エルエ国滅亡の日②
ゼルバの軍は、軍備が終わると進軍を始めた。
その中には、当然アカツキ隊も入っている。
ゼルバの軍の数は、決して多くはない。
総勢二万の軍隊である。
エルエ国も限界であるように、フェズ国も限界だったのだ。
それでも差がついたのは、やはり兵だけでなく将を失った差が大きかったということなのだろう。
それは、行軍が始まった最初の日の夜の事である。
当然、その日は特別な日ではない。
だが、アカツキ隊にとっては、アカツキ隊を再編成してから初めて過ごす夜であり、久しぶりに隊が全員集まった日でもあったのだ。
そのため、皆それぞれ、同じ隊や仲の良い者同士で火を囲いながら、酒を飲んでいた。
「ゼン、お前は百兵隊長になったが、驕るでないぞ。戦場で油断をすれば、待つのは死のみだ」
「はい!リーグカル兄さん!」
リーグカル千兵隊長は、酒も飲まずに甥のゼンの昇格を祝い、教えを説いた。
「ボズル五百兵隊長だ!」
「でけえ!」
巨漢のボズルはいるだけで存在感があり、新米の兵士を奮い立たせる。
「でへへ、なんかいい気分だなぁ」
「調子に乗るなよこいつ!」
「だらしない顔しない方がいいよ」
古株のダンレンやイイルダは百兵隊長から昇進していないが、変わらず新米の兵士への指導をしている。
「老人の儂は、そろそろ引退したいんじゃが……昇進されても困るわい」
「そう言うなよじいさん。あんたにはよく助けられる」
ルイグメとゼオヤムギアは五百兵隊長になっていた。
もっとも、ルイグメは昇進には前向きではないようであるが。
「ついに戦が終わるってよ」
「ああ、でもギヨウは戦い足りねえって言うだろうな」
ユモンザとジャラハクガは百兵隊長である。
「ついて行くのも大変だけど、ついてきて良かったよな」
槍の名手イズエラは、五百兵隊長になった。
だが、相変わらず馬に乗るのは下手なので、歩兵部隊を率いている。
その仲間達の様子を、ギヨウは少し高い所から見ていた。
隣には、副長のジェスに、シルルとミュエネ、軍師のローゼオロメメアがいる。
「なんとかなったな」
先の戦いで失った兵に加えて、五千兵隊を作るのは難しかった。
だが、こうやって実際に集まった兵の多さを見ると、ギヨウにもこみ上げてくる想いがある。それは、満足感であろうか?
「と言っても、まだ四千人しかいないんだけどね」
実の所、この場にいない兵がいる。
それは、ギヨウがエルエ攻めには連れて行かないと決めた、オグルブの残党である。
オグルブの息子ルベオダを千兵隊長とし、千の兵を残してきた。
「だが、ちょうどよかったんだ」
そして、その千の兵の多くは新兵であった。
「訓練が厳しすぎて逃げてないといいんだけど……」
「逃げるような兵は、アカツキ隊にはいらないだろう」
ルベオダには新兵の訓練を任せておいた。
まさに、ちょうどいい役割である。
「さて、俺らも混ざるか」
ギヨウは仲間達の元へと走っていく。
長い行軍はまだ始まったばかりである。




