんだろうな)


 ただ、ローゼオロメメアだけはしっかりとそこを見抜いたのだった。


「しかし、ギラグ国とはね。何しに行ったか分からないけど、無事に帰って来て欲しいものだね」


 ジェスはそう言うと、ギヨウ達がいるであろう方角を遠く眺めたのだった。

 


     ♦



 一方、その先にいるギヨウ達は、まだフェズ国内を移動している最中だった。


「それで、俺達はなんでギラグ国に向かってるんだ?こんなに大勢でさ」


 ギラグ国へ向かっているのは、ゼルバ、ギヨウ、レシヘストの三人だけではなかった。

 ゼルバが事前に用意していた護衛が五十人ほどいたのだ。

 それなりに大勢であり、大仰でもあった。


「そうですね。最初から話しましょうか」


 ゼルバは馬を走らせながら、遠い目で空を眺める。


「あれは、半年前にあなたと会った後の事です」


 そして語りだした。


「私の要請で、次の戦の為の軍議が行われたのです――」

 


     ♦



 それは、半年前、フェズ国王都キエラでの話となる。


「王はまだのようですね」


 ゼルバが軍議の席に着くと、玉座を眺めながらそう呟いた。


「ふんっ、今呼びに行くわ」


 それを耳ざとく聞き付け、将軍ビルガンが王を呼ぶためにその場を去っていく。

 その背中を見送りながら、ゼルバは辺りを見渡す。

 すると、普段王都では見ない顔が何人も目に映った。


(来てくれたようですね)


 それは、ゼルバが呼んだ将軍達である。

 その中でも目立つのは、前回の戦の功労者、マチェバナン将軍に、猛将ガエロオである。


(ヨギ将軍はやはり現れませんか……)


 ゼルバからすれば予想通りではあるが、来てほしかったというのが本音である。

 それだけ大事な軍議であると、ゼルバは考えているからだ。


 しばらくして、王がいつものように女に支えられ、奉仕されながらやって来る。


「久しい顔があるな。お前ら全員打ち首にされに来たのか?」


 フェズ王が挨拶もなしにそんな事を言った。


「フェズ王様。お呼び立てして申し訳ありません」


 それを無視し、ゼルバが前に出て深く頭を下げる。


「この俺を呼ぶとはいい度胸だなゼルバ」

「申し訳ありません。ただ、フェズ王様にとても面白い提案をさせていただけないかと思いまして」


 ゼルバはにこやかに、楽しそうな顔で、フェズ王を見る。


「なんだ、言ってみろ。つまらなかったら、お前から打ち首にしてやろう」


 フェズ王は、まるで冗談のように言うが、これで実際に打ち首になった家臣は多かった。


「エルエ国を滅ぼしませんか?」


 ゼルバのその言葉に、フェズ王は珍しい事に少しだけ体を震わせ、その場にいる全員がざわめきだした。


「それは今やっている最中ではないか」


 ビルガンが横槍をいれる。


「ええ、もちろんそれはわかっていますよ」


 ゼルバはそこで一息つくと、それを言った。


「次の戦で、エルエ国を滅ぼします」

「なっ!」

「ば、馬鹿な!」

「正気ですか!ゼルバ殿!?」


 その言葉を聞いて、フェズ王以外の全員が驚き、それぞれ思ったことを口にするしかなかった。


「なるほどな。確かに、それは楽しい提案だ」


 フェズ王は、少しだけ口角を上げながらそう言う。


「だが、どうやってやるつもりだ!まだエルエ国は、わが国と同じくらいの領土を持っているのだぞ!」


 そう言ったのは、ビルガンであった。


「それは簡単ですよ。王都を落としてしまえばいいのです」

「なっ!……」


 ゼルバが平然と言い放った言葉に、その場にいる誰もが絶句するしかなかった。


「いったいどうやって王都を落とすつもりだ、ゼルバよ」

「それは単純です。圧倒的な兵力で王都まで攻め込めばいい」

「そのような兵力が我が国のどこにある!」


 変わらずビルガンが叫び、ゼルバは首を振った。


「確かにありませんね」

「貴様、馬鹿にして――」

 

 割り込んできたビルガンの言葉に、ゼルバは更に自分の言葉を割り込ませた。


「我が国だけでは――」

「なっ……」


 ビルガンは驚いてばかりである。


「同盟を結ぶという事か」


 どこからか声が上がる。ここまで言われれば、誰もがそのことに気が付く。


「しかし、どの国と……」


 エルエ国を除けば、四つの国があるのである。


「全てです」


 そして、ゼルバはそれを言った。


「エルエ国を除く全ての国と同盟を結び、エルエ国の王都ルトへ攻め込みます」

「おお!」

「なんと!」


 ゼルバの言葉に、誰もが驚きっぱなしである。

 しかし、ゼルバの相手はただ一人である。

 ゼルバの見つめる先、フェズ王である。


「ふっ、はははっ!相変わらず面白い事を考えるな、お前は!」


 フェズ王は機嫌が良さそうに大笑いをする。


「では、私が同盟を締結してきてもよろしいでしょうか?」

「好きにしろ。ただし、これだけの事をするのだ。失敗したら打ち首にするぞ」

「お任せください。必ずや、成功させてみせます」


 そしてフェズ王は自室へと戻っていく。

 それによって、軍議は終わったのだ。


「では、私もこれで」


 ゼルバはすぐに、その場を後にする。

 全ては予定通りであり、すぐさま同盟の締結へと向かう為であった。

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