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伝わった戦報

 ゼルバが知の将ニトを破ったという戦報は、ユガルア大陸全土へと広がっていった。


 エルエ国、武の将オグルブは、自宅で妻達を抱いている時に、その報せ受けた。


「オグルブ様!」

「なんだ!この部屋に入って来るとは、覚悟は出来ているんだろうな?」


 当然オグルブは裸であり、妻達も裸である。

 妻達は体を隠し、オグルブはその前に立つように、裸のまま堂々とした態度で使者の前まで歩いて行った。


「ニト様が!ニト様が!」

「ニトがどうした。領土を攻められた話は聞いているが、まさか負けたわけではあるまい」


 オグルブは、ニトの勝利を疑ってはいなかった。


「そのまさかでございます!ニト様!自領地にて、降伏して首を斬られたとのことです!」

「なにっ……!」


 だからこそ、オグルブは強い衝撃を受ける。

 

「間違いないのだな!」


 オグルブは、念を入れて部下へと尋ね直した。


「間違いありません!」


 部下は、オグルブの信頼している者であり、とめどなく涙を流していた。


「そうか……わかった……下がれ……」


 オグルブは、力なく寝所へと座り込む。

 その体へ、妻達が慰めるべくすり寄った。


「誰でもいい。妻を全員呼んできてくれ」


 だが、オグルブはそんな事を言う。


「え……」


 妻達は困惑するが、すぐにそれを聞いて一人が、他の妻を呼びに行った。

 その日から、オグルブは部屋に籠って数日間妻を抱き続けた。

 まるで、何かを忘れるためだったかのように。

 


     ♦



 守の将ズェガェは、男同士で自宅のだだっ広い風呂に入っている時に報せを受けた。


「急報です!ニト様が敗北し、死亡致しました」


 ズェガェは目をあらんばかりに見開くと、


「そうですか……」


 静かにそれだけ言った。


「ズェガェ様!」

「なんと!お元気がなくなられておられる!」

「我々が、お慰めいたしましょう!」


 同じ風呂に入る、筋肉質な若い男達が、ズェガェへと詰め寄る。

 しかし、ズェガェはそれをやんわりと押しのけた。


「いえ、一人にさせてください」


 そして、自室へと帰っていき、久しぶりに一人で寝所へと入った。

 


     ♦



 知の将ニトの曾孫であるロヤは、秀の将ジアヒスの元へと避難をしていた。


「そんな……」


 そしてニトの死を聞いて、膝から崩れ落ちた。

 ロヤの母、セミフも崩れ落ちこそしないが、悲しみから涙を流す。


 そんな中で、ジアヒスは険しい顔をしながら空を見上げるだけであった。

 そのジアヒスに、ロヤは後ろから掴みかかる。


「ジアヒス様!今からでも間に合います!ジアヒス様の兵を率いて、フェズ軍を攻撃致しましょう!」


 ジアヒスはその手を、やんわりと自分から外した。


「それは、ロヤ本人の言葉ですか?それとも、知の将ロヤとしての言葉でしょうか?」


 そして、そう聞いた。

 その言葉に、ロヤは困惑する。


「私は知の将ではありません。それは、ひいおばあちゃんの……」


 ロヤの言葉を、ジアヒスはざっくりと切り払う。


「いいえ、もうニトは死にました。ニトの遺言により、知の将はもうあなたのものですロヤ」

「そ、そんな……」


 ロヤは更に困惑し、言葉が出なくなってしまった。


「もう一度聞きます、ロヤ。あなたは知の将として、どう動きますか?」


 ロヤは俯いてしばらく黙っていたが、すぐに顔を上げる。

 その顔つきは、凛としていた。


「王の元へ参ります。正式に知の将の襲名をさせていただくために」


 それはつまり、今すぐに故郷を取り戻しに行くわけではないという事である。

 そんなロヤの態度を見て、ジアヒスは嬉しそうに笑った。

 そして、再び空を見上げた。


(ニト。あなたの曾孫は、立派な知の将となり、大陸中に勇名を馳せる事となるでしょう)


 空を見上げるジアヒスは、そんな事を考えていたのである。

 


     ♦



 フェズ国王都キエラにて、将軍ビルガンはゼルバの勝利の報告を受け、それを王に伝えに来ていた。

 

(ゼルバめ、勝ちおったか)


 ゼルバを邪魔に思っているビルガンからすれば、手放しには喜べないものである。

 しかし、エルエ国との戦いは避けて通れないものであり、勝利自体は喜ばしいものではあった。


「フェズ王様。失礼いたします」


 相変わらず女達の嬌声が聞こえてくる部屋の扉を開き、ビルガンはフェズ王へ報告をする。


「ん~どうしたビルガンよ」


 相も変わらず女に囲まれ奉仕されているフェズ王が、呑気な声を出す。


「はっ!ゼルバが勝利したと!」


(どうせ興味はないだろうがな)


 ビルガンはそう思っていた。

 フェズ王は、この国の行く末など興味がないのだ。

 ただ、自分の快楽だけを求め続け、国が滅びそうになったら逃げるだけなのだろう。


「おお!そうか!そうか!やはりな!」


 だが、予想以上にフェズ王が食いついてきて、ビルガンは困惑した。


「よ、喜んでいただけて何よりでございます!」

「俺は、あいつは優秀だと思ってたからな。やはり、ゼルバに任せておけば良いな」


 フェズ王はどうにも上機嫌である。

 戦に勝ったのを喜んでいるのではなく、自分の予想が当たって嬉しいという感じである。

 なんにせよ、ビルガンからすれば喜ばしい事ではない。

 だが、上機嫌であるのならば、ビルガンから言えることはなかった。


「おお!めでたいな!今日は女を増やすか、あと10人連れてこい!そうだ!ゼルバを呼べ!参加させてやろうではないか!」


 特別上機嫌で、フェズ王はそんな事を言う。

 だが、それは無理な話である。


「申し訳ありませんが、フェズ王様。ゼルバはまだ戦から帰ってはおりません。いち早く王に伝えようと、急使のみが参った次第でございます」

「なんだつまらん……じゃあ、おまえでいいや」

「はっ……私ですか?」


 突然白羽の矢が立ち、ビルガンは困惑する。


「嫌なのか?」

「とんでもございません!参加させていただきます!」


 ビルガンは即答したが、正直に言えば嫌であった。

 別に女を抱くのが嫌いなわけではない。

 ただ、たくさんの女体に囲まれ、王の前で女を抱くというのは、とても気を遣うのである。


「そうか!おい!誰か!若い女を連れてこい!こいつは若い女が好きだからな!」

「あ、ありがとうございます!」


 ビルガンは思ってもいない感謝の言葉を述べる。

 しばらくして、若い、若すぎる、裸の女達が部屋へと入って来る。

 そして、みだらな宴が始まるのだ。

 


     ♦



 このように、ゼルバというフェズ国の若い将軍が、エルエ国の四傑将の一人、知の将ニトを打ち破ったという話は広がっていった。

 フェズとエルエ、両国だけでなく、残りの国、ア国、ギラグ国。それに、ベザ国にもである。

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