カラザイ城の戦い③
「隊長、どけ!梯子かけるぞ!」
ギヨウの後ろから巨大な梯子を持った仲間達が走って来る。
「おう、頼んだ!」
ギヨウが下がり、代わりに城壁に梯子がいくつもかかっていく。
しかし、そのいくつかはすぐさま倒されてしまう。
上から力任せに外されているのだ。
「うわ!あぶねえな!」
「そう言われたって、上から外されたらどうしようもねえよ!」
「貸せ!俺が下で踏ん張る!」
そう言って梯子を立て直したのは、巨漢のボズルである。
「ありがとよ、上に気を付けろよ」
ギヨウはボズルが立てた梯子を登りだす。
「上?」
しかし、ボズルが言われて上を見ると、自分へ向かって岩を投げようとしている兵士が目に映り、
「あぶねえ!」
ボズルは梯子から手を離して、岩を避けたのだ。
「え?」
その梯子を、敵が城壁の上から蹴り飛ばし、ギヨウを乗せたまま梯子は逆側に倒れてしまう。
「うおおおお!」
そして、ギヨウは梯子と共に後ろから地面に倒れ込んでしまったのだ。
だが、登り始めたばかりなのが幸いして、たいした高さでもなく、ギヨウは怪我をすることはなかった。
「あ……すまねえ、隊長」
平気そうなギヨウを見て、ボズルは緊張感なく謝る。
「いや、いい。それよりどうやって登ればいいんだよ」
ギヨウは辺りを見回すが、アカツキ隊だけでなく、どの部隊も城壁に梯子をかけて登ろうとしても、上からの攻撃に耐えきれずに失敗してしまっている姿しか目に映らなかった。
「そう簡単に城壁を登れるなら、攻城戦は難しいとは言われない」
シルルが冷静に言いながら梯子を登ろうとするが、上から仲間が落ちて来て、それを避けて断念する。
「見ろよギヨウ!衝車だ!」
シンザが城門の方を見ながら叫ぶ。
そこでは、大きな丸太を乗せた台車を、兵達が城門へと向かって勢いよく突っ込ませていた。
「おお!あれで城門をぶち破ればいいんじゃねえか!」
だが、敵もそれを黙って見過ごすわけではない。
「衝車が来たぞ!狙え!」
城壁の下にいるギヨウにも聞こえるほどの声で、敵が大きな号令をかける。
その号令の通り、敵の矢が衝車を運ぶ兵へと降り注ぎ、その兵達は次々と死んでいってしまったのだ。
それでも、後ろから衝車を運ぶ兵は次々に出て来て、ついに衝車は城門へと辿り着く。
「おお!辿り着いたぞ!」
大きな音が鳴り、衝車は城門へと攻撃を開始する。
だが、何度ぶつかろうとも、城門が開くことはなかった。
「当然ですが、城門ほど頑丈に設計されている場所はありません。城の弱点のようなものですから。衝車で破壊するにしても、何日もかかると思います」
百兵隊長の老人、ルイグメがギヨウへと解説する。
「結局、僕達はこの城壁を攻略するしかないってことさ」
ジェスに言われて、ギヨウは改めて高い城壁を見る。
(守る側の戦を体験したからわかる。この城壁は生半可なことじゃ攻略できねえ)
実際にギヨウ達は、上から矢を射たり、岩を投げているだけで、一度も城壁の上まで敵を侵入させなかったのである。
「それでも、やるしかねえか……」
だからと言って、攻撃をやめることはできない。
ギヨウは再び、城壁の攻略を開始したのだった。
しかし、戦況はエルエ軍、カラザイ城側の有利であるのは揺らぎなく、それから三日間もの間戦は続いたが、フェズ国側はその間犠牲を出し続ける事となる。
そして、やはり三日かかっても、カラザイ城の攻略は進まなかったのである。
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場所は代わりエルエ国王都ルト、当然戦の報せは、エルエ国にも届いていた。
そして、すでに戦場へ援軍は出した後であった。
しかし、その場にいる誰もが不安な顔をしていた。
「間に合うでしょうか?」
宰相デゼイルキが、その不安を口にする。
「こればかりは、侵略する以上仕方のない事だ」
侵略するという事は、王都から遠い所を攻撃するという事である。
そこを攻撃され返すとなると、報せも遅くなれば、援軍も遅くなってしまう。
「し、しかも!相手はあのゼルバだという事ですぞ!」
政官の一人が声を上げる。
ニトを破った一件以来、ゼルバはフェズ国将軍の中で最も警戒される人物となっていた。
「ロヤは援軍が着く前に城を攻略することは不可能だと言っていた。それを信じよう」
どちらにせよ、援軍は送ったのである。
あとは結果を待つのみであった。




