シタダイル丘の戦い⑮
「はぁ……はぁ……」
目の前の敵を斬り続け、流石のギヨウにも疲れが見えてきた頃、ギヨウの正面が開けてくる。
ギヨウ達の周囲の敵を倒し切ってしまう程、ギヨウは戦い続けたのだ。
「なんだ……なんでなんだ?」
しかし、その目に入った光景に、ギヨウは驚く。
正面の敵が少ないのだ。
あれだけいた、エルエ国の騎馬部隊が見えないのだ。
「お、おい!シンザ!ダンレン!生きてるか?」
ギヨウは、疲れて座り込んでいる二人を起こす。
「な、なんだよ」
「あっちの方!もっと兵いたよな!?」
ギヨウは指さしながら言うが、シンザ達は少し見ただけで答えた。
「そう言われてもな……」
「わかんねえよ」
二人では話にならない。
「騎馬隊なら、丘を登っていくのを見たわ」
そこに、ミュエネが割り込んでくる。ダククガも一緒であった。
ミュエネも激しい戦いをしたようで、涼しい顔をしてはいるものの、疲れは隠しきれておらず、矢筒の矢も一本も残っていなかった。
しかし、それでも怪我を負っている様子はなくて、ギヨウは安堵する。
「あと、今中央に斬り込んで暴れてるわね……」
「なんだよ、ありゃあ」
ミュエネが指さした方を見たギヨウは、驚き絶句した。
実のところ、ここからでは戦場はよく見えない。
しかし、それでもわかるほど大男が、馬に乗って味方の中央へと突っ込みながら暴れ回っているのだ。
その男が一度矛を振るえば、それに合わせるように味方が宙へと舞っているのであった。
(あいつを倒せば、天下無双に近づくな)
ギヨウはそう考え、自然と足をその大男へと向けていた。
「どこへ行く」
それを止めたのは、ミュエネ達ではなく、ギヨウ達の部隊の隊長、フェズであった。
「お、おう。生きてたのか」
「おかげさまでな。後ろから見ていたよ。みんな、お前の活躍をな」
みんなと言われ、いつの間にかギヨウの周りに、周囲の生き残りの兵が集まっている事に気付く。
「やるじゃねえか、ガキ!」
「お前のおかげで、正面からの攻めが弱かったぜ」
ごろつきのような連中だが、そんな連中から褒められて、ギヨウは悪い気はしなかった。
「あ、ああ。それよりよ!あれはまずいだろ!止めに行かないと!」
ギヨウが指さしたのは大男である。しかし、それに対してフェズは冷ややかな目で返す。
「僕達じゃあ止められないだろ。それに騎馬でどんどん入って行ってる。間に合わない」
「だからって放っておいていいのかよ!」
「それ以前に、僕にも命令がさっき入って来てね。近場の生き残りを集めて、丘に登った騎兵隊を丘の上にいる兵と挟み撃ちにしろってさ」
ギヨウは少し考えたが、観念する。
「わかったよ。早く行こうぜ」
ジェスはそれを聞いて、ギヨウに背を向けると、生き残りに向かって大きな声を出した。
「我々はこれから丘の上の仲間を助けに行く!ここにいても、敵はまた来るぞ!死ぬ気で着いて来い!」
ジェスはそう言うと、ゆっくりと丘の方へと歩き出した。
(激励のかけ方はいいけど、疲れが見え見えだな)
やはりボンボンなのだろう。
だが、それでもここまで生き残り、まだ戦う意思があるのは思った以上に根性があるとギヨウは思った。
「おい、盾なんて捨てろ。そんなもん持って丘に登るのはきついぞ」
ギヨウはシンザ達にそう言う。
シンザ達は言われなくてもという感じで盾を捨てる。もう限界だったのだ。
ダククガには何も言わなかったが、勝手に弓を捨てた。矢がないのなら不要なので、正しい判断だろう。
「私は捨てないわよ。疲れてないし、この弓は替えが聞かないんだから」
何も言っていないのに、ギヨウの視線を感じて、ミュエネが勝手に答える。
「いや、何も言ってないけどよ」
「わかってるわ。行くわよ」
そして、ギヨウ達も生き残りの部隊へと加わり、丘を登り始めたのだった。




