二人の知将②
エルエ国王都ルト。
そこで、新たな軍議が開かれていた。
「では、次に攻める土地を決めようと思う」
エルエ王がそう言うと、臣下たちは小さな声でざわめきだす。
「やはり、シタダイルに近いヨライが良いかと」
宰相デゼイルキが進言する。
「ふむ……やはり、そうなるな」
そもそも、シタダイルを取ったのは軍事的に便利だからであり、シタダイルを起点に攻めるのは当たり前の事である。
「ジアヒスよ。ヨライでいいか?」
四傑将は戦が終わった後、それぞれ自分の領土へと帰ってしまっており、秀の将ジアヒスのみが軍議に出ていた。
「そうですね。特に問題はないかと――」
「急報!急報です!」
その時、その場へと慌てて入って来た者がいた。
内偵から報告を受け取った政官である。
「どうしたというのだ、騒々しい」
デゼイルキが冷静にその者を止めて、跪かせる。
「はっ!至急エルエ王様に報告しなければならない事が!」
「言ってみろ」
エルエ王に促されて、政官は少し落ち着いて報告した。
「内偵からの報告が来まして、フェズ国に侵攻の予兆あり……と」
「なに!」
♦
エルエ国に情報が渡るかなり前の話となる。
フェズ国で軍議が行われていた。
軍議を開くように提案し、実現させたのは、当然ゼルバであった。
「フェズ王様がお越しにならりました」
報告と共に、集まった臣下の前へフェズ王がやってきた。
一人の女を犯しながら。
やはり、その光景は異様だが、いつも通り誰もそのことに関しては何も言う事はない。
「おお、集まってるな。この女、誰かわかるか?」
フェズ王が自分のもので貫き、喘いでいる女を示しながら、突然臣下達に問いかける。
臣下達は少しざわめいたが、誰もその問いかけに答えられるものはいなかった。
一人を除いては。
「お前は答えられるよな?ビルガン」
フェズ王はニヤニヤとしながらビルガンの方を見る。
「はっ、我が妻の一人でございます」
ビルガンは冷静に答えた。
その答えに満足して、フェズ王はより一層笑みを深めた。
「いい歳なのにこんなに若い女を娶りおって、貴様もいい趣味をしているな」
「お褒め頂、光栄です」
ビルガンは、落ち着いて答える。
実際の所、妻は複数人いるし、この妻が特別というわけでもないのだ。
フェズ王の蛮行は今に始まったことでもないし、ビルガンは怒る事はなかった。
「俺の子種で子供が出来たら大切に育てるのだぞ……うっ!……ふぅ……」
「お任せください」
フェズ王が震えて少しだけ止まり、しかしすぐに腰を振る動きを再開する。
「それで、今日はなんの軍議だ?」
わざわざ臣下達の前で、散々ビルガンを虐めて気が済んだのか、フェズ王は急にまともな事を言い出した。
話が進んだことに、その場にいた臣下全員はホッとする。
「それについては、私の方から話させていただきます」
その時になって、ようやくゼルバは前に出た。
「おおゼルバか!そう言えば、負けはしたものの、戦地を当てたのは貴様だったな、褒美でもやろうか……そうだ、この女を使うか?」
フェズ王は女から一物を抜くと、今まで自分の者が入っていた女の穴をゼルバの方へと広げて見せた。女は流石に恥ずかしく、顔を真っ赤にさせている。
「いえ、大変ありがたい話なのですが、別の褒美を頂きたいです」
ゼルバのその発言に、その場が凍り付く。
フェズ王の提案を断ると、どうなるかわからないからである。
実際にフェズ王も、少し機嫌を害したようで、機嫌のよさそうだった顔を、一瞬にして曇らせた。
「おいゼルバよ、俺のありがたい提案が聞けないのか?」
更に、言葉でも機嫌の悪さを示し、女を投げ捨ててしまう。
その様子に、臣下達は緊張をする。
「フェズ王様、私が欲しい別の褒美と言うのは、とても面白い事だと思います。聞いていただけないでしょうか?」
ゼルバは、フェズ王の様子を気にせずに、勝手に話を始めた。
「ほう、なんだ?言って見ろ。つまらんことなら殺してしまうぞ」
「はっ!フェズ王様は、エルエ国の四傑将をご存じでしょうか?」
「知らんわけがなかろう。それがどうした?」
「その中に、知の将ニトというものがおります」
「もちろん知っている」
「私もフェズ王様ほどではないにしろ、フェズ国屈指の知将であると自負しております」
「随分と焦らすな、早く言わんか」
フェズ王が痺れを切らして結論を急いだ。
「フェズ国の知将である私と、エルエ国の知将であるニトの対決をさせて欲しいのです」
それを聞いて、フェズ王は一気に機嫌の良さそうな顔へと戻った。
「なるほど!知略対決といわけか!」
「流石フェズ王、聡明にございます」
ゼルバは、心にもない言葉でフェズ王を褒める。
それに、フェズ王は完全に機嫌を良くしたようで、再び女を拾い上げると、自分のものへと跨らせた。
「お待ちください!」
そこに口を挟んだのはビルガンである。
「ん?なんだ?」
「知略対決、とても良い提案だとは思います。ですが、どうやってニトを戦場に引きずり出すのでしょう」
「確かにそうだな。だが、ゼルバもそれくらい考えているだろう?」
「はい、もちろんでございます。ニトを戦場に引きずり込むのではなく、こちらからニトの領地へと攻め入るのです」
「な、なんだと!」
ビルガンが驚く、それだけでなく、周囲の臣下達も全員ざわめきだした。
「静かにしろ、何を驚いている」
その様子に辟易したフェズ王がそう言うと、瞬時にその場は静まった。
「はっ!ニトの領地は確かに我々の領地から攻められる場所にあります。しかし、何度か密偵を放ちましたが、やはりあの知の将ニトの領地、並々ならぬ罠が仕掛けられているのは判明しており、その具体的な内容までは密偵からもわかりませんでした。とにかく、最も攻めるのは難しい土地のはずです!」
その言葉に、間髪入れずにゼルバが口を挟んだ。
「だからこそ!正面からの知略勝負で私が勝てば、フェズ国にはニトを超える知将がいる。という事をエルエ国に知らしめることが出来るのです!」
ゼルバとビルガン。互いが喋り終わった後に、フェズ王の方を見た。
「ふむ……ゼルバの提案通り、ゼルバが総大将で、エルエ国を攻めることを許す。そちらの方が面白そうだからな」
「ありがたき幸せ!」
「ただし、敗北したら貴様の領土から美女を……いや、おなじではつまらんな。ゼルバ、貴様の領土の税収を今までの二倍とする」
相も変わらず、フェズ王は無茶な要求をし、さらに勝った時の報酬は言わない。
「お任せください、必ず勝利を持ち帰って参ります」
それでも、ゼルバは自信満々にそう答えたのだ。
「そうか、期待して待っているぞ。では、俺は帰る」
フェズ王はそう言うと立ち上がり、犯していた女をビルガンへと投げ捨てた。
「おい、今日は気分がいい。その女はもういいぞ、飽きたしな」
「は?はっ!ありがとうございます」
そうして、ゼルバの思惑通りの結果で、軍議は終わることとなった。




