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シタダイルの丘の戦い 戦後③

 それは、ギヨウが家に帰ってから数日が経ったある日のことであった。


「おいギヨウ。生きて帰ったと聞いたから会いに来てやったぞ」


 ギヨウの家をシルルが訪ねて来たのだ。


「あら?」


 ギヨウの家には、まだミュエネがいた。

 ミュエネは、復讐という自分の都合で元居た森を出たため、森には戻り辛かったため、ずっとギヨウの家に住み着いていたのだ。


「おう」


 二人は昼食を作っており、偶然にもシルルが訪れた時、二人の距離はかなり近かった。


「……お前を少しでも心配した私が馬鹿だったよ」


 その様子を見て、シルルは開いた戸をすぐに閉めて出て行こうとする。


「え?なんだよ、おい!」


 ギヨウには、シルルが来てすぐに帰って来た理由がわからず。それでも、急いで引き留めに行った。


「女を連れ込むとはいい御身分だな」


 そして、追いついたのだが、そんな事を言われてしまう。


「女って……そうだけどよ、シルルだって知ってるだろ?ミュエネだよ」

「誰だ?」


 シルルは真面目に聞き返す。記憶にないからだ。


「森の民のミュエネだよ」


 そう言われて、シルルは少し考えてやっと思い出した。


「ああ、名前は知らんが、あの時一緒にいた奴か」


 そもそも、シルルもミュエネにはあの時初めて会ったし、紹介すらしてないのだ。覚えていなくても仕方がないのだが、ギヨウは最初から知っているものだと勘違いしていた。


「まあ、それはいいけどよ。何しに来たのかわからないけど、ちょうど飯作り始めたんだ。食ってけよ」

「わかった」


 そもそも、シルルがギヨウの所に来たのに理由はない。

 ただ、敗戦から生きて帰ったと聞いたので、様子を見に来ただけだ。

 そして、先程は帰るフリをしたが、はるばる来ておきながら、当然帰る気はなかった。

 


     ♦



 結局シルルも手伝って食事が出来上がる。


「なあ、多くないか?」


 三人の目の前には、かなりの量の食事が出来上がっていた。

 三人とも良く食べる方ではあるが、それでも多すぎるとしか言いようがない


「ああ、最近はたまにシンザ達も来るんだ」

「私がギヨウの作るご飯は美味しいって教えたからね」


 それを始めて聞いた時のシンザ達は、とても疑わしい顔をしていた。

 ギヨウの家にこそ来るが、ギヨウの作る飯は見たことがなかったからである。


 そんな話をしていると、ちょうどいいタイミングで、扉が開いた。


「ほら、来たみたいだぞ。え?」


 しかし、開いた扉の先にいる人物を見て、ギヨウは驚く。


「やあ、少しぶりだねギヨウにミュエネ」


 何故なら、そこにいたのは前回の戦の百兵隊長、ジェスルリイドだったからである。


「誰だ?」


 そう聞いたのはシルルである。

 会った事がない人物なのだから当然の反応だ。


 それに対して、ジェスは答えず、シルルとミュエネを交互に見て言った。


「どっちか嫁かな?両方?」

「違うわ」

「違う」


 それに対して、二人は少し顔を赤くしながらも即座に否定する。


「いや、何しに来たんだよ……」


 そして、ギヨウは呆れて突っ込む。


「ああ、そうそう。今日はいい話を持って来たんだ」


 そう言いながら、ジェスは勝手に上がり込んで、自然な流れで飯を食べ始める。


「いい話?」

「そうだよ。僕が君の副官になるって話だよ。なんだこれ、美味しいな」

「は?」


 唐突な話に、ギヨウは食べていた料理を落とす。


「いや、副官って……俺は歩兵だぞ」

「あれ?まだ聞いてないのかな?君は百兵隊長になったんだよ」

「え?」


 その驚きは、その場にいる三人全員の反応であった。


「相手の隊長首を倒しただろう?丘にいた五百兵隊長が、あれをしっかり報告してくれたみたいだよ。お金を受け取る時に聞いてると思うけど……」

「そういや、まだ受け取ってなかったな」

「私もね」


 落ち着いたら行こうとは思ってはいたのだ。忘れていたわけではない。


「ちょっと待て」


 その時、シルルが口を挟んだ。


「百兵隊長に副官はつかないぞ」

「そうなのか?ていうかジェスも百兵隊長だよな?」


 ギヨウがシルルとジェスを交互に見る。


「ああ、僕はやめたよ。こないだの戦いで向いてないってわかったからね。でも君達の戦いには感動したんだ。だから、父さん達に頼み込んで、君達のどちらかを百兵隊長にしてもらえるように嘆願しようとしたんだけどね……」

「既に百兵隊長になる事が決まっていたわけだ」


 ミュエネが冷静に分析する。

 

「そうだね。百兵隊長に副官はつかないけどいいじゃないか。君はきっとすぐに五百兵隊長にでもなる、そう思うんだ。だから次の戦いにも僕はついていくよ」


 そう言われて、ギヨウは少し困る。


(最初の傲慢な印象と違って、思ったよりいい奴なんだけど腕前がな……)


 はっきりと言えば、やはりボンボンなのだろう。

 先の戦いでも、結局、活躍しているところは見られなかった。


(まあ、信頼できる奴がいるのはいいことか……)


 それでも、前向きに考えると、


「ああ、よろしく頼むぜ!」


 そう言う事にしたのだった。

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