四国同盟④
「と、まあ、こんなところですかね」
ゼルバはここまでのいきさつを話し終える。
しかし、ギヨウはいまいちピンとこない顔をしていた。
「何か言いたそうですね、ギヨウ」
「ああ、すげえ話しなのはわかるけど、同盟ってのはそんなに大変なもんなのかなって」
ギヨウの言葉に、ゼルバは笑う。
「ははっ、そうですね。それは核心をついています。同盟を結ぶと言うのは大変ですが、今回に限っては大変ではないのです。何故だかわかりますか?」
「エルエ国が敵だからだろ」
ギヨウはしれっと言う。
そして、それは正しい事なのである。
「その通りです。メオ国とメナ国を侵略したというのは、全ての国を敵に回すという事です。ですから、エルエ国を倒す間だけであるなら、同盟を締結するのは簡単なのです。もっとも――」
「ギラグ国だけは関係ないけどね」
ゼルバの言葉を、レシヘストが横取りする。
おしゃべりな彼女からすれば、ここまで我慢した方である。
「ギラグ国は自分の国の事しか考えてないというか――自分の国の事すら考えていないからね。ただ、戦う事しか考えていない。そんな国とどう交渉するつもりなのか興味があるよ」
レシヘストがうんざりとした顔で言う。
本当に、あまり故郷が好きではなさそうである。
「それは――あ!見えてきましたよ。関所です」
ゼルバが答えようとしたが、進行方向に関所が見えてきたため、話を切って声を上げる。
「あそこを抜ければ、ギラグ国ってわけだ」
ギヨウがそう言うが、ゼルバもレシヘストも呆れたような顔をする。
「あたしがアカツキ隊にいて一番心配になるのは隊長の頭だよ」
「苦労をかけますね」
二人が難しそうな顔をしながら向き合う。
「な、なんだよ、ミュエネだって変わらないだろ」
「そっちもね。意外だったよ。無口だし、知的な顔なのに、頭はギヨウ寄りだったからね。びっくりさ」
レシヘストは頭を押さえる。
「それで、何が違うんだ?あの関所の向こうはギラグ国じゃないのか?」
「あの向こうはベザ国です。ギラグ国はその更に先ですよ」
「そ、そうなのか」
そもそも、日本生まれのギヨウが、異世界の地理に疎いのは仕方のない事ではある。
だが、そんな事は二人の知るところではない。
「え?てか、じゃあ先にベザ国と同盟結ばないといけないんじゃないのか?勝手に抜けたらまずいだろ」
「それは、もうそれは終わっていますよ」
「え!?」
ゼルバが当たり前と言わんばかりに言い、ギヨウはそれに驚いた。
「私がこの半年間、なにをしていたと思っているのです。ベザ国と、ア国と同盟を締結させてきたのですよ」
「それで、城にいなかったのか」
そんな話をしながら、一行は関所へと辿り着く。
そして、ゼルバの言葉の通り、簡単に関所を通り抜けることが出来たのだ。
「あっさりだな」
「同盟国ですからね。まあ、実はまだ同盟は結ばれてはいないのですが」
「え?どういうことだよ?」
ゼルバはいたずらっぽく笑いう。
「さて、ギラグ国までまだ時間はあります。私がベザ国と同盟を結んだ時の話でもしましょうか」
「ああ、頼む」
なんにせよ、ただ馬を走らせるだけである。
他にやる事がない以上、ギヨウもその話を断る理由はなかった。
「と、その前に、メナ国の美姫というのを知っていますか?」
「いや?」
ギヨウが知るはずもない。
「あたしはもちろんわかるよ。ていうか、実はミュエネを見た時、あの娘がメナ国の美姫なんじゃないかと思ったんだ。綺麗だし、なんか姫っぽいからさ」
(え……)
ギヨウはレシヘストの言葉にどきりとしてしまう。姫という部分があっているからであった。
「喋ってすぐに違うってわかったけどね」
「ははっ、厳しいですね。確かにミュエネも、メナ国の美姫に負けず劣らず美しいですけどね」
少し間を置いて、ゼルバは言葉を続けた。
「そのメナ国の美姫が、今ベザ国にいるのです」
「そうなのか」
ギヨウはあまり興味なさそうに答える。
「あ、これは内緒ですよ。噂になってフェズ王の耳に入れば、エルエ国なんてどうでもいい、ベザ国を滅ぼしてメナ国の美姫を奪ってこい、と言い出しかねませんからね」
それは冗談にすらなっていないのだ。
「そして、私はそのメナ国の美姫に――彼女に偶然会ってきました」
ゼルバはその時の事を語りだした。




