アカツキ隊正式結成②
ゼルバの元をギヨウが訪ねてから、三週間ほどの時が流れ、ギヨウの元へと報せが届く。
その報せはゼルバからのものであり、内容は当然アカツキ隊の募兵に関するものであった。
「なんて書いてあるの?」
ミュエネが、ギヨウのすぐ側から文の中を覗いてくる。
必然的に体が密着するが、ギヨウは冷静に押し返す。
「いや、ちけえよ」
「別にいいじゃない」
「いいから早くしろ」
痺れを切らしたシルルが、腹を立てながら促した。
「俺のせいじゃないだろ……」
ギヨウは文句を言いながらも、文を読む。
「アカツキ隊の募集の紙はだいぶ前に配った。時間は……今から五日後だって!?」
事前に話を聞いていたとはいえ、思ったよりも近い日にちにギヨウは驚く。
(まあいいけどよ)
だが、正直に言えばギヨウに用事などないのだ。
「それで最近変な奴がうろついているのか」
「顔つきが悪いから、覗きかと思って何人か倒したわよ?」
ならず者のくせに、律儀に下見に来た者を追い返してしまっているという話である。
「お前らな……」
ギヨウ自身は何もしていないのだが、最近二人が騒いでいるのは何度か確認はしていた。
「まあ、来れる奴だけ来るように連絡しておこう」
そして、五日間が過ぎた。
♦
「思ったよりも多いな」
ギヨウの目の前には、数えきれないほどの人が集まっていた。
募兵に来た者がほとんどだが、ギヨウの近くには、元々アカツキ隊だった者も多く集まっていた。
仲間になる者を見に来たのである。
「いや、これは……多分そうでもないな」
シルルが神妙な顔つきでそう言う。
「え?どういうことだよ?」
「多分ちょうどくらいだぞ」
「そうなのか?」
ギヨウにはよくわからないが、シルルは兵を率いた経験が多いのでわかるのだろう。
「だが、無名の隊に集まる分には、多いくらいだからよかったな」
ちょうどだというのなら、人数が多すぎてあぶれるよりはいいのだろう。
「まあ、数えればわかるか。シンザ、ダククガ頼んだぞ」
シンザとダククガ、それに数名の仲間が外にだした机と椅子に座り、紙に向かっていた。
出身地や名前などを書きながら、人数を確認するためである。
「ああ」
「任せとけ。気に食わない奴は落としてやるぜ」
「やめろ、馬鹿」
互いにふざけながら、ギヨウは少し前の事を思い出す。
♦
「本当にいいのか?これからのアカツキ隊は激しい戦になるし、親の農業の手伝いだってできなくなるぞ」
シンザとダククガに、アカツキ隊の兵は戦だけをする事になる事をギヨウは伝えた。
そして、その答えはすぐに返って来たのだ。
「まあ、俺達だって親父の仕事は手伝いたいけどよ」
「国の一大事だから、そんな事いってられねーっていうか……」
シンザとダククガはそう言うと、互いに頷き合う。
「お前と最後まで一緒に戦いたいんだよ」
「今更、俺達を置いて行こうなんて虫が良すぎるぜ」
「お前ら……」
そう言われて、ギヨウは胸が熱くなってしまう。
「それに、レリシャちゃんに色々買ってやりたいしな」
「俺も、ワウメちゃんによー」
「って、おい!」
少し感動したギヨウだったが、二人にそう言われて、一気に感動など吹き飛んでしまう。
「お前らな……」
呆れるギヨウだったが、すぐに真剣な顔に戻ると、
「これからも、よろしく頼むぜ」
二人に拳を突き出した。
「ああ」
「任せときな」
それに、二人は答えたのだ。
♦
結局、同じようにジェスはもちろん、ダンレンやイイルダ、ボズルもアカツキ隊に残ったのである。
「なあ、あんたがこの部隊の隊長って本当かい?」
物思いに耽るギヨウの元に、一人の女が話しかけてくる。
(で、でけぇ)
その女を見て、ギヨウはそういう感想しか出てこない。
何がとは言わず、全てがでかいのだ。
背もでかければ、肩幅も拾い、ミュエネのように肌が出ている服を着ているが、ミュエネとは違い、健康的な褐色の肌から、とてつもない筋肉が見えていて、腕も太い。そんな何もかもが大きい女であった。
「なんだ?」
「いや、私も兵の募集を見て来たのさ、あたしはこの国の者じゃないし、女だから雇ってくれない所ばかりでね。誰でもいいなんて豪胆な部隊は少ないのさ」
その女は、同じ女であるシルルやミュエネを見ながら言う。
それはギヨウが願ったわけでもないのだが、ギヨウからしても腕が立つのなら誰でもよかった。
そして、女はとても腕が立ちそうではあるが、女が言おうとすることが、ギヨウにはまるで理解できなかった。
「すまねえが、回りくどい話は苦手でよ。つまり、何が言いたいんだ?」
「ははっ!いいね。つまりさ、あたしにはこの部隊しかない。でも、弱い男の下にはつきたくないのさ。性分でね」
その女は、なんだかやはり回りくどい言い方をするのだが、何が言いたいのかはギヨウにだってわかる。
「つまり、手合わせしたいって事か?」
それがわかった途端、ギヨウは嬉しそうな顔をする。
その顔を見て、女も同じ顔をしたのだ。
「話がはやくて助かるよ。さあ、やろうか」
女が背中から武器を抜き去る。
二つの手斧だ。
それを両手に持って構える。
「ああ」
ギヨウも剣を抜き去った。
「ちょっと待ってよ!」
だが、ジェスがそこに割って入る。
「なんだよジェス。まさか止める気じゃないだろうな」
(そりゃ止めたいけどさ、止まらないのはわかってるからね。それでも、せめて真剣はやめて欲しいんだけどさ)
なんにせよ、もはや止めることをジェスは諦めていた。
「いや、その前に、せめて名乗ったらどうだい?」
言われて、やっと互いに名乗ってない事に気が付く。
「アカツキ隊の隊長、ギヨウだ」
「……レシヘストだよ」
女は何かを言おうとしたようではあったが、結局名前だけを名乗る。
そして、名乗りが終わると戦いが始まったのだ。




