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シアレン城の戦い⑧

 ギヨウは、敵を踏みつけながら梯子を下って行き、ついには地面まで辿り着く。


「なんだこのガキは!」

「一人でのこのこと来おって!死にに来たようなものよ!」


 敵兵は当然、一人で降りて来たギヨウに一斉に槍を向け、攻撃を開始した。


「オラァ!」


 だが、ギヨウはその槍を飛んで躱しながら、敵の合間を縫うように走りながら敵を斬り飛ばしていく。


「ギャア!」

「ぐわぁ!」

「なんだこいつ!強いぞ!」


 ギヨウが大暴れをしている間に、シルルやミュエネ。それに、ゼオヤムギアを始めとするアカツキ隊が降りて来て、一気に場外では乱戦が始まった。


「アカツキ隊!俺達も本陣を狙うぞ!着いて来れる奴は付いて来い!」


 ギヨウが敵の包囲の外へ出て叫ぶ。


「勝手に先走るな」

「本当に馬鹿ね」


 ギヨウが作った道を通って、シルルとミュエネが続き、


「隊長!後ろは俺達に任せろ!」


 ゼオヤムギアが最後に敵の前に立ち塞がった。


「頼んだ!」


 ギヨウは、少人数を連れて敵本陣へと走り出す。

 だが、走りながらギヨウが気が付いていたのだ。

 


     ♦



 敵本陣まではそれなりの距離があった。

 当然だ。城の近くに陣取ってしまっては、昼夜問わず矢や石が飛んでくるのだから。


「はぁはぁ……」


 だから、かなりの時間をかけてギヨウはそこに辿りついたことになる。


「やっぱりか……」


 ギヨウ達が着いた時には、敵本陣は落ちた後であった。

 当然落としたのは、五百兵隊長セロガの部隊である。


「まあ、当然だな」

「馬に追いつくわけないでしょ」


 それに加えて、そもそもセロガの部隊の方が先に動いていたのである。追いつくはずもない。

 もちろんギヨウは、それに気が付いていた。

 だが、わかっていても引くわけにはいかなかった。


「遅かったな」


 そんなギヨウ達の元に、セロガが馬に乗って悠々と現れる。


「ハハハッ!そう言ったら可哀想ですぞ、セロガ様!こやつら走ってきたのですからな!無駄な事に!」


 副長のゴウグが大笑いをしながら言う。

 もちろん馬鹿にしているのだ。


「お前ら。勝手に飛び出して、命令違反だろ」


 せめてもの仕返しで、ギヨウはそう言うしかなかった。


「ふんっ、本陣を落としたから文句は言われまい。それに、命令違反はお前達もだろう?」

「うっ……」


 痛い所を突かれて、ギヨウは何も言えなくなってしまう。


「本陣を落としたのは、我々セロガ隊だ。今回みたいに、ちょろちょろと動き回るのはいいが、俺達の邪魔はするなよ」


 それだけ言うと、セロガはどこかへ行ってしまった。


「ちっ!」


 悔しい事ではあるが、実際に本陣を落としたのはセロガ隊であるし、ギヨウは何も出来ていないので何も言い返すことは出来なかった。


(セロガ隊か……)


 セロガは、自分の名前をそのまま隊の名前にしているということになる。

 自己愛が強いと言えばそうだが、セロガにはそういう雰囲気はあった。

 それにギヨウとて、アカツキ隊と言うのは自分の名前からとったものなのだから、何も言えないのである。


「おい、ギヨウ」

「お、おう。なんだ」


 シルルは、無言で城の方を指す。

 まだ戦は終わっていないのである。


「そうだったな。よし!戻るぞ!」


 ギヨウ達は急いで戻るが、セロガ隊は本陣から動く様子はなかった。

 理由はわからないが、本陣が落ちれば戦は終わったようなものである。

 実際に、ギヨウ達が戻ったころには、エルエ軍は自分達の本陣にフェズ国の旗が立っているのを見て戦意を喪失していた。

 そのため、逃亡する敵なども多く、すぐに決着はついてしまったのである。

 四日間のシアレン城の戦いは、フェズ国の圧勝で終わったのだった。

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