四国同盟②
「久しぶりですね、ギヨウ」
半年ぶりだというのに、ゼルバはいつもと変わらない様子でギヨウを迎え入れた。
「久しぶりじゃねえよ。戦がなくてよ、暇でしょうがなかったぜ」
ギヨウはそんな様子のゼルバに少し悪態を吐く。
「はははっ、こちらは忙しくて仕方がありませんでしたよ」
確かに、ゼルバの顔はよく見ると痩せこけているようにも見えた。
ゼルバが嘘をつく事はないし、実際に忙しかったのだろうとギヨウから見ても推測出来た。
(こういう時、シルルが真っ先に騒ぐんだけどな。ゼルバ様!お顔の色がよろしくないようですが!ってさ)
そう思い、ギヨウはシルルの方を見たが、シルルはいつのもまして大人しく、喋り出す様子すらなかった。
妙ではあるが、話の腰を折られるよりはいいと思い、ギヨウはシルルの事は放置をしておくことにする。
「忙しいって、何してたんだ?」
少し間が開いてしまったが、ゼルバが求めてるであろう言葉をギヨウは吐き出した。
「ええ、順を追って話しましょう。ですが、時間がありません。来てすぐで申し訳ありませんが、話はここを発ってからにしましょうか」
「ん?どういうことだ?」
突然の事にギヨウはついていけない。
「と、その前に、挨拶が遅れてしまいましたね。呼び出して置きながら申し訳ありません」
ギヨウが話を呑み込めないまま、ゼルバはどんどんと話を進め、レシヘストの前へと移動する。
「ああ、呼ばれたから来たんだけど、あんたが噂の大将だね。ギラグの戦士、レシヘストだよ」
「大将ですか……まあ、間違ってはいませんが、私はただの領主ですし、ただの将軍ですよ。ゼルバと言います」
「よろしく頼むよ」
「はい、よろしくお願いします」
二人は握手をする。
「それで、早速で申し訳ないのですが、お願いがあるのですが……」
ゼルバはあくまで礼儀正しい態度を崩さない。
「まあ、意味もなく呼んだわけじゃないんだろ。聞ける話なら聞くよ」
「それは良かった。実はギラグ国の案内をして欲しいのです」
「え!どういうことだよ!」
驚いて声を上げたのは、置いていかれたギヨウである。
逆に、その提案をされてもレシヘストは平然としていた。
「どうもこうも、私達は今からギラグ国に行くからですよ」
「ゼルバとレシヘストがか?」
「あなたもですよ、ギヨウ」
「お、おう」
ギヨウは、やはりついていけず、適当な返事をするしかなかった。
「驚いてはいないようですね」
そのギヨウを置いて、ゼルバはレシヘストと話を続けた。
「私の事はローゼオロメメアから聞いたんだろう?ギラグの戦士だって」
「そうですね」
「なら、何の用かくらいは想像がつくさ」
わざわざ面識のないレシヘストを指名してきたのであれば、ギラグ国関連の話だと誰でも予想はつく。
「それで、返答はどうでしょう?」
「いいよ。何をしに行くかは知らないし、あの国にはあんまりいい思い出はないけどね。ただひとつだけいいかい?」
「なんでしょう?」
「この子達は置いていった方がいいねえ」
「きゃっ!」
レシヘストは、シルル、ミュエネ、ローゼオロメメアを後ろから抱えて言った。
「あの国に可愛い子連れてくと面倒だからね」
「元からそのつもりでした。いいですよね、シルル、ミュエネ、ローゼオロメメア」
ゼルバは、わざわざ一人ずつに確認を取る。
「別にいいわよ。ギラグ国には興味ないし」
「私はこの城の部屋から出たくない」
それに、ミュエネとローゼオロメメアが答え、
「はい、大丈夫です」
最後にシルルが答えた。
(やっぱり変だな。他の奴はともかく、シルルはいつもなら、ゼルバ様について行きたいです、って言うのに)
その態度の不自然さに、やはりギヨウは引っかかりを覚える。
「それでは行くとしますか。ローゼオロメメアはちゃんとアカツキ隊に戻るのですよ」
しかし、ギヨウを置いて話は進んでいってしまうのだ。
「お、おい!本当に行くのかよ!その、ギラグ国ってとこにさ。何しに行くんだよ?」
「それは進みながら話すと、さっき言いましたよ。とりあえず行きましょう。ほらほら」
ゼルバはギヨウの背中を押し、三人は出て行ってしまったのだ。
そして部屋には、シルルとミュエネとローゼオロメメアが残される。
「どうかしたの?」
ミュエネがシルルへと問いかける。
シルルから見ても、ミュエネは少し妙であった。
ローゼオロメメアはそれに気づいていても、興味がないので話に入る気はない。
「何がだ?」
「いつもならゼルバ様、ゼルバ様って言うじゃない?」
「あ、ああ。いや――」
シルルは、神妙な顔つきで言葉を続けた。
「私はそんなにゼルバ様と言っているだろうか?」
「え?」
予想外の言葉に、ミュエネは困惑する。
シルルには、シンザとギヨウの会話が聞こえていたのだ。
そのことを考えていたので、様子が妙であったのである。
「え、ええ。そうかもね」
ミュエネは辛うじてそう答える。
(自覚がなかったのね)
そこに驚く。
「そ、そうか」
シルルはその事実に衝撃を受けたようであった。
「別にいいんじゃない?ギヨウだって気にしないわよ」
その姿が余りにも哀れなので、ミュエネは慰めてしまう。
「そうか……そうだよな。ゼルバ様!」
シルルが立ち上がり、周囲を見回す。
「あれ?」




