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二人の知将③

 軍議が終わり、フェズ国各地で募兵が始まった。

 当然、ギヨウ達の住むロシスでも募兵の看板や張り紙などがされたのだ。


 そんな中で、ギヨウとミュエネはゼルバの城へと来ていた。

 ゼルバは既に軍議から帰ってきており、集まった部屋の中には、前と同じようにゼルバとシルル、ギヨウとミュエネの四人がいた。

 ゼルバは四人に軍議の内容を説明し、四人はそれを黙って聞いた。


「凄い事を考えるんだなゼルバは」


 ギヨウは、見事にフェズ王を丸め込んだゼルバに素直に感心する。


「当たり前だ。ゼルバ様は凄いのだぞ」


 何故かシルルが得意気に、無い胸を張った。


「しかし、問題はこれからです。言うまでもない事ですが、知の将ニトは四傑将と言われるだけある将軍です。どれほどの歳かはわかりませんが、策だけで老人になるまで戦場を生き抜いてきた猛者です。彼女に言わせれば、私など小童なのでしょう」


 ゼルバはこれでもないかと言うほど相手を褒め、


「しかも、準備万端の相手の領地に攻め込むわけよね」


 ミュエネが補足した。


「でも、勝算はあるんだろ?」


 ギヨウが期待の目をゼルバへと向けた。


「そうですね……勝率は五分と言ったところでしょうか……いや、それよりも低いかも……」


 だが、ゼルバはそんな事を言った。


(いつも自信満々のゼルバがこんなことを言うなんて……)


 その様子に、ギヨウは驚くしかなかった。


「圧倒的に不利な状態ですからね。まともにやったら勝てません。ただ……」


 ゼルバは少しもったいぶってから言った。


「ニトには、一つだけ弱点があります」

「なに!」


 三人は驚く。


「いったい、それはなんなんだ?」

「なんだと思いますか?」

「んー?わかった!歳だな!ババアなら戦場に長時間いるのはきついはずだ!」


 ギヨウが閃いたという感じで答えを出す。


「なるほど、それも弱点ですね。二つ目の弱点を見つけてしまいましたね」

「なんだよそれ、これじゃないんだな」

「いえ、本当にいい着目点だと思いますよ。戦場が長引けば、いかにニトといえど疲れが見えるでしょう。しかし、今回は戦場が長引いた場合、こちらの被害が大きくなりすぎますし、防衛側は援軍も来やすいですからね」

「駄目ってわけだな……」


 ゼルバは答えを言わずに三人を見回したが、全員それ以上答えを出すことは出来なかった。


「結局弱点ってのはなんなんだよ?」


 諦めてギヨウが聞く。


「それは秘密です。この答えは実際にニトを追いつめてからのお楽しみにしましょうか」


 しかし、ゼルバはそう言ったのだった。


「なんだよ」

「まあ、私達が知っても仕方ないでしょうしね」


 それで、ひとまず話が終わりと感じ、ギヨウは一番聞きたかったことをゼルバへと聞いた。


「それで、俺はどうすればいいんだ?ここから百兵隊長として出陣すればいいのか?」


 難しい事はゼルバへと渡し、ギヨウ自身が何をすればいいのか。それがギヨウにとって一番大事な事なのである。


「いえ、そもそもあなたには部隊がいないでしょう。普通に戦場へ行って、百兵隊長として百人の兵を募集してください。そうしたらシルルに指示を持って行かせます。あなたの部隊が、この戦いの鍵となります。気合を入れてくださいね」


 ゼルバに期待され、ギヨウは嬉しそうに笑う。


「おう!任せとけ!」


 ギヨウは、更に胸を叩いて見せた。


「じゃあ行ってくる!」


 そして、そのまま、すぐに戦場へと向かおうとした。


「待ちなさいギヨウ」


 だが、ゼルバはそんなギヨウを呼び止めた。


「なんだ?まだなんかあるのか?」

「あなた、甲冑は持っていますか?」

「いや、持ってないけど」


 ギヨウの答えに、呆れたように顔を覆ったのはシルルであった。


「やっぱりな」

「シルルの言う通りでしたね」

「なんか駄目なのか?」


 ギヨウは自分の恰好を見る。

 ギヨウが着ているのは、特になんてことのない布の服である。


「仮にも百兵隊長なのだぞ、それなりの恰好をしろ」

「なるほど、じゃあ適当に買って帰るか」


 ギヨウは、甲冑にあまり興味がなかった。

 むしろ、ごてごてしたのは動きづらいとすら考えている。


「いえ、それには及びません。せっかく百兵隊長になったので、私からの贈り物として、甲冑を用意させました。もっとも、言い出したのはシルルですがね」

「ゼ、ゼルバ様!」


 シルルが顔を赤くして、ゼルバに抗議する。

 シルルが言い出した事はわざわざ言わないで欲しかったからである。


「そうなのか、ありがとうよシルル」

「べ、別に、その姿で戦場に立たれても困ると思っただけだ」


 二人がそんなやり取りをしている間に、ゼルバは近くの箱から甲冑を取り出して見せた。


「これです、中々いい物だと思いますよ」

「お、おお……よくわかんねえな」


 ギヨウには甲冑の良し悪しなどわからない。


「まあ、着てみてください」


 そう言われて、ギヨウはその場で甲冑へと着替えだす。

 シルルも、ミュエネも、それに対して特に気にはしなかった。

 ギヨウが家では無頓着なので、着替えなど何度も見たことがあるからだ。


「本当はミュエネの分も用意しようと思ったのですがね」

「なんで用意しなかったんだ?」

「寸法が特別になりそうだったので、少し難しかったです」


 それを聞いて、ギヨウはミュエネを見た後、シルルを見た。


「ああ」


 そして納得する。


「おい、なんで私の方を……いや、胸を見た」

「お前は、これでも着れそうだな」


 ギヨウは、悪げもなく着替えながらそんな事を言った。


「早く着替えろ馬鹿!」


 シルルは怒って、甲冑の一部をギヨウへと投げつけた。

 ギヨウはそれを受け取ると、それをつけて、着替えを終える。


「軽いな……」


 最初の感想はそれだった。


「動きやすいものが好みだとシルルが言ったので、軽装にさせました」


 ギヨウは動いて、甲冑を試してみる。


「ああ!これいいな!動きやすいぜ!」

「喜んでいただけたみたいで良かったです」


 ギヨウの嬉しそうな様子に、ゼルバも自然と笑みを浮かべてしまう。


「ありがとうよゼルバ、シルル、この恩は戦場で返すぜ」

「期待していますよ」


 そして、今度こそ、ギヨウとミュエネは戦場へ向かう為に一度家へと帰ったのだった。

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