表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/395

カラザイ城の戦い⑤

 四日目の火攻めは、雨により中止となった。

 その日は戦を続けるのをやめ、フェズ軍は陣で休まる事となる。


 その本陣で、マチェバナン将軍は雨の降る空を見上げながら立ち尽くしていた。


「なんと……これは天命か……」


 茫然と立ち尽くすマチェバナン将軍に、息子であるジンゼが歩み寄る。


「雨が降って来たのは仕方のない事でしょう。お体に障ります。中に入ってください」


 ジンゼは老いた父を思って、マチェバナン将軍を天幕へと連れて行く。


「違うぞ、ジンゼ。そうではないのだ」

「どういうことでしょう?」


 マチェバナン将軍はそれに答えることはなく、黙ったままであった。

 しかし、少しの後に口を開く。


「今日の戦はもうよい。雨がやまなければ、明日からはまた力攻めじゃ」

「はっ!そのように命令を出しておきます」


 ジンゼには、マチェバナン将軍の様子が妙である理由はわからなかった。

 しかし、戦中にそんな事を探る気もなかった。

 


     ♦



 全ての兵は陣に戻っており、当然アカツキ隊も自分達の天幕へと戻って来ていた。

 しかし、五百もの兵を入れるほど天幕は大きくはなく、大半の兵は外で雨に打たれ続ける事となってしまう。

 そう言った兵達は、水を弾きやすい布を用いて、何人かで寄り添ってお互い暖を取っていた。


「今日の攻撃は、全部無駄になっちまったな」


 その兵達の近くで、ギヨウは一人立ちながらそう話しかけた。


「ああ、ってギヨウ!お前は隊長なんだから、中に入ってろよ」


 シンザが驚いて声を上げる。


「いや、ボズルにちょっと用があってよ」

「ボズルに?」

「あいつなら、さっきしょんべんしに行ったぞ」

「どっちだ?」

「あっちだよ」

「ありがとよ」


 ギヨウは示された方へと歩きだしたが、


「ああ、そうそう、ミュエネが雨は多分しばらく止まないって言ってたぞ!」


 その途中で立ち止まり、そんな事を言い残していく。


「ええ!」

「まじかよ!」


 歩兵からすれば、それは厳しい事であった。


 ギヨウが少し歩くと、ボズルの巨体が見えてくる。

 ギヨウは、そのままボズルの隣に立って、連れションを始めた。


「ん?うわ!隊長か、驚いた」


 おもむろにボズルが横を見て、驚いて体を震わせた。

 見た目によらず小心者である。


「よう」

「隊長もしょんべんか、でもこんなとこまで来なくてもいいんじゃ?」

「いや、ちょっとお前に頼みがあってよ」

「俺に?」

「ああ、お前にしか出来ない事だ」

「まあ、隊長の言う事なら、なんでも聞くよ」


 そこで、ボズルの水分が切れ、少し経ってからギヨウの水分も切れる。


「ああ、実は――」


 ギヨウは、それをボズルへと話す。

 それを聞いたボズルは、感心したように頷いた。


「なるほど、頭の悪い作戦だけど試してみるか」

「おい、頭が悪いは余計だ!」

「ハハハッ!すまねえ」


 ボズルは笑いながら謝る。ギヨウも本気で怒っているわけではなかった。


「じゃあ、頼んだぜ。シルルとミュエネにも話しとくよ」

「ああ、任せとけ!」

 


     ♦



 そして夜が明け、五日目の戦が始まる。

 その前の本陣での話である。


「よし、じゃあシルル脱げ」


 ギヨウは、少しだけ広い天幕の自分の場所で、シルルとミュエネと対峙していた。

 近くでは、ローゼオロメメアもくつろいでいるが、ギヨウ達には興味がなさそうである。


「妙な言い方をするな!」


 シルルが怒る。


「私は?」


 言われて、ギヨウはミュエネを見る。


「ミュエネは……いいや」


 そして、そう結論付けた。


「そうよね」

「じゃあ、俺も脱ぐぞ」


 そう言って、ギヨウは甲冑を脱ぐ。

 シルルも同じように甲冑を脱いだ。


「大事な甲冑なんだ。頼んだぞローゼオロメメア」


 ローゼオロメメアは戦場に出ることはない。

 後ろで指示を出すだけである。

 今回は天幕から動きすらしていなかった。


「見るのはいいが、盗まれても私にはどうする事も出来ないぞ」

「いや、少しは抵抗してくれよ……」

「私ではなく、残っている奴等が抵抗するから大丈夫だ」


 当然、ローゼオロメメアだけが天幕に残るわけではない。

 三十人程を、陣の防衛として残しているのだ。


「よし、じゃあ行くか」


 甲冑を置くと、ギヨウは戦場へと向かったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ