表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/395

シアレン城の戦い①

 前回の戦から日にちも経ち、ゼルバも城に戻って来たという事で、ギヨウ達は城を訪れていた。


「なんだか、随分と良い服を着ていますね」


 ゼルバは、三人を見るとそう言った。

 シルルとミュエネはともかく、ギヨウも買ったばかりの綺麗な服を着ていたからである。


「ギヨウからもらったのよ」

「こいつは、こういうのが趣味らしい」

「変な言い方するなよ」


 そんな事を言うシルルとミュエネだが、その顔は嬉しそうであり、ゼルバはその気持ちを読み取り微笑んだ。


「まずはギヨウ。五百兵隊長への昇進、おめでとうございます」

「おう」


 ギヨウは敵将デイリゥを討ち取っており、戦に貢献したとして、五百兵隊長への昇任が決まっていた。


「それにミュエネも、百兵隊長、おめでとうございます」

「昇進には、興味はないんだけどね」


 同じように功を上げたとして、ミュエネも昇任していた。


「まあ、二人とも私が進言して位を上げたのですが」


 そもそも、戦の総大将はゼルバであり、その作戦の要であったアカツキ隊には、特別な褒章を出すようにゼルバが取り仕切っていた。


「実のところ、ギヨウは千兵隊長にしようか悩んだのです」


 更にゼルバは、そんな重要な事を言う。


「そうなのか?」

「ええ、ですが、やめました」


 やめたという事は、できるのにやめたということである。


「なんでだ?」


 だが、そこに理由はあるのは明白である。


「それは、ギヨウ。あなたには経験を積んで欲しいからです」

「経験?」

「ギヨウあなたは強い。天下無双を目指すという、大言を言うだけの事はあります。ですが、はっきりと言わせていただきましょう。あなたでは、武の将オグルブや、守の将ズェガェには、一対一で戦ったとしても勝てないでしょう」

「何!」


 ギヨウは衝撃を受けるとともに、


(やっぱりか)


 心の中では納得する部分もあった。

 実際に、守の将ズェガェと対峙した時に、彼がとても大きく見えたからである。


「そして、それは腕前の差ではありません」

「経験の差ってことか……?」


 経験を積んで欲しいというからには、そう言う事なのだと思いギヨウは口にする。


「違います」


 しかし、ゼルバはそれを否定した。


「じゃあ、なんなんだ?」

「背負うものの違いです。彼らは数多の戦場を駆けて、多くの色々なものを背負ってきました。将としての責務、国への想い、死んだ仲間から託された気持ち、まだ生きている者達との絆」


 精神論ではある。

 しかし、ギヨウはその精神論に反論する気はなかった。


「だから、あなたには色々な戦場へ行って欲しい、私の後に付いてくるだけではなく」

「ああ、任せとけ」


 理由を聞かなくとも、ギヨウは五百兵隊長になったのだから文句を言う気はなかった。

 それでも、ゼルバは説明をし、その考えをギヨウは理解したのだ。


「というわけだ。頑張って来いよ」


 シルルが横から他人事のように口を出す。


「何を言っているのです、シルル。あなたもギヨウに付いて行くのですよ」


 しかし、ゼルバが当然のように言い放つ。


「え?」


 それにシルルは困惑してしまう。


「な、何故ですかゼルバ様!私はゼルバ様の側近ですよ!」


 その言葉に、困ったようにゼルバは頭を押さえた。


「正直に言いますと、ギヨウとミュエネだけでは、とても五百の兵を纏めれるとは思いません」


 ゼルバの表情は、まさに切羽つまった状態、というのを感じ取れる表情である。

 失礼な事ではあるが、事実なので、ギヨウとミュエネも何も言い返せない。


「それはそうですが、私でなくてもいいではありませんか」

「いえ、貴方が適任だと、私は思いますよ」


(本当は、シルルでも不安なのですが……)


 ゼルバはその言葉は胸にしまっておく。


「他に一人だけ。アカツキ隊の軍師に相応しい人物がいたのですが……まだ早いと断られてしまいました」


 シルルが迷っているのを見て、更にゼルバは駄目押しする。


「そうですか。ま、まあ、私がいないと心配ですからね。仕方ないですね」


 意外にも、シルルはあっさりと折れる。

 それは、ゼルバの考え通りである。

 

(本当は付いて行きたかったのでしょう)


 ゼルバはそう考えていたのである。


「あと、シルルは一度は家に帰るようにしてください。親が心配していましたよ。ギヨウと言う男の家にいると言ったら、少しは安心していましたが」


 ゼルバが余計な言葉を付け加え、ギヨウとミュエネはシルルの方を見た。

 心配はしていないという本人の言葉と食い違っているからだ。


「はい……」


 シルルは何かを言い返すこともなく、力なく返事をしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ