シアレン城の戦い④
シアレンの街に入った四人は、再び馬に乗って街の中を歩いていた。
「やっぱり全然人がいねえな」
多くの人が逃げ出した街の中は、不自然なほど人がいなかった。
「どこかに兵は集まっているはずだ。城の方か……正面の門付近か……どちらかだろう」
シアレンの街は城下町である。街の中心には、立派な城が建っていた。
「じゃあ、とりあえず城の方へ向かってみるか」
三騎は城へと向かうため、街の中で馬を走らせる。
その時の事であった。
ギヨウ達の走らせる馬が十字路へと入った時に、横から騎兵隊が来るのにギヨウ達は気付いた。
しかし距離もあったため、ギヨウ達はそのまま十字路を走り去ろうとしたのだ。
「そこの貴様ら!待てぇい!」
だが、その騎馬隊の一人が大声でギヨウ達を止めて来たのであった。
ギヨウ達は仕方なく馬を止まった。
それからしばらく待ってから、その騎兵隊がギヨウ達の元へと辿り着き、騎兵隊も止まった。
騎兵隊は長い行列を作っており、その先頭にはギヨウと変わらないくらいの歳の青年がおり、ギヨウ達を静かに見下していた。
「なんだよ?」
ギヨウが立ち止まらせた理由を聞く。
「貴様ら、何故我々が通るまで待たなかった!」
「はぁ?」
とんでもない難癖である。
「通っても問題ない距離だったからだよ」
「そんな言い訳が通じるか!この御方を知らぬのか?」
叫んでいた騎兵の一人が、先頭の若い青年を示す。
「ルストク・ハウイフ・ガエロオ将軍の子、ルストク・ハウイフ・セロガ五百兵隊長であるぞ」
(いや、誰だよ……)
当然、ギヨウはそれが誰かはわからない。
しかし、一つだけわかることがあった。
「よくわかんねーけど。俺と同じ五百兵隊長なんだろ?」
それを聞いて、騎兵隊がざわめく。
「つくならもっとましな嘘を吐いたらどうだ?」
そして、やっと先頭の若い青年、セロガが口を開いたのだ。
その眼は、明らかにギヨウ達を見下していた。
ギヨウが反論しようとしたところ、シルルがそれを制して口を開く。
「嘘ではないぞ。私はゼルバ将軍の側近シルルだ。この男は間抜け面だが、五百兵隊長であることは私が保証しよう」
「貴様ら!嘘に嘘を重ね――」
怒鳴ろうとした騎兵を、セロガが止めた。
「例え本当だとしても、女連れで戦場に来るとはな。戦場を遊び場と勘違いしているようだな」
「「「ハハハッ!」」」
セロガが皮肉を言うと、騎兵隊が笑った。
「お前ら!」
あからさまに馬鹿にするような態度に、ギヨウは激昂する。
だが、それを制したのはシルルであった。
「一々相手にするな。名家の貴族など、こんな奴らばかりだ。特にこの国はな」
シルルは、ギヨウにだけ聞こえるように顔を近づけて耳打ちした。
(確かにそうだな……だけど)
それを聞いて、ギヨウは落ち着きを取り戻す。
(こいつ、相当やるぞ)
セロガの体は、細身でありながらしっかりと筋肉がついており、そのたたずまいからはただならぬ雰囲気を出していた。
ただ貴族の息子だからという理由で、五百兵隊長になったわけではないとギヨウは確信する。
「話は終わりか、じゃあ俺達は行くからな」
冷静になったギヨウはそう言ったが、セロガは尚も挑発を続けた。
「逃げるのか?」
「戦が始まれば、どっちが遊びに来たのかわかるさ」
「ふんっ」
ギヨウが煽り返したが、セロガはそれを鼻で笑って返した。
「せいぜい邪魔だけはするなよ」
セロガが言い返し、ギヨウ達は走り去る。
「くそっ!失礼な奴等め!」
その背中に対して、セロガの隣にいる男である、古くからルストク家に仕えるゴウグは悪態を吐いたのだった。
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ギヨウ達がそれから少し走ると、城に辿りつく前に、大きい広場のようなところに出た。
そこには、多くの兵が集まっていたのだ。
「おい、ギヨウ!それにミュエネやジェスも、やっぱり来たな!」
そこでギヨウ達は、多くの兵に囲まれて声をかけられた。
「おお!お前ら来てたのか」
ダンレンにイイルダ、ボズルに他の見知った顔。
それは、前回の戦いで共に戦ったアカツキ隊の面々であった。
「来てたどころか、お前達を待ってたんだぜ」
「遅いぜ、隊長!」
「俺達はアカツキ隊だからよ!」
次々に声が上がる。
前回の戦いの生き残りなので、数にすれば50人程度である。
ギヨウが率いるべき五百兵隊には、ほど遠かった。
しかし、ギヨウからすれば、仲間が自分を待っていてくれたのはとても頼もしかったのである。
「お前ら……今回の戦も頼むぜ!」
「「「おおおお!」」」
ギヨウの言葉に、その場が沸き上がる。
周囲の兵達はその様子に驚き、茫然とギヨウ達を眺めていた。
「それで、なんでここに集まってるんだ?」
「ここで兵の編成をしてたからだよ」
「そうなのか?」
ギヨウが回りを見渡す。
たしかに、行き場のなさそうな兵が、大きい広場でたくさんウロウロとしている。
「僕達は、他の部隊に入らない様に、アカツキ隊の部隊員ですって言って断ってたんだよ」
「ついでに、その辺のやつらに声をかけて、少し兵を集めておいたぜ」
イイルダとダンレンがそれぞれ言う。
「これはありがたいね」
「と言っても、もう一通りの兵は部隊に組み込まれて、配置についてしまったんだけどな」
「配置って、外に出てったのか?」
「あ?何言ってんだよ隊長」
集まったアカツキ隊全員が呆れたような顔をする。
そして、そのうちの一人が言った。
「今回の戦は籠城戦だよ」




