シアレン城の戦い⑤
ほとんど最後に残った兵達をかき集め、なんとかギヨウ達は五百兵隊を作り上げる。
そして、アカツキ隊は西側の城壁の上の守備を任されたのだった。
「配置完了しました」
「おう、ありがとうよ」
百兵隊長ルイグメがギヨウの元に報告に来る。
ギヨウの元には、百兵隊長が三人しかいない。
シルル、ミュエネ、ジェスである。
残る二人は、先程に兵と一緒に募集した。
一人は、老人であるルイグメである。
「私は、何十回も戦に出てるんですよ。まあ、何十回も出てやっと百兵隊長なんですがね」
そんな紹介をされた。
もう一人は、ギヨウ達ほどではないが、若い戦士であるゼオヤムギアである。
「俺は弱い隊長の元にはつきたくない。だが、あんたは強そうだ。よろしく頼む」
そんな紹介をされた。
かくして、広い城壁の上にアカツキ隊は布陣したのである。
城壁は西側であり、エルエ国はフェズ国の南側にある国だ。
つまり、ギヨウ達が守る城壁は、正面ではないという事になる。
「せっかく馬に乗って来たんだけどな」
それとは関係のない事で、籠城戦に対してギヨウは不満だった。
「仕方がないだろう。斥候の報告にあったエルエ軍の数には、太刀打ちできない兵しか集まらなかったんだから」
そのため、指揮官が籠城戦を選択し、準備を進めたのである。
今更、変える事は出来ない。
「んで、そのエルエ軍はどこなんだよ」
しかし、エルエ軍の姿はまだ見えない。
「もう、1日も経たずにやってくるのではないかということのようだね」
どこからか現れた、ジェスが話に加わって来た。
「どこに行ってたんだよ、ジェス」
「ちょっとその辺で、情報収集をしてきたのさ」
「それで、成果はどうなんだ?」
「こっちの数は3000、敵の数は6000と予想されてるみたいだね」
それを聞いて、ギヨウは黙ってシルルの方を見る。
「野戦で言うなら二倍の兵差は厳しいが、攻城戦に必要な兵は最低でも三倍ほどと言われている」
呆れたように、シルルが解説する。
「じゃあ、籠城戦になるならこっちの方が有利ってことか」
(ていうか兵が3000ってことは、俺の部隊はその6分の1か)
自分が重大な役割だという事を、ギヨウは改めて感じる。
「たったの3000と思ってそうな顔だな。むしろ今までの数万の兵を集めて戦う事の方が稀だ。といっても、こっちには準備をする時間もなかった。今頃、更に数千の援軍がこちらに向かっているはずだ」
その中には、シンザやダククガも含まれているという事である。
「あとはこっちの指揮官はここの城主のブンラツ。相手の指揮官はダゲズーだってさ」
ジェスが説明し、やはりギヨウは黙ってシルルの方を見た。
「いや、どっちも知らん名だな。ゼルバ様なら、フェズ国の全ての城主を把握してらっしゃると思うが……」
「そうか。ん?」
ギヨウがそれに気が付き、城壁を走る。
「どうしたんだあいつ?」
「敵が来たのよ」
シルルは不信な顔をするが、ミュエネは当然のように言う。
ミュエネは既に気が付いていたのだ。
「おい!敵だ!敵が来たぞ!」
それに続いて、城壁を走って端に行ったギヨウが大声を上げる。
「な、なんだって!」
「何も見えないぞ、間違いじゃないのか?」
「鐘だ!鐘をならせ!」
周囲はそれに驚き、騒ぎ出して、鐘を鳴らした。
それからすぐに、誰しもに兵の侵攻を現す土煙が見えだし、ギヨウの言ったことが正しい事に気が付いた。
そして、それから間もなくして、エルエ軍がシアレンの前の平地に姿を現したのだ。
「おい、あいつら呑気に陣を設営し始めたぞ。今いけば痛手を与えられるんじゃないか?」
城壁の端から戻って来たギヨウがそんな事を言う。
「どうやって行く気だ。城門は開かないぞ。それに陣を設置する時が危険なのは相手も承知だ、当然奇襲は警戒している」
「くそっ!まどろっこしいな」
ギヨウは仕方なく、城壁の上で戦が始まるのを待つしかなかった。
しかし、エルエ軍は陣を作り上げても攻撃を始めることはなく、その日に戦が始まる事はなかったのである。




