シタダイル丘の戦い⑯
ギヨウ達、生き残りが集まった部隊は歩兵の部隊であり、到底騎馬の敵に追いつく事などは出来ない。
しかし、それは敵が足を止めてさえいなければの話である。
「はぁ、はぁ……まだかよギヨウ……」
慣れない戦で疲れ果て、シンザ達は弱音を吐く。
それでも舞台からはぐれれば、死ぬという事はシンザ達にもわかっているので、死ぬ気で丘を登り続けたのだ。
「見えて来たぞ!」
そして、先頭で走るギヨウがついに敵騎馬隊を補足した。
それは、敵の騎馬隊は味方との戦いで、足を止めていたという事に他ならない。
つまり、挟撃はなったということである。
「休んでいる暇はない!このまま行くぞ!」
ギヨウが先頭で号令をかける。
本来、号令をかけるべき百兵隊長であるジェスは、シンザ達と同じく一番後ろを走っていた。
「行くぞ!あいつに続け!」
ジェスは仕方なく、一番後ろから号令をかけ直す。
「うおおおお!」
それでも、部隊は敵の後ろをついたことで士気が上がり、全員が命令の通りに、敵に突っ込んだのだ。
「な、なんだ?」
「後ろに敵が……」
「まだ残っていたのか!」
敵の騎馬隊は、ただでさえ正面の部隊に手こずっていたところに、後ろから迫る敵に動揺した。
「おおおお!らぁああ!」
その突撃の先頭で、ギヨウは丘を登っているというのに、飛び上がって、馬に乗った敵兵を一気に何人も斬り倒してしまった。
「なんだと!こいつ!」
それによって更に敵兵に混乱が広がったのだ。
それを見逃さなかったのは、正面で戦っていた味方の千兵隊長、ベドアムである。
「裏から味方が突撃したぞ!こちらも一気に攻めるのだ!」
そして、この丘での戦いは、一気に味方が有利となる。
ギヨウはそんな中で、敵を斬り殺し続けていた。
「ギヨウ。あそこ」
そんなギヨウの近くで、ミュエネがある敵を目で示す。
「あいつが指揮官か!」
その敵は周囲へと指示を出しており、敵兵による厚い護衛に囲まれていた。
正面からでは届かない位置なのだが、後ろから攻めたギヨウからは狙える位置にいるのだ。
ギヨウはすぐさまそちらへと向かう。
「敵が来るぞ!守れ!」
しかし、ギヨウの動きを察知した敵は、当然のように守りに入って来る。
「うおおおお!」
「ギヨウ!俺達に任せろ!」
その横から、遅れて入って来たシンザ達が突撃をしてきた。
「くそ!なっ!女だと!」
更に、敵指揮官の周囲の護衛を、ミュエネがギヨウより先に踏み込んで斬り飛ばして道を作る。
「ありがとうよ!」
「こいつ!」
最後に、ギヨウがやはり飛び上がり、敵指揮官と交錯した際に、指揮官の首を斬り落とした。
「うおおおお!!」
そしてギヨウは、いつもより大きい雄たけびをあげた。
「そ、そんな!五百兵隊長が!」
その雄たけびにより、味方にも敵にも、敵騎馬隊の指揮官が死んだ事が伝わり、有利だった戦況は、更に味方へと傾いた。
勝敗はもう決したようなものである。




