カラザイ城の戦い④
カラザイ城を包囲して、四日目の朝となる。
この三日間での戦いは、フェ軍からしてみれば徒労に終わり、フェズ軍の士気は下がる一方であった。
その戦況を鑑みて、マチェバナン将軍はある決断をする。
「ジンゼ、ジンゼはいるか?」
マチェバナンが呼ぶと、一人の男がマチェバナンの元へとやって来る。
「なんでしょうか、マチェバナン将軍」
ジンゼと呼ばれた男は、マチェバナンの息子であり、将軍である。
「やはり、力押しでは無理そうじゃ。避けたかったが仕方がない。戦略を変えるぞ」
「はっ!では、火攻めでよろしいでしょうか?」
「うむ、皆に伝達せよ」
それは、事前に話し合っていたが、避けていた戦略であった。
理由は単純である。
火で焼くと、城への被害が大きいからである。
元はフェズ国の城であるし、これからもエルエ国に対する拠点として使うのである。
出来るだけ、被害を小さくして城を取りたいというのがマチェバナン将軍の考えであった。
(時間があれば、兵糧攻めにするがの)
マチェバナン将軍は、自慢の髭を触りながらそう考える
兵糧攻めには時間がかかる。ゼルバが敵の目を引き付けているとはいえ限界があるし、必ずしも敵の援軍が来ないとは限らないのだ。
そして、マチェバナン将軍の命令はフェズ軍へと伝達されていく。
「なにっ!作戦変更だと!」
それは、当然アカツキ隊のギヨウの耳にも入って来ることとなる。
「そうみたいだね。さっき将軍の使いがやってきたよ。梯子は置いて火攻めに専念しろってね」
フェズがそう言う。
「火攻めか……」
ギヨウは神妙な顔をしたが、
「どうやるんだ?」
すぐにとぼけた事を言う。
それに、その場にいた全員は呆れて言葉も出ない。
「今回はひたすら火矢を放てって言う命令が出てるね。石つくりの城壁に、鉄の城門じゃ外からは燃やしようがないからね」
そんな中で、ジェスが優しくギヨウに説明する。
「なんだ、それなら楽なもんだな。弓矢のことならミュエネに任せれるしな」
ギヨウはミュエネの方を見るが、ミュエネは首を振る。
「火矢は使ったことないわよ。森で安易に火を使うわけにはいかないもの」
「それもそうか。まあ、矢を射るだけだろ?そんなに変わらねえよ」
「それはそうだが、間違っても足元を燃やすなよ。草原に燃え広がったら笑えもしない」
当たり前だが、草原に燃え広がったら、味方だけが焼かれることになる。
火攻めをするはずが、自分達に火攻めをしてしまうという事になってしまう。
「わかってるよ、てか、そう言えば火はどこから出すんだよ」
「それは戦場に出ればわかるだろう」
それから、少しの時間の後、再び城攻めが始まる。
「なるほど、こう言う事か」
火矢の作り方は、いくつかの場所で火を焚き、その火を松明に移し、そこから火矢へと移すという方法であった。
「思ったよりも熱いな」
火矢は、矢の先端に油を染み込ませた布を被せたものに火をつけた簡素なものだった。
それを、実際につがえてみると、眼前に火があるという状況にギヨウは少し怯んでしまう。
「落とすなよ!」
シルルが再度注意をしてくる。
(いや、ダチョウ倶楽部じゃないんだからよ……)
だからと言って、流石のギヨウも火矢を落とすことはなく、しっかりと城壁の上へと向かって火矢を撃ち込む。
「あ」
だが、飛距離が足りず、城壁で撥ね返って地面へと落ちてしまう。
「おい馬鹿!ちゃんと狙え」
シルルが怒るが、それはギヨウに限った話ではなく。
他の兵達も、火矢を城壁に弾かれてしまっているのだ。
「文句を言わずに、お前がやれよ!」
ギヨウは弓をシルルへと押し付ける。
「私はいい!」
しかし、シルルはギヨウへと弓を押し返す。
「はあ……矢をちょうだい」
それを見ていたミュエネが、横から火矢を受け取り、ギヨウ達の前で軽く放って見せた。
その火矢は、見事に城内へと消えて行ったのである。
「流石だな、ミュエネ」
「焼き討ちなんて、あんまり気は進まないけどね」
そう言いながらも、ミュエネは火矢を受け取っては撃ち込んでいく。
他の兵も、次第に慣れて来たのか、火矢は城内へとどんどんと飛んでいく。
しかし、火矢や松明を持ったまま敵の矢に射殺される兵も多く、火が燃え広がらない様に必死に消している兵も多かった。
そんな状況ではあったが、間違いなく火攻めは成功した射たのである。
「ん?」
しかし、そこで大きな問題が起きてしまう。
「あ、雨だ」
「そんな!」
雨である。
突然雲行きが怪しくなり、火攻めの最大の弱点である、雨が降って来てしまったのである。




