新天地⑦
勝手に盗賊を討伐し、家へと戻って来たギヨウだったが、家の前に馬が何頭も止めてあり不思議に思う。
「なんだこれ?」
(俺の家は馬小屋じゃないんだけどな)
困りながら、ギヨウも近くに自分の馬を止めて、家へと入ろうとしたときにふと気づく。
見慣れた馬が止まっていることに。
(馬は10頭ほどいるけど、まさかこのボロ小屋に10人入ってるって事はないよな?)
それにしては静かすぎるし、そんなことは絶対にないと思うのだが、心配しながら家の扉をギヨウは開ける。
そしてホッとした。
「おい、シルル」
家の中にいたのは、ギヨウが考えた通りシルルのみがいたからである。
「やっと帰って来たのか?どこに行ってたんだ」
シルルは、勝手に家の中に入って居座っていた人物にしては、実にふてぶてしい事を言う。
「ちょっとな……表の馬はなんだよ?」
シルルの馬がいるのは気が付いたが、一人で他の馬を連れて来たわけはない。
恐らく、予想よりも早いが、野盗を討伐しに来たのだと予想は出来るが。
「ああ、少ないが、私の隊を連れて来たからな。野盗を討伐するためにな」
やはり、という感じではある。
しかし、その野盗というのは、先ほどギヨウが退治してしまったわけだが。
「そいつらはどうしたんだ?」
「ああ、事情を聞きに村長の元に向かわせたよ」
それはつまり、全く持って無意味な事をしにいった事となる。
「それは悪かったな」
なので、とりあるギヨウは謝って置いた。
「?」
当然、シルルは理解できずに小首をかしげる。
「ていうか、お前は行かなくていいのかよ?隊長なんじゃないのか?」
口ぶり的には、シルルが部隊を率いてきたように思える。
「ああ、用事は二つあってな。一つは野盗の討伐だが、もう一つはお前だ。ギヨウ」
「俺?」
全く身に覚えがなく、今度はギヨウが小首をかしげる番となった。
「そうだ。いつでも来いとゼルバ様は言っていただろう。なのに中々来ないからゼルバ様は待ちわびていたぞ」
「あ、ああ。それはだな……」
もちろん頭の悪いギヨウとて忘れていたわけではない。
ただ、色々な理由があった。
時間がかかるとか、辿り着く自信がないとか、忙しかったとか、そんなだ。
「色々あってな……ほら、正面の畑見たろ?俺が作ったんだ」
「見てないな。正面には人の死体ならあったぞ」
死体のインパクトに、畑は負けてしまったのである。
「ええ!じゃあ今から見て来いよ!」
「面倒だから嫌だ」
(まあ、人の作った畑見て喜ぶ女ではないわな)
とはいえ、せっかく作った畑を見せびらかせなくてギヨウは少し残念である。
「はぁ……わかった。見に行ってやる」
ギヨウの顔を見てか、シルルは仕方なく立ち上がると、扉の方へと向かう。
「お、おお。ちょっと待てよ」
その後を、ギヨウは急いで追ったのだ。
しかし、家から出たシルルは部下と鉢合わせしてしまった。
「シルル様!村長からの話は終わりました」
「ああ、ご苦労」
「村長の話では、ここからそう遠くない森に野盗どもの住処があるようなのですがどういたしましょうか?」
更に、ギヨウを無視して勝手に話を始めてしまう。
「そうだな――そんなに数はいなさそうという話だし、とりあえず行ってみるか」
「はっ!雨が降ってますが」
「むしろ好都合だな――おい!ギヨウ!」
「なんだよ」
話が始まってしまい、座り直したギヨウは突然名前を呼ばれて、不貞腐れたように返事をした。
「お前も着いて来い」
「嫌だね」
その返事が意外だったのか、シルルは驚き、不機嫌そうな顔をする。
「いいから来い」
「さっき行って来たんだよ」
「は?」
「もう全滅させてきた」
ギヨウの言ったことが意外だったのか、シルルは少し考えた後に怒り、怒鳴った。
「お前――そういう大事な事は先に言え!」
「だからさっき謝っただろ」
「さっきのはそういうことか!だいたいな――」
「あの……」
言い合いが始まりそうになった時に、それを防ぐために、置き去りにされた部下が口を挟んでくる。
「それで、どうしましょうかシルル様」
その言葉に、シルルは冷静になって考え出す。
少しの間の後、シルルは再び話し出した。
「野盗の死体はどうしたんだ?」
「そのままにしてある」
「お前の事だからそうだろうな……じゃあ、お前たちはその野盗の住処を確認して来い。それが終わったら村長に報告して、そのまま帰るんだ」
「はい!シルル様はいかがされるのですか?」
「私はこいつとゼルバ様の元へ行く」
ギヨウはシルルに指さされる。
「え?今からか?」
「ゼルバ様が待ってるからな」
どうにもギヨウには拒否権はなさそうである。
「わかったよ……ちょっと待っててくれ」
そう言うと、ギヨウは家の外に出て、街へと向かおうとした。
しかし、すぐに足を止める。
家から出たすぐの場所で、シンザとダククガを見つけたからだ。
「どうしたんだこんなところで?」
「いや、お前の家に兵隊が来てたからよ……」
元は明日来るとは言っていたのだが、二人は心配で見に来たのだ。
「ああ、ちょうどその話なんだが、ゼルバに呼び出されちまったから、戻って来るまで畑の面倒を見てもらえないか頼みに行こうと思ってたんだ」
「ゼ、ゼルバ様に!ギヨウ……お前、何やったんだ……」
二人は勘違いして驚くが、ギヨウは面倒なので訂正はしなかった。
「まあとりあえず、畑の面倒頼むよ」
「あ、ああ……生きて戻って来いよ」
「ああ、ちょっと行ってくるわ」
ギヨウは二人に挨拶をすると、すぐに家へと戻る。
その時には、シルルは既に家から外に出て馬に乗っていた。
「もういいのか?」
「ああ」
「じゃあ行くぞ」
まだギヨウは馬にすら乗っていないのに、シルルはゆっくりと馬を走らせ出してしまう。
「お、おい!ちょっと待てよ!」
ギヨウは急いで馬に乗り込むと、その後をやはり急いで追ったのだった。




