二人の知将①
ギヨウの家へと来たジェスはすぐに帰ったが、シルルはギヨウの家へと数日泊まり、帰る際にギヨウを連れてゼルバの元へと向かった。
ギヨウにも、百兵隊長になったことをゼルバへと報告するという、ゼルバに会いに行く理由もあったし、ミュエネも何故だか着いてきた。
そして、三人は長い時間をかけてゼルバの元へと着く。
「久しぶりですねギヨウ、それにミュエネも」
「おう」
「久しぶりね」
戦はたったの一日で終わったが、移動した時間も考えると、一か月以上の間ゼルバと会っていないことになる。
「ギヨウ、どうでしたか戦場は?」
「ああ、そうだな……上手く行かないもんだな……俺がいくら暴れても、どうにもならなかった。でも敵の五百兵隊長を倒して、百兵隊長になったんだぜ」
ギヨウは得意気に自慢する。
「そうですか、それは良かった。ですが、それで満足しているわけではないですよね?」
ギヨウは、それを聞いて腕を組む。
「もちろんだ。将軍になって、猛者を倒し続けて、天下無双と言われるまではな」
一度戦場に出てからも、変わらぬギヨウの様子に、ゼルバは嬉しそうに笑った。
「それでは、次の戦場の話をしましょうか」
「おう!」
特に、そう言った説明があったわけではないが、ゼルバが突然話し出してもギヨウは威勢の良い返事をした。
「すぐにエルエ国は攻めて来るかしら?」
黙っていたミュエネが口を挟んだ。
彼女は待ちきれないのである。エルエ国との戦を。
「本来ならそうでしょう。ですが、私は先手を打ちます」
「先手……ですか?」
シルルが尋ねた。
それは、ゼルバの考えがわからないからである。
「ええ、エルエ国を攻めます」
ゼルバはそれに対して、あっさりとその言葉を言った。
「本気ですかゼルバ様!?」
そして、驚いたのもシルルである。
「攻められたら、攻め返すのは普通じゃないのか?」
余りにもシルルが驚くので、ギヨウが聞く。
「変な話ではありませんね。しかし、攻める側の労力は大きいですからね。シタダイルでは、フェズ国が大敗しましたが、本来あのような事にはならないはずなのです。守る側の方が圧倒的に有利なのですから」
それは、ギヨウも戦場で散々聞かされた話である。
「それはわかるけど、他にも問題があるのでしょう?」
「ええ、そもそもフェズ王を説得しなければなりません。私の指揮で、他国を攻めるようにと」
しかし、それはギヨウとシルルには説明されたが、とても難しいという話であったはずである。
だからこそ、シルルは驚いたのである。
「どうやって愚王を説得するんだよ?」
そして、ギヨウも素直に疑問をぶつけた。
それに対して、ゼルバは笑みを浮かべる。
「もちろん、策はあります」
「本当ですか、ゼルバ様?あ、いや……疑っているわけではなくてですね……」
「わかっていますよシルル。あの愚王を説得できるか心配なのですよね?大丈夫ですよ」
「それってどんな策なの?」
当然気になるところである。
しかし、ゼルバは不敵に笑うと、
「ふっ、それは秘密です。終わってからのお楽しみという事で」
そう言った。
「なんだよ、もったいぶるんだな」
「策に必ずはありませんよ。失敗するかもしれませんからね。とはいえ――」
ゼルバは、一呼吸おいてから続ける。
「私が指揮を取ることになったら、あなた達にも存分に働いてもらいますからね。準備をして待っていてください」
「はい!ゼルバ様!」
「ええ」
「おう!」
ゼルバの信頼の言葉に、それぞれ気合の入った返事をする。
そして、その日はそれで解散したのだ。




