戦後の日常④
戦が終わり、家へと帰ったギヨウ達であったが、ゼルバが城に戻っている事を知り、すぐにゼルバの元へと向かった。
「来ましたかギヨウ。また、随分と活躍したようですね」
ギヨウ達がゼルバの元を訪れると、ゼルバはすました顔でそんな事を言ったのだ。
「まあな、って俺の事は――」
「久しぶりですゼルバ様!」
ギヨウが言いかけたが、そのギヨウをおしのけてシルルが前へと出る。
「久しぶりですねシルル。しっかりとギヨウを助けていますか?」
アカツキ隊は防衛網へと入り、そこからすぐにカラザイ城の戦いが始まった。
その間に、ギヨウは一度ゼルバの元を訪ねたが、シルルは戦に出っぱなしだったのである。
幼少期からずっとゼルバのお付きをしていたシルルからすると、今までこれほどまでにゼルバと離れたことはなかったのだ。
「それはもちろんです。こいつは私がいないと何もできませんので」
シルルは、ギヨウの隣でギヨウの顔を軽くぺちぺちと叩く。
「いや、言いすぎだろ……まあ、助けられてはいるけどよ。ありがとよ」
余りにも素直なギヨウの言葉に、シルルは手を止めて、少しだけ顔を赤らめる。
「やめろ、馬鹿」
そして、顔を逸らした。
「ギヨウ。ミュエネにも言ってあげなさい」
楽しそうに笑いながら、ゼルバが言う。
「え?そう言われると、俺も少し照れるんだが」
「私はいいわよ」
ギヨウがそう言い、更にミュエネも涼し気な顔でそう言った。
しかし、ミュエネはギヨウの方を何度かチラチラと見る。
「ま、まあ、ミュエネも助かってるよ。ありがとう」
「そ、そう。私も助かってるわ。ありがとう」
ミュエネはそう言いながらも、シルルと同じように、少しだけ顔を赤くして、顔を背けた。
「私にはなにかないのか?」
その様子を見ていた、ローゼオロメメアがギヨウのそでを引っ張る。
「あ、ああ。ありがとよ」
ギヨウはそう言いながら、
(ローゼオロメメアに言うのには、恥ずかしさは感じねえな)
その事に気が付く。
だが、その理由はわからないのだった。
「ギヨウ。彼女を甘やかさないでください。ちゃんとやってましたか?サボってませんでしたか?」
そして、何故かゼルバはローゼオロメメアにだけ厳しかった。
(なんだか父親みたいだな)
そのゼルバの態度に、ギヨウはそんな事を考えた。
「酷いな。ちゃんとやったぞ」
ローゼオロメメアは、そんなゼルバに対して抗議の声を上げる。
「ならいいです」
一旦話が終わったようで、ギヨウは話を戻す。
「それよりよ。そっちも城落としたんだってな?囮って言ってなかったか?」
「ええ、ですが、やれるだけやってみようと思いまして」
「どうやったんだ?」
ギヨウは、詳しい話は全く知らなかった。
「水攻めですよ」
「水攻め……」
ギヨウは考え込む、名前くらいは聞いたことある。
「ってどうやるんだ?」
しかし、詳しいやり方までは知らなかった。
そのため、横を向いて聞いたのだが、シルルとミュエネは二人そろって、少し離れた場所で小さい声で話し合っていた。
「水で城を沈める戦略だ」
二人の代わりに、ローゼオロメメアが答える。
(水で……城を?)
しかし、それを聞いてもギヨウには全く状況がわからなかった。
その顔を見て、ローゼオロメメアはギヨウが理解していないのを察して、更に言葉を続けた。
「水攻めと言えば響きはいいが、かなり強引な力技だ。城の周りを大きな壁で囲って、そこに水を流し込むんだ」
聞いてから、ギヨウは少し考え込む。
「城を壁で囲むって……そんな事が可能なのか?」
「馬鹿みたいな戦略だろう?初めてやったやつの気が知れない。もちろん、実行する奴もな」
ローゼオロメメアが、ちらりとゼルバの方を見る。
「私は成功させましたからね」
ゼルバは得意気にそう言った。
「てか、水はどっから持ってくるんだよ?」
「川からだな。だから、大きな川から水を流し込める地形でないと、そもそも水攻めは行えない」
(話は分かるけどよ。なんだか、とんでもない戦法だな……)
壮大な戦略であることがわかり、ギヨウは驚いた顔をする。
そんなギヨウを置いて、ゼルバが解説を始める。
「今回こちらの目的は囮ですからね。出来るだけ兵を減らさずに攻める振りをする必要がありました。敵が籠城するのであれば、外側に壁を作るだけの水攻めは適切な戦略でした」
「運が良かっただけだろう。あの川の大きさでは本来成功しなかった。私なら絶対に水攻めは行わない」
ローゼオロメメアは、やけにとげとげしい話し方をする。
(張り合ってるって感じだな)
仲が悪いというわけではなく、同じ戦略を練る者として、互いに張り合っているだけにギヨウには見えた。
「ちょっと待て、どういうことだ?成功したじゃないか?」
しかし、そこは気になってしまう。
「ギヨウ、お前……」
ローゼオロメメアが、憐れむような目でギヨウを見る。
「ギヨウ、戦中に何か起きませんでしたか?」
「何かって……あっ!雨か?」
「そうです。雨が降れば、城内へと水が溜まる速度が速まります」
ギヨウ達の火攻めを阻んだ雨が、ゼルバの水攻めの助けになっていたのである。
「おかげで、敵の援軍が来る前に水攻めが成りました」
だから、運が良かっただけとローゼオロメメアは言ったのである。
「なるほどなー。まあ、結果としては最高だったわけだな」
「そうなりますね」
「早く次の戦が始まらねえかなー」
そして、ギヨウが何気なく言った言葉に、ゼルバは目を光らせた。
「次の戦は大きいですよ。もしかしたら、歴史上で一番大きい戦になるかもしれません」
その言葉に、ギヨウはもちろん、普段驚くことのないローゼオロメメアまで驚く。
「なっ!なんでだよ!」
「どういうことだ?」
「それは――」
ゼルバがもったいぶって言葉を一度切る。
「それは?」
ギヨウが期待して聞き返す。
「始まってからの楽しみという事で」
しかし、ゼルバはそう言って流してしまう。
「な、なんだよー」
「まあ、まだ話もしていませんので、それが上手く行くかもわかりません。期待して待っていてください」
ギヨウにはまるで理解できない事ではあるが、ゼルバが言うのであればという事で、ギヨウは期待をして返事をするのであった。
「おう!」




