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カラザイ城の戦い⑥

 フェズ軍の整列が終わり、五日目の攻城戦が始まった。

 結局、雨は止む気配もなく、力攻めでの継戦となる。


「よし、梯子をかけろ!」


 ギヨウは甲冑を脱いだまま参戦していたが、今まで通りに梯子をかけて城壁を攻略するように指示を出す。

 だが、もちろんギヨウには作戦があるのだ。


「そろそろ行くぞ」


 ギヨウは少し経ってからそう言って、シルルとミュエネ、それにボズルを連れて城壁の下へと向かった。

 そこは、梯子がかかってない場所である。


「頼むぞボズル」

「おお!」


 ボズルが掛け声をかけると、ギヨウの足を持って、体を片手で持ち上げたのだ。


「行くぞ!隊長!死ぬなよ!」

「任せろ!」


 そして――ボズルは、ギヨウを投げたのだ。

 

「うおおおお!」


 作戦は単純明快である。

 ただ、怪力のボズルが、軽装になったギヨウを投げるだけである。

 城壁の高さは8メートルほどである。

 それでも、ギヨウの体は、なんと城壁の上へと、手が――かかったのである。

 この頭の悪い作戦は成功してしまったのである。


「え?」


 加えて言うのであれば、敵が警戒している場所は、梯子がかかっている場所である。

 梯子がかかっていな場所に、突然出現した手に、敵兵は間抜けな声を出してしまう。


「オオオ!」


 そして、気付いたその時には――もう遅かった。

 ギヨウは既に城壁へと登り、剣を振るっていたからである。


「あ……」


 最初にギヨウに気づいた敵は、断末魔を叫ぶまでもなく斬られて死んでしまう。


「おい!敵が登って来たぞ!」

「なに!」

「たかが一人だ」

「ぎゃあっ!」


 城壁の下にいるボズルは、敵兵の叫び声でギヨウが上へと上手く登れた事を理解する。


「よし、次行くぞ」


 ボズルがシルルに向かって言うと、シルルは頷く。


「頼む。変なところは触るなよ」

「触れるほど大きくないから大丈夫だ」

「いてっ!」


 シルルはボズルの背中を黙って叩く。

 その後、ボズルはシルルを片手に乗せると、


「むん!」


 掛け声とともに、ギヨウと同じように、力いっぱい投げ飛ばした。

 シルルも、ギヨウが暴れる所へと飛んでいき、城壁の上へと消えていく。


「次は私ね」


 最後にミュエネがそう言う。

 もちろんこの人選には理由がある。

 敵兵に囲まれても戦える人物であり、尚且つ軽い人物である


 だからこそ、小柄なギヨウと女性であるシルル、それにミュエネが選ばれたのである。

 一応ギヨウは、女性であるレシヘストも提案したが、「あんな筋肉の塊持ち上がらねえ」とボズルに断られてしまった。「なんならジェスの方が軽そうだ」とも言っていた。ジェスは長身ではあるが、ひょろひょろだからである。


「……わかった。任せろ」


 ボズルは少し変な様子で、ミュエネを持ち上げる。


「……よし、行く――あ、おも――」


 ボズルの巨体が傾き、後ろに倒れる。

 投げようとしたところで、姿勢を崩してミュエネ共々倒れてしまったのだ。


「今、重いって言わなかった?」

「あ、いや、その、シルルと違って色々大きいって言うか、いたっ、いや、もちろん男よりは軽いって言うか、いたっ、二人投げて腕が疲れたたって言うか、いたっ、弓が重かっただけって言うか、いたっ、すいません!」


 ボズルはしどろもどろに言い訳をするが、そのボズルの頭を、ミュエネは無言で叩き続けた。


 そして、城壁の上でギヨウはミュエネが登ってこない事を不思議に思う。


「あいつら登って来ねえな」


 ギヨウが戦いながら城壁の下を見ると、仰向けに倒れたボズルと、その頭を叩くミュエネが目に入る。


「なに遊んでんだあいつら……」


 ギヨウは呟くと、


「おい、ミュエネは来れなさそうだ」

「なにっ!あの馬鹿、ギヨウの飯の食い過ぎだ!」


(いや、それはお前もだし、体が重い原因は別にあるだろ)


 ギヨウはそう思ったが、流石に口には出さなかった。いや、出せなかった。


「馬鹿め、いくら強かろうが、二人だけではいつかは力尽きるわ。囲んで攻撃し続けろ!」


 敵の部隊の指揮官であろう人間が、後ろからそう言う。

 それは、実際にそうである。

 ギヨウとシルルがいかに強かろうが、囲まれて後ろもない状態では、長くは持たない。


 しかし、ギヨウ達の後ろに梯子がかかる。

 これもギヨウの作戦である。

 ギヨウ達は、梯子から仲間が来るまで守り切るために強引に登ったのである。


「踏ん張れよシルル」

「こちらの台詞だ」


 窮地ではあるが、ギヨウとシルルはお互いに笑いあった。

 そして、戦い続けたのである。

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