戦後の日常②
夜になると、ギヨウとミュエネとシルルは、川の字となって寝所へと入る。
もちろん同じ寝所ではないし、ギヨウの寝所だけは少し離されている。
「ねえギヨウ。寝た?」
シルルが来てから、ミュエネはよくこう聞いてくる。
「いや、まだ寝てないぞ」
そして、ほぼ毎回ギヨウはそう答えるのだ。
「そう……ねえ、シルル――」
ミュエネはそう言うと、隣で寝ているシルルと話し出した。
「――それで、その時ギヨウが、珍しくご飯を作るのを失敗したのよ」
ミュエネが話すと、シルルがくすくすと笑った。
「そうなのか。顔に似合わず、料理が得意なあいつが失敗するとは珍しいな」
(俺寝てないって言ったよな?)
何故ギヨウが寝ているのか聞いてから話し出すのかわからないし、何故か話す内容はギヨウの事が多かった。
いや、当然と言えば当然なのだ。森で育ったミュエネと、貴族として育ったシルルでは、共通の話題はギヨウの事になりがちである。
だがそれにしたって、本人の前で話さなければいいのにとギヨウは思う。
思うというか、実際に言ったことがある。
そうしたらギヨウの話は終わったのだが、代わりに、シルルの終わらないゼルバ自慢が始まったので、それ以来ギヨウは口を出そうにも出しづらくなってしまったのだ。
「カレーと言うのを作ろうとしたみたいなのだけど、苦くて食べれたものではなかったわ」
「あれは、スパイスの代わりに使おうとした、その辺に生えてた実の調合が上手く行かなかったんだよ」
だが、それでも、料理の事となればギヨウはつい口を出してしまう。
「お前は早く寝ろ」
にべもなくシルルが言い切る。
(じゃあ俺の話するなよ……)
そう思ったが、ギヨウは口には出さなかった。
「明日は出かけるんだから、ほどほどにしろよ」
代わりにそう言うと、眠りに着こうとする。
「他にも――」
「そんな事が――」
だが二人の仲は良く、話は続くので、中々眠れないのだった。




