シタダイル丘の戦い①
ギヨウが、ゼルバから戦が起こる話を聞いてから半年の時が経った。
その間、前と変わらず、ギヨウは一人で暮らし、畑を耕していた。
「ふぅ……まだか……」
あの日、ゼルバは言った。
『とはいえ、いつエルエ王が死ぬかは誰にもわかりません。エルエ国に新しい王が誕生するまで、辛抱してくださいギヨウ。時が来ればまた呼びます。もちろん、それまでに何度来てくれても構いませんがね』
そう言われて、もう半年である。
流石のギヨウも待ちくたびれてしまう。
しかし、その時に、ゼルバはこうも言ったのだ。
『なんで、俺にそんなに肩入れしてくれるんだ?』
『ふっ、私があなたに期待しているからですよ。私と肩を並べて戦って欲しいからです』
口が上手いだけだとも言える。
だが、それでもギヨウは素直に嬉しかったのだ。
「おーい!ギヨウ!とんでもない事が起きたぞ!」
いつも通り、ギヨウの元をシンザとダククガの兄弟が訪れて来る。
しかし、様子はいつも通りではない。
「どうしたんだ?」
「街で話を聞いたんだけどよ!エルエ国がメオ国に攻め入ったみたいなんだ!」
それを聞いて、ギヨウは楽しそうに口の端を持ち上げた。
「何笑ってるんだよギヨウ!とんでもない事だぞこれは!」
弟のダククガは、震えた声音で喋る。
一国が朝廷に攻め入った。それはとんでもない事だし、それを笑うのは不謹慎なことなのだろう。
「悪いな。それでも戦に出れることが嬉しいんだ俺は」
しかし、それでも、ギヨウは戦が始まる事が嬉しかったのだ。
「それで、悪いんだけどよ。また畑を頼みたいんだ。迎えも来たみたいだからさ」
「あ、ああ。いいけど……迎えって?」
その時、ちょうどよく馬に乗ったシルルが走り込んできたのが、シンザ達の目にも見えてくる。
「あ……ゼルバ様の……」
シルルがギヨウ達の元へと着くと、シンザとダククガは頭を深く下げる。
「おいおい、頭なんて下げなくていいぞ」
しかし、ギヨウはそんな事を言う。
「お前は、頭を下げろ」
シルルは一言目にそう言うと、ギヨウの頭を手で触った。
「それより、ついに来たんだな」
ギヨウは、やはりとても楽しそうにシルルへと笑いかけた。
「なんでお前はそんなに楽しそうなんだ」
「こいつ、ちょっと変ですよね!」
ダククガが話に乗っかってくる。
「ちょっとではない。凄くだ」
シルルは楽しそうに笑う。その美しい顔に、シンザとダククガは顔を赤らめた。
「そんなことより、早く行こうぜ」
自分が馬鹿にされたというのだが、ギヨウはそんな事は気にしない程機嫌がよく、待ちきれなかった。
だから、すぐに自分の馬へと飛び乗ったのだ。
「ああ、ゼルバ様がお待ちだからな」
シルルとギヨウ、二人は馬を並べて出発しようとする。
「この馬鹿が、いつも迷惑をかけてすまないな」
その前に、シルルはシンザとダククガへそう言っておく。
「い、いえ!任せてください!」
「迷惑なんてかけてないだろ」
ギヨウはそう言うが、二人の耳にはそんな言葉は届かなかった。
「よし、行くぞ!」
「ああ!」
今度こそ、二人は馬を走らせて、再びゼルバの元へと向かったのだった。




