シタダイル丘の戦い③
フェズ国王都キエラ――
そこは王都であり、豊かな都、それにその都の中心には王の住む立派な城がそびえたっていた。
その城の更に奥深くの一室に、フェズ国の王はいた。
その部屋には、幾人もの美しい女性がおり、その誰もが扇情的な格好をしていた。
その女達は、中央にある寝所で裸で寝転がっている、でっぷりと太ったフェズ国王へと群がっていた。当然、群がった女達はフェズ国王へ、ありとあらゆる手段で奉仕をしているのだ。
これは、ほぼ常に行われている事であり、奉仕が行われない時間はほぼ存在しない。例えフェズ国王が眠っていようとも、邪魔にならない程度に行われる事である。
もちろんそれは、フェズ国王が命じてやっていることであり、女達の多くは無理矢理連れてこられた者が多い。何か少しでもフェズ国王の機嫌を損なう事があれば、自分はおろか、家族や親しい者まで皆殺しにされてしまうかもしれないからだ。
だから女達は、必死に扇情的な格好や動きをして、フェズ国王に奉仕するのだ。
その部屋の扉が突然開かれる。
「ん?飯の時間か?おやつか?」
部屋の中央にいたフェズ国王は、巨大な体をゆっくりと起こした。
そして、扉を開いた人物を見ると、すぐにフェズ国王は寝所へと寝転がり直した。
「なんだ、ビルガンか」
部屋へと入ってきたのは、フェズ国将軍の一人、ビルガンであった。
多くのフェズ国王への報告は、ビルガンがおこなっている。
しかし、それでもビルガンがフェズ国王の元を訪れるのは、一月に一回もない。
何を報告しても「好きにしろ」と言われるだけであるし、機嫌が悪い時は、ビルガンが部屋を訪れただけで女が殺されることもあった。
「王よ。一大事でございます」
それでも、今日だけはどうしても、ビルガンはフェズ国王に報告しないといけない事があったのだ。
それは当然、隣国であるエルエ国が、メオ国に攻め入ったことである。
「ふーん」
「あっ、あっ!」
しかし、フェズ国王は一大事と言われても興味がなさそうに、再び女で遊びだす。
ビルガンは、それを気にすることはない。いつものことだからだ。
「エルエ国が、メオ国に攻め入りました!」
そして、それを告げた。
「へぇ、それって何か俺に関係あるのか?」
「あああ……王様ありがとうございます……ああ!」
フェズ国王は愚王である。しかし馬鹿ではない。
エルエ国が、メオ国を攻めたという事が何を招くかもわかっている。
わかった上で、興味がないのだ。
ただ、自分の快楽さえ得られればいいのだ。
「エルエ国は、直に我が国にも攻め入って来るかと思われます。軍議を開く許可を頂きたく、お願いに参りました」
ビルガンは頭を深く下げる。
その姿を、フェズ国王は見てはいないし、見る気もない。
それでも、ビルガンは頭を下げるのだ。
「好きにしろ……いや、待てよ。俺もその軍議には出る。始まったら呼びに来い」
フェズ国王が軍議に出ることを決めたのは、ただの気まぐれである。
最初に話している時は本当に出る気はなかったし、ふと思い立って出ることにした。本当にそれだけだ。
「ははっ!王が軍議に来てくださるとは、とても心強い事です。臣下一同お待ちしております」
ビルガンは深く下げていた頭を上げると、さっさと部屋から出て行った。
その閉めた扉から、女達の嬌声が一際大きくあがった。




