二人の知将⑤
軍の編成は、ギヨウの部隊が完成してからも数日に渡って行われ、その間ギヨウは、部隊の兵達と訓練をしながら親交を深めた。
そして、軍の編成が終わると、やっと軍の行軍が始まる。
しかし、それからも移動には時間がかかる。
どの部隊も、数日間ひたすら歩くだけであるし、夜は野宿となる。
特にギヨウ達のような歩兵の部隊は、移動する、ただそれだけで体力を奪われ続けた。
「はぁはぁ……やっと夜か……」
「でも、たいしたご飯は出ないし、野宿じゃあ疲れは取れないよ……」
ほぼ毎日のように、ダククガとジェスは文句を言い続ける。
他の者も、口に出さなくても疲れは隠せなかった。
「こんなんで戦えるのか?」
(というか、前回の戦では、エルエ国は同じように行軍して、戦をしたんだよな……)
「敵領地の前にくれば、一度は陣を敷くはずよ。でも、それからいつ攻撃を始めるかは、ゼルバの策の都合次第でしょうけど」
ミュエネが言う。
「だけどよ、その敵領地がどこにあるのか俺達にはわからないぜ。当てもなく歩かされるのはつれえよ」
シンザはがっちりした体をしているし、畑仕事で鍛えた体力もある。
しかし、数日間の行軍は、そんなシンザでも弱音を吐くほどであった。
「って、何食ってるんだよミュエネ!」
そんな中で、シンザが、よく見るとミュエネが何かを咀嚼しているのに気が付く。
まだ夕飯の支給前である。
「え?虫よ」
ミュエネが、あっけらかんと言う。
「ええ!」
それに驚いたのはジェスである。
飢えとは程遠いジェスは、虫を食べるという行為が信じられないのである。
それはギヨウも同じだが、家でミュエネに虫を使った料理を出された事があるので、驚くほどではなかった。
「お、俺も食べようかな……」
「土を掘れ!土を!」
一応飯は支給されているとはいえ、明らかに運動量とは合っておらず、多くの者は食べれるものならばと、虫を食べようとする。
「やめておいた方がいいわよ。私は森に住んでたから、食べれる虫とそうじゃない虫を見分けられるけど、大人しく野兎とか野犬を探した方がいいわ」
そうは言うが、行軍の多くは荒野であり、食べれるような生物はあまり見かけないのだ。
別の部隊と取り合いになって、上から注意されることもある。
「じゃ、じゃあ、俺達が虫を見つけるから!食べられる虫か見分けてくれよ!」
「い、いいけど……」
部隊の味方の、あまりの剣幕に、ミュエネは押されてしまう。
(いいじゃねえか)
それを横で見ていたギヨウは、少し安心する。
実のところミュエネは、部隊の中では浮いていた。
本人が警戒しているのもあり、そのためギヨウに付きっきりだったため、周りが遠慮していたこともある。
だから、ギヨウ以外の人間とは、会話すらほとんどしていなかった。
だが、今ギヨウの目の前では、戸惑いながらも部隊の者達と会話するミュエネの姿である。
それを見て、ギヨウは安心したのである。
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そんなやり取りをしながら行軍し続け、更に数日をかけて、フェズ軍は戦場へとついたのである。
厳しい行軍ではあったが、だからこそ、どの部隊にも絆のようなものが生まれていたのだ。




