他国情勢①
フェズ国の東にある国であるベザ国。
その王城に、ベザ王が戦から帰還した。
「ベザ王様!よくぞご無事のご帰還を!」
ベザ国宰相デソウズが、ベザ王をいち早く迎え入れにくる。それだけ心配だったのである。
ベザ国は、ギラグ国から戦を仕掛けられ、その戦に王自らが出陣し、帰還したところであった。
結果は、ベザ国の勝利である。
「心配のし過ぎだデソウズ。見ての通り無傷だよ」
無傷ではある。だが、それは不自然であるのだ。
「では、最前線で指揮を取っていたという話は誤報だったのですね」
デソウズが胸をなでおろすが、ベザ王はニヤリと笑った。
「いや、それは本当さ。ギラグの奴等、やはり随分と手強かったな」
「ええ!」
「そろそろいいか?流石に疲れてしまった。鎧を早く脱ぎたいものだな」
「も、申し訳ありません!」
デソウズは急いでどくと、王は馬を走らせて城へと入って行く、後ろから兵士達も同じようについていくのであった。
♦
ベザ王は鎧を脱ぎ捨て、軽く水浴びをすると部屋を出た。
向かう先は、いつもの場所である。
王城の一角にある庭園だ。
「リガズム様!」
そして、その場所へ辿り着くと、一人の女性が彼の元へ駆け寄ってくるのだ。
ユガルア大陸で一番美しいと噂される、メナ国の姫リフォンである。
「これはリフォン姫。どうなさったのです、そんな顔をして」
「そんな……だってリガズム様が心配だったのですもの」
「私は見ての通り、傷一つありませんよ」
リガズムは手を広げて見せる。しかし、綺麗な服の上からでは、傷があるかどうかはわからなかった。
「それはわかっています。お城に帰って来た兵が言ってましたもの。リガズム様は傷一つ付かない程、勇猛な戦いぶりであったと、リガズム様に仕えられて我々は光栄だと」
「ははっ、それは言い過ぎでしょう」
リガズムは謙遜して見せるが、実際に、この国の誰もがリガズムが王になったことを祝福しているのである。
「ですが、戦に出られたとなれば、私は心配だったのです」
「それは申し訳ありません。しかし、私は王として国を守るために戦わなければなりません。もちろん、貴方を守るためにも」
「リガズム様……」
そして二人は、しばらくの間見つめ合う。
しかし、いつまでもそうしているわけにもいかず、リガズムが別の話を切りだした。
「しかし、大変な事が起きたようですね。エルエ国がフェズ国の城を一度に三つも取ったとか……」
その報告を、リガズムは戦から帰還している最中に受けていた。
「はい。このままフェズ国が負けてしまったら、どうなってしまうのでしょう……」
「当然、エルエ国は我が国に攻めて来るでしょうね。そうなっては困るので、フェズ国には頑張って欲しい所ですが……」
今回は勝利したと言っても、ギラグ国からの攻撃は激しいものであり、ベザ国には他に何かをする余裕はないのである。
そして、仮にフェズ国がエルエ国に負ける事となれば、ベザ国はエルエ国とギラグ国に挟まれる形となってしまい、どうにもならない状態になるのは目に見えていた。
「しかし、我々にはどうする事も出来ません。今は自国の事で手いっぱいですからね」
「フェズ国には、ゼルバと言う名将がいるようですので、その方に期待するしかありませんね」
二人はベザ国の先行きを不安に思い、ため息をつくしかなかったのだった。
♦
一方エルエ国では、知将ロヤが帰還し、王に謁見をしていた。
「ロヤよ。よくぞやってくれた」
「お褒めの言葉、ありがたく思います」
王から褒められたというのに、ロヤは浮かばい顔をしていた。その理由は言うまでもない。
「そして、よくぞ我慢してくれた。本来であれば、自分の故郷を取り戻しに行きたいところだろうが……」
今回、ロヤが取った城は、自分の故郷とは関係のない場所である。
「いえ、私はひいおばあ様の代わりを務めなければなりませんので、やるべきことをやったまでです」
「そうか。いつかは必ず、そなたの故郷を取り戻すと誓おう」
強がるロヤに、エルエ王がかける事のできる言葉はこれくらいしかなかった。
「ありがとうございます」
形式的なその言葉でも、ロヤはとても嬉しかったのだ。
「それで今後の事だが、ひとまずは新しい土地の安定に努めるという事で良いな?」
「それが、よろしいかと」
宰相デゼイルキが答える。
「城を取ったことにより、相手の防衛線に大きな穴が空いたので、攻め時ではあるのですが、同時に取ったばかりの城というのは脆いですし、住民の安定も考えなければなりません。それを三城もやらないといけません。とても大変です。どうしても時間は必要となります」
「わかった。だが、出来るだけ早く攻撃を開始できるように努めよ」
「はっ!」
自分の意見を聞き入れてもらい、デゼイルキが礼をする。
「それでは、今日の所は解散とする」
こうして、エルエ国の軍議は終わる。
すぐにエルエ国が攻めてこないという、ゼルバの読みは当たっていたのである。




