シアレン城の戦い②
ゼルバとの話を終え、ギヨウは家へと戻って来ていた。
家にはミュエネはもちろん、シルルも付いてきていた。
シルルは、帰り際に少しだけ自分の家に帰り、しかしすぐにギヨウと合流したのだ。
「別に付いて来なくてもいいんだぞ」
その際にギヨウはそう言ったのだが、
「お前の部隊の面倒をみることになったんだから、仕方なくだ。仕方なくだ」
何故か、仕方なくを二回言われた。
別にジェスだって別の街にいるのだから、わざわざギヨウの家に住み着く必要はないのだが、どうせ仕方なくと言われると思って、ギヨウはそれ以上何も言わなかった。
「それで、五百兵隊長になったのはいいんだけど、具体的に何かすることはあるのか?」
ギヨウはシルルへと聞く。
シルルだって自分の部隊を持っていたのだし、ゼルバがシルルを頼るように言ったからである。
「え?あ、ああ……そ、そうだな……」
だが、何故だかシルルの様子はおかしかった。
「とりあえず、騎馬の部隊を作った方がいいんじゃないか?ミュエネと、私が隊長で、百兵隊の騎馬部隊を二つだ」
五百の内、二百を騎馬隊にして、三百を歩兵にする。
凄く自然な発想ではある。
「それで、その二百もの馬はどこから調達するんだ?戦場に行ったらもらえるのか?あと、騎馬に乗って戦える兵士も」
農民上がりの歩兵では、騎馬に乗れるか怪しいし、乗って戦うのはもっと難しいであろう。
「そ、それは……自分で考えろ!」
シルルは逆切れした。
「いや、お前が言い出したんだろ……シルルの部隊はどんなだったんだよ」
「私の部隊は、元々親が率いていた兵士を、ゼルバ様が再編した部隊だった」
つまり、最初から用意されていた部隊ということである。
ゼルバお抱えの貴族という事なら、そんなものなのだろう。
そして、結局のところ、シルルはギヨウのようにほぼゼロの状態から、部隊を集めたことはないという事である。
(だから、最初様子がおかしかったわけだ)
「そもそも、私は馬がないわよ」
二人が難しい顔をしているところで、ミュエネが言った。
「馬一騎くらいなら、買えばいいだろ」
結構な出費にはなるだろうが、背に腹は代えられないというところである。
「いや、私は自分の馬にしか乗らないわ。その辺の馬に命は預けられないもの」
「自分のって……」
森に返してしまった馬である。
つまり、森まで取りに帰らなければいけないという話だろう。
しかし、ミュエネ自身は森に帰る気はないということである。
「じゃあ、俺の馬使っていいよ。あれだって、森の民の馬だろ」
「あなたに死なれたら困るのだから、あなたが乗りなさい」
ミュエネは譲る気はなさそうであるため、ギヨウはそれ以上の追及はしないことにする。
「じゃあ、騎馬隊は置いとくとして、シルルのみたいに兵を事前に集めたり出来ないか?」
「出来ると言えば出来るが、もっと部隊に名声が欲しいな。戦場で有名になれば、その部隊に入りたいという兵が自然と集まってくるものだ」
しかし、アカツキ隊はそれほど有名ではないという話であろう。
「出来ると言えば出来るってのは?」
「この近辺の人に働きかければいい。特にこの街であれば、ギヨウの出世をしているから人は集まるかもしれん」
「なるほど……」
ギヨウはそう言ったが、少し考えてから、
「いや、やめておこう」
首を振った。
「皆それぞれ戦う理由があるのよ。私のようにね」
その理由を簡単に見抜き、ミュエネがそう言う。
ギヨウは、見知った顔の人間が死ぬのが嫌だったのだ。
(たまに繊細な部分があるよな)
そして、シルルは呆れたように溜息をついたのだ。
「じゃあ、兵も戦場で集めないといけないのか……あれ?五百兵隊長になったけど出来ることなくねえか?」
「まあ……そうなるな。兵がいれば訓練もできるし、賊を狩ったりも出来るんだがな」
(そういうのは貴族の特権ってわけだな)
シルルのように、最初から兵を集められる者のみという事である。
「まあ、今はとにかく戦場に出るしかないって事か」
話がまとまったところで、家の扉が勢いよく開く。
「おいギヨウ!いるか!」
焦って入ってきたのはシンザであった。
「おう、どうした」
シンザの焦りようを余所に、ギヨウは能天気に返事をする。
「エルエ国がまた侵攻してきたって!時間がないみたいで、緊急で募兵が始まったみたいだぞ!」
「なに!」
しかし、その言葉に驚いたのだった。




