伝わった戦報
ゼルバが知の将ニトを破ったという戦報は、ユガルア大陸全土へと広がっていった。
エルエ国、武の将オグルブは、自宅で妻達を抱いている時に、その報せ受けた。
「オグルブ様!」
「なんだ!この部屋に入って来るとは、覚悟は出来ているんだろうな?」
当然オグルブは裸であり、妻達も裸である。
妻達は体を隠し、オグルブはその前に立つように、裸のまま堂々とした態度で使者の前まで歩いて行った。
「ニト様が!ニト様が!」
「ニトがどうした。領土を攻められた話は聞いているが、まさか負けたわけではあるまい」
オグルブは、ニトの勝利を疑ってはいなかった。
「そのまさかでございます!ニト様!自領地にて、降伏して首を斬られたとのことです!」
「なにっ……!」
だからこそ、オグルブは強い衝撃を受ける。
「間違いないのだな!」
オグルブは、念を入れて部下へと尋ね直した。
「間違いありません!」
部下は、オグルブの信頼している者であり、とめどなく涙を流していた。
「そうか……わかった……下がれ……」
オグルブは、力なく寝所へと座り込む。
その体へ、妻達が慰めるべくすり寄った。
「誰でもいい。妻を全員呼んできてくれ」
だが、オグルブはそんな事を言う。
「え……」
妻達は困惑するが、すぐにそれを聞いて一人が、他の妻を呼びに行った。
その日から、オグルブは部屋に籠って数日間妻を抱き続けた。
まるで、何かを忘れるためだったかのように。
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守の将ズェガェは、男同士で自宅のだだっ広い風呂に入っている時に報せを受けた。
「急報です!ニト様が敗北し、死亡致しました」
ズェガェは目をあらんばかりに見開くと、
「そうですか……」
静かにそれだけ言った。
「ズェガェ様!」
「なんと!お元気がなくなられておられる!」
「我々が、お慰めいたしましょう!」
同じ風呂に入る、筋肉質な若い男達が、ズェガェへと詰め寄る。
しかし、ズェガェはそれをやんわりと押しのけた。
「いえ、一人にさせてください」
そして、自室へと帰っていき、久しぶりに一人で寝所へと入った。
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知の将ニトの曾孫であるロヤは、秀の将ジアヒスの元へと避難をしていた。
「そんな……」
そしてニトの死を聞いて、膝から崩れ落ちた。
ロヤの母、セミフも崩れ落ちこそしないが、悲しみから涙を流す。
そんな中で、ジアヒスは険しい顔をしながら空を見上げるだけであった。
そのジアヒスに、ロヤは後ろから掴みかかる。
「ジアヒス様!今からでも間に合います!ジアヒス様の兵を率いて、フェズ軍を攻撃致しましょう!」
ジアヒスはその手を、やんわりと自分から外した。
「それは、ロヤ本人の言葉ですか?それとも、知の将ロヤとしての言葉でしょうか?」
そして、そう聞いた。
その言葉に、ロヤは困惑する。
「私は知の将ではありません。それは、ひいおばあちゃんの……」
ロヤの言葉を、ジアヒスはざっくりと切り払う。
「いいえ、もうニトは死にました。ニトの遺言により、知の将はもうあなたのものですロヤ」
「そ、そんな……」
ロヤは更に困惑し、言葉が出なくなってしまった。
「もう一度聞きます、ロヤ。あなたは知の将として、どう動きますか?」
ロヤは俯いてしばらく黙っていたが、すぐに顔を上げる。
その顔つきは、凛としていた。
「王の元へ参ります。正式に知の将の襲名をさせていただくために」
それはつまり、今すぐに故郷を取り戻しに行くわけではないという事である。
そんなロヤの態度を見て、ジアヒスは嬉しそうに笑った。
そして、再び空を見上げた。
(ニト。あなたの曾孫は、立派な知の将となり、大陸中に勇名を馳せる事となるでしょう)
空を見上げるジアヒスは、そんな事を考えていたのである。
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フェズ国王都キエラにて、将軍ビルガンはゼルバの勝利の報告を受け、それを王に伝えに来ていた。
(ゼルバめ、勝ちおったか)
ゼルバを邪魔に思っているビルガンからすれば、手放しには喜べないものである。
しかし、エルエ国との戦いは避けて通れないものであり、勝利自体は喜ばしいものではあった。
「フェズ王様。失礼いたします」
相変わらず女達の嬌声が聞こえてくる部屋の扉を開き、ビルガンはフェズ王へ報告をする。
「ん~どうしたビルガンよ」
相も変わらず女に囲まれ奉仕されているフェズ王が、呑気な声を出す。
「はっ!ゼルバが勝利したと!」
(どうせ興味はないだろうがな)
ビルガンはそう思っていた。
フェズ王は、この国の行く末など興味がないのだ。
ただ、自分の快楽だけを求め続け、国が滅びそうになったら逃げるだけなのだろう。
「おお!そうか!そうか!やはりな!」
だが、予想以上にフェズ王が食いついてきて、ビルガンは困惑した。
「よ、喜んでいただけて何よりでございます!」
「俺は、あいつは優秀だと思ってたからな。やはり、ゼルバに任せておけば良いな」
フェズ王はどうにも上機嫌である。
戦に勝ったのを喜んでいるのではなく、自分の予想が当たって嬉しいという感じである。
なんにせよ、ビルガンからすれば喜ばしい事ではない。
だが、上機嫌であるのならば、ビルガンから言えることはなかった。
「おお!めでたいな!今日は女を増やすか、あと10人連れてこい!そうだ!ゼルバを呼べ!参加させてやろうではないか!」
特別上機嫌で、フェズ王はそんな事を言う。
だが、それは無理な話である。
「申し訳ありませんが、フェズ王様。ゼルバはまだ戦から帰ってはおりません。いち早く王に伝えようと、急使のみが参った次第でございます」
「なんだつまらん……じゃあ、おまえでいいや」
「はっ……私ですか?」
突然白羽の矢が立ち、ビルガンは困惑する。
「嫌なのか?」
「とんでもございません!参加させていただきます!」
ビルガンは即答したが、正直に言えば嫌であった。
別に女を抱くのが嫌いなわけではない。
ただ、たくさんの女体に囲まれ、王の前で女を抱くというのは、とても気を遣うのである。
「そうか!おい!誰か!若い女を連れてこい!こいつは若い女が好きだからな!」
「あ、ありがとうございます!」
ビルガンは思ってもいない感謝の言葉を述べる。
しばらくして、若い、若すぎる、裸の女達が部屋へと入って来る。
そして、みだらな宴が始まるのだ。
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このように、ゼルバというフェズ国の若い将軍が、エルエ国の四傑将の一人、知の将ニトを打ち破ったという話は広がっていった。
フェズとエルエ、両国だけでなく、残りの国、ア国、ギラグ国。それに、ベザ国にもである。




