四国同盟①
そして、カラザイ城の戦いから半年が過ぎる。
一月ほどの休暇をもらっていたギヨウ達アカツキ隊であったが、それが終わると、当然新たな戦地へと向かわされていた。
その地は、前回ギヨウ達が参加した戦で取ったカラザイ城であった。
そして、それから五か月もの間、アカツキ隊はカラザイ城で過ごす事となったのである。
「ふわぁ~」
ギヨウはカラザイ城の城壁の上で、昼間から大きなあくびをする。
「隙あり」
そんなギヨウの頭へ、シンザが手刀を繰り出した。
もちろん全く痛くはない。
「なにすんだよ」
だが、ギヨウは抗議だけはしとく。
「いや、油断しすぎだろ」
「油断だってするさ。半年も戦いがないんだぞ」
ギヨウ達がカラザイ城に配属されてから半年間、一度も戦は起きていなかった。
それは、エルエ国が態勢を立て直しているからなのだが、ギヨウ達にはそれを知るすべはない。
「てか、ダククガはどうした?」
いつも一緒にいる弟がおらず、ギヨウはシンザへと聞く。
「あいつは一度帰ってるよ」
この半年間、余りにも平和なので、入れ替わりで許可をもらって家へ帰る者もいた。
「ああ、なんつったけ?あの子に会いに行ってるんだろ」
「ワウメちゃんな」
「ああ、それそれ」
ギヨウはそう言うが、そもそもギヨウはレリシャにもワウメにも会った事がない。
ギヨウの頭では、覚えていなくても仕方がないだろう。
「その……なんだ……」
突然シンザが歯切れ悪く、もじもじとしだす。
「なんだよ?」
大の大男が、もじもじとする姿は何とも言えず、ギヨウは不思議そうな顔をした。
「俺、レリシャちゃんに言ったんだ」
そして、シンザはそう言った。
「いや、なにをだよ?」
しかし、それではギヨウには全く伝わらないのだ。
「だーかーら!次の戦から帰ったら結婚しようって!」
シンザは興奮して大声を出してしまう。
その声に驚き、周囲の仲間達がギヨウとシンザの方を見る。
「なんだ、シンザ!噂の美人の彼女に求婚したのか!」
「やるなぁ!」
「返事はどうだったんだ!」
そして、当然のように周囲からヤジが飛んでくる。
「いや……その……いいってさ」
シンザは少し戸惑ったが、観念したようにそう答えた。
「おお!」
「良かったな!シンザ!」
「ひゅーひゅー!」
仲間達は、シンザの事をヤジりながら祝福した。
「それでよ!」
シンザは開き直って、周囲を見回しながら大きな声を出す。
「俺の話を聞いて、弟のダククガもワウメちゃんに結婚申し込みに行ってるんだよ」
(すまん、ダククガ)
シンザは心の中で弟に謝りながらも、ダククガも巻き込んでしまう。
「おおー」
周囲から感嘆の声があがるが、
「おい!俺は振られる方に賭けるぜ!」
「俺も!」
「俺もだ!」
「俺は大穴で承諾してもらえるほうで!」
勝手に賭け事が始まってしまう。
それは、もうシンザの事など放っておいて話が進んでいってしまう。
「つまり、こういうことだ」
「お、おう」
最初の質問は、ダククガはどこに行ったかであったが、ここまで飛躍するとはギヨウには予想がつかず、ギヨウは戸惑った返事しかできなかった。
「それで、お前の方はどうなんだよ」
「ん?俺か?どうって?なんのことだよ?」
更に言われた言葉で、ギヨウは更に困惑するしかなかった。
「とぼけるなよ。シルルとミュエネだよ」
「は?何の話だよ?」
「結婚しないのか?」
シンザはばっさりと斬り込んでいく。
「い、いや、結婚って、そ、そう言う関係じゃないぞ、お、俺達は」
ギヨウは余りにもわかりやすく動揺する。
「そ、それに、シルルが好きなのはゼルバだろ。ほら、いつもゼルバ様、ゼルバ様って言うじゃねえか」
ギヨウは更に早口で捲したてた。
「はぁ……」
(これは先が思いやられるな)
その様子に、シンザはため息しかつけなかった。
「隊長!隊長はいる?」
その時、ギヨウを呼ぶ声が聞こえ、
「おう!なんだ、ゼン」
ギヨウはここぞとばかりに、そちらへ行くのだった。
「大変だよギヨウ!ゼルバ様からの呼び出しだ」
「何っ!」
その伝令に、ギヨウは驚く。
半年前にゼルバの元に行ってから、ゼルバには会っていなかったのだ。
ゼルバの元を訪れても、忙しく、城にいないとベルベンに言われてしまうことばかりだったのである。
「ついに、やってきたってことでいいんだな」
ギヨウは、ゼルバに言われた言葉を思い出す。
(大陸一大きい戦が始まるってことだよな)
「それで、伝書にはギラグの戦士がいると聞いたから、連れてくるようにって書いてあるよ」
「レシヘストを?」
ギヨウは疑問に思う。
ゼルバとレシヘストには面識がないし、レシヘストを連れて行く理由が全く思い浮かばないからである。
「まあいいか」
だが、細かい事はどうでもよかった。
この半年間、溜めに溜めて来た気持ちを解放する機会が、きっと来たのだから。
「よし、行くぞ!」
期待を胸に、ギヨウはゼルバの元へと向かうのだった。




