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二人の知将⑭

 敵の援軍とギヨウ、その間に割って入って来た騎兵隊がいた。

 フェズ国の部隊だ。

 つまり、味方の援軍である。

 ギヨウが戦う前に、味方と敵の戦いが始まる。

 

「貴様がゼルバ様の言っていた小僧か。シルルもいるではないか」


 その騎兵隊を率いる一人の男が、ギヨウの前へとやってきた。


「あ、ああ」


 ギヨウは返事をしながら、シルルの方を見る。


「ガンビカ五千兵隊長だ」


 知り合いのようで、シルルがギヨウに教えてくれる。


「よろしく頼む」


 馬上から差し出された手を、ギヨウは握り返した。


「ああ、よろしく」


(なんというか、普通の人だな)


 ガンビカに対して、ギヨウが感じたのはそれだけである。

 しかし、同時にゼルバの部下という事は、何かしらの優れた部分があるのだろうなとギヨウは考える。


「お前の部隊のお陰で、騎馬隊が一気に渓谷の上まで登ってこれた。大変であっただろう。こちらの後続もすぐに登って来る。しばらく休んでいるといい」


 そう言うと、返事を待たずに、ガンビカは戦場へと向き合って指示を出し始めた。


 それは、ギヨウとしても大変助かる事である。

 アカツキ隊の仲間達も今の会話は聞こえており、全員が気が抜けたようにその場に座り込んだり倒れ込んだりしたのだった。


「ひとまず勝ちだな」


 そんな中で、シルルがギヨウに話しかけてくる。

 

「ああ、いや……」


 ギヨウは座ることなく、立ち上がったまま、自分の部隊を眺めていた。

 正確には、戦闘が終わった跡地を、である。


「何人残ったんだ……」


 元は百兵隊である。

 百人と言うのは、多いが、把握できない程の人数ではない。


「半分くらいだね」


 どこかからやってきたジェスが答えた。

 言うまでもなく、半分は死んだという事である。

 これまでも、人が死ぬところは見てきたものである。

 しかし、ギヨウ自身が率いる部隊の半分を、自分の指揮で殺してしまったことをギヨウ自身は感じ取ってしまったのである。


「そんな顔をするな」


 その茫然とした顔に気づき、シルルがギヨウの顔を正面から覗き込んだ。


「みんなそれぞれ理由があって、死ぬことを覚悟で戦争に来ているんだ」

「あ、ああ。わかってるよ」


 ギヨウはそれだけ言うと、覗き込むシルルから視線を外した。

 そして、外した視線の先で、シンザ達を探す。

 すぐに見つかり、ギヨウは安堵する。


「よう、平気か?」


 聞くまでもなく、一目見れば傷が少ないのは見て取れた。

 だが、ギヨウは聞きたい気分だったのだ。


「ああ、あの道を走っている時に、上から矢とか石が降って来た時は生きた心地がしなかったけどな」

「死ぬかと思ったぜ」

「そうだな――そういえば、あの三栃尾言えばボズルよ。凄かったじゃねえか。あの巨大な岩を投げ飛ばしてよ。ああなると思ったから戦闘を走ってくれたのか?」


 先陣を切ったボズルは、特に傷が多かったが、致命傷はないようで、出血自体は少ないようだった。


「いや……実は、上の渓谷へ出る道を防がれたら、俺が一気に吹き飛ばすのがいいかなって思っただけなんだ。まさか大岩を転がしてくるなんて、思いも寄らなかったよ……一か八かで受け止めたけど、上手く行って良かったよ」


 逆に言うと、それが上手く行っていなかったら味方は全滅していたかもしれないのだ。


「おま……まあ、いいか。ハハハ」


 結果良ければ全て良しであったことに、ギヨウは笑う。

 釣られて全員が笑い出した。


 それを見ていたシルルは、ギヨウが少しは元気を取り戻したことが嬉しくて笑みを浮かべたのだった。


 そんな風にアカツキ隊が休んでいる間に、渓谷にはどんどんと兵が登って来て、敵を蹂躙していったのだ。

 そして、兵が進めば、別の道の味方も渓谷へと上がってこれるようになる。

 次第にフェズ国の兵は渓谷の上へとあがり、いつしか全軍が渓谷の上へと登り切り、渓谷の一部を占領してしまったのだ。

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