戦後の日常⑥
ゼルバとの話が終わり、ギヨウ達は家へと戻って来る。
「ん?なんだか騒がしいな」
すると、自分の家の方が騒がしい事にギヨウは気が付いた。
「野盗にでも占領されたんじゃないか?」
シルルが呑気にそんな事を言う。
ただ、ギヨウの一軒家は街の外れにあり、あながち冗談にもならない。
「それなら、ぶっ飛ばして終わりだからいいけどよ」
長い間家を空けるので、流石に貴重品は置いていない。
盗られて困るものはないのだ。
「でも、騒がしいのは家の中じゃないわよ」
「そうだな、家の裏の方か、バーベキューでもしてるのか?」
「バーベキュー?」
「なんでもない。忘れてくれ」
ギヨウ達は、そんな話をしながら警戒もせずに自分達の家の裏手へと向かう。
そしてそこに着き、驚いた。
「え?」
思ったよりも多い人がいたからである。
そして、それだけではなく、それは全て顔見知りでもあったため驚いたのだ。
「ああ!ギヨウ!助けてくれよ!」
そう言って、ギヨウに泣きついてきたのはアカツキ隊の副長ジェスルリイドであった。
ギヨウの家の裏手に集まっていたのは、アカツキ隊の面々だったのである。
もちろん全員が集まっているわけではないが、相当な数が集まっているのはすぐに見て取れた。
「なんだい、情けないねえ」
そう言って、ジェスの後ろから姿を現したのは、ギラグの戦士レシヘストだった。
「いや、お前ら何やってんだよ」
ジェスは剣を、レシヘストはいつもの手斧を両手にそれぞれ握っている。
更に、後ろにいるアカツキ隊も武器を手に持っていた。
「何って見ればわかるだろう?訓練だよ」
「まあ、それは見ればわかるよ」
言われてみれば、それはそうである。
「だが、ジェスが訓練なんて珍しいな。いつもは声をだしているだけなのに」
「それがよくわからないんだよ。呼ばれたと思ったら無理矢理さ」
ジェスはギヨウの後ろへと隠れていた。
「そいつはアカツキ隊の副長なんだろう?他にはシルル、ミュエネ、リーグカルだよね?」
「ああ、そうだな」
たかが五百兵隊に四人の副長は多いのだが、どうしてもこの四人は外せなかったのだ。
いや、ジェスは外しても問題はないのだが。
「シルルとミュエネは強いよ。私が戦ってみたいくらいさ」
「無駄な戦いをするつもりはない」
「興味がないわ」
レシヘストがそれとなく誘うが、二人はあっさりと断るのだ。
「リーグカルはそれなりだね」
リーグカルの部隊は、この場にはいないので、誰も答える者はいない。
「でも、こいつは弱すぎるだろう。隊で一番弱いんじゃないかい?」
「いや、まあ……」
ギヨウは反論出来なかった。
(ダククガ辺りもいい勝負だけどな)
そして、その言葉は呑み込んでおいた。
「副長なら、もう少し強くなってもらわなきゃ困るねえ」
「まあ……そうだな」
やはりギヨウは反論できない。
「じゃあ、ほら、行くよ」
「ちょ、せめて優しくして」
ギヨウの後ろに隠れていたジェスは、あっさりと持って行ってしまわれる。
「いいの?」
余りにも哀れな姿に、ミュエネがそう聞いた。
「まあ、いいんじゃないか。死にはしないさ」
ギヨウはそう言うしかないのだった。
「おお、ギヨウ。帰って来たのか」
「おう、ダククガか」
次に話しかけてきたのはダククガであった。
いつも隣にいる、兄のシンザは見当たらない。
「シンザは?」
それを不思議に思い、ギヨウは聞く。
「兄貴はこれだよ、女だよ」
「へえー、なんつったけ?」
「レリシャちゃんな。最近いい感じなんだよ。もちろん、俺の方もな。今日はこっちに来たけどさ」
「へぇー」
ギヨウは興味がない事も隠そうともしない。
だが、いつもの事なので、ダククガはそれを不快とは思わない。
「それより、驚いたろ」
何がとは言わないが、何のことかは、もちろんギヨウにもわかる。
「ああ、まあな。わざわざ俺の家の裏手に集まって訓練してるなんてな」
「何言ってるんだよ?」
「ん?」
ギヨウの言葉に、ダククガは不思議そうな顔をする。
「どういうことだ?」
「わざわざも何も、あいつらここに住んでるぞ」
「「「ええ!」」」
それには、流石に三人同時に驚いてしまう。
「あっちに天幕あるだろ?そのうち家も建てようって話になってるぞ。聞いてないのか?」
ギヨウには全く心当たりがない。
「聞いてねえよ。そんな事勝手にしていいのかよ」
「町長はいいって言ったみたいだぞ。そもそも、あいつらこっちに住むとこ無い奴等だからな」
「ええ……」
しかし、よくよく考えると、
(ミュエネもだったな)
これがあるのである。
「まあ、町長がいいってんならいいか」
結局、そう結論付けたのだった。
「じゃあ、俺も参加するか」
そして、ギヨウも訓練へと参加しようとする。
「待て」
「待ちなさい」
だが、シルルとミュエネに止められてしまう。
「なんだよ、手加減はするぞ」
ギヨウは止められた理由がわからず、とりあえずそう言った。
「違うわ」
「お前は飯係だ」
そう言って、ギヨウを見る二人の気迫はすさまじかった。
「あ、ああ」
その気迫に負けて、ギヨウは大人しく引き下がるしかなかったのである。




