シタダイル丘の戦い⑤
フェズ国が軍議をしていたころ、同じようにエルエ国の王都ルトでも軍議が行われていた。
王の間に集まり、王を崇める様はどちらの国でも同じだが、フェズ国の軍議と比べて、エルエ国の軍議はまるで別物である。
別者なのは、全員の顔付きである。
エルエ国では、全員が王を信奉し、王と共に本気でユガルア大陸の統一を目指しているのである。
だから、軍議には、そこに集まった全員が真剣な気持ちで参加していた。
自分の保身のためだけに、多くの者が参加していたフェズ国とは大違いである。
「メオ国の占領が終わりました。王よ」
軍議の初めに、エルエ国宰相デゼイルキが王に報告をする。
「うむ、そうか。皆の者よくやってくれた」
そう答えた、玉座に座るエルエ王は若かった。
多くの王の候補者を出し抜き、玉座に座った王の名は、ギャジィルと言う。ゼルバが予想した王である。
その齢はまだ20にも満たない、若き王である。
しかし、その若き王は、ユガルアの統一を望み、実際に戦争を始めてしまった。
「また、五国に対して、降伏する書状を出して置いたのですが……」
だが、その心がどす黒いというわけではない。
「やはり、どこも応じぬか」
「はい、どの国も王の優しき心を理解しないようで……」
エルエ王が戦争を始めた理由は単純である。
争いのない国を作るためである。
全ての国を統一してしまえば、争いは起こらない。
そのために戦争を始めたのである。
「ふっ、優しさなどないさ。これは侵略だよ。確かに、私はその先に平和を求めている。だが、その為に戦争を起こしているのは事実なのだ。我が軍門にくだれなどふざけた命令を聞く国がいないのは当たり前だろう」
「はっ!しかし……」
「もう良い。そんな話をするために軍議を開いているわけではない。」
「申し訳ございません。続けさせていただきます。メオ国が滅び、メナ国の者どもは逃げ出しているようです」
その報告を聞き、その場にいる者達はざわめく。
「今まででかい顔をしてきて、いざとなったら逃げるのか小心者どもめが」
「滅んで当然の国ですな」
戦争が起き、勝ったのだからその顔は全員楽しそうな顔をしている。
しかし、エルエ王や、一部の将軍はそんな楽観的な様子ではなかった。
「静まれ!ここまで容易に終わる事は予定通りだ。問題はこれからだ」
エルエ王の言葉に、軍議に参加している者達の顔が引き締まる。
「予定より速いが、我々はこれよりフェズ国に攻め込む。異論はあるものはいるか?」
エルエ王がそう言うと、再びその場がざわめいた。
先ほどの楽観的な雰囲気と違い、困惑したような顔をするものが多い。
エルエ王が言った通り、事前に話合った予定よりも圧倒的に速いからだ。
「お言葉ですがエルエ王様。まだメナ国は落ちておりませぬ。もうフェズ国を攻めるのですか?」
メオ国は落ちた。しかし、メナ国にはまだ攻め入ってすらいないのだ。
「ああ、メナ国の貴族共は逃げているのであろう。ならば、メナ国は少数で落とし、同時にフェズ国へと進む。他に異論はあるものはいるか?」
エルエ王が再び臣下へと問うと、王の前へと一人の男が出て来て跪いた。
その男を見て、その場にいる者がざわめく。
「なにか意見があるのか、ジアヒス?」
「いえ、素晴らしい考えだと思います。我ら四傑将も同じことを考えていました」
エルエ王国には、四傑将と呼ばれる特別な将軍がいる。20年前の戦争で、特別活躍した将軍だ。
それぞれ、武、守、知、秀と呼ばれていた。
その中でも、ジアヒスは秀の将である。
「その四傑将が、お前以外見当たらないが?」
王は全将軍に、召集をかけていた。
しかし、それでも何かと理由をつけて欠席をするものはいる。
「皆準備をしているのです」
「なんのだ?と聞くのは野暮か」
エルエ王は楽しそうに笑った。頼もしい部下を持って嬉しかったからだ。
「もちろん、戦の準備にございます」
「そうか……他に!意見のあるもんはいるか!」
エルエ王は突然大きな声を出す。
しかし、エルエ王と秀の将、双方の意見に反対意見を出すような者はいなかった。
「ではジアヒスよ。お前ならば、最初にフェズ国のどこに攻め入る?いや、お前たちはどこを攻め入る事を想定している?」
「それは――シタダイルでございます」




