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エルエ国滅亡の日①

 アカツキ隊が休みを受けてから、一月ほどが経つ。

 その間に、アカツキ隊の再編成は終わり、アカツキ隊は五千兵隊になっていた。

 そして、ギヨウは早く戦場へと向かいたいと思っていたのだ。

 そんなギヨウに、ついにゼルバからの呼び出しがかかる。

 ギヨウは、意気揚々とゼルバの元へと向かったのだった。

 


     ♦



 ギヨウは、シルルとミュエネ、ローゼオロメメアを連れて、ゼルバの元を訪れる。


「よく来ましたねギヨウ」


 それを迎えたゼルバの台詞はいつも通りであったが、なんだか妙にすっきりとした顔をしているとギヨウは思ったのだ。

 

「どうだ?アカツキ隊はちゃんと五千兵隊に出来たか?」


 着いたギヨウに、さっそくガンビカが絡んでくる。


「まだなら、俺の兵を貸してやろうか?」


 それは、親切心からではなく、先輩風を吹かせたいだけだろうと容易に想像が出来た。


「いや、悪いけど、もうちゃんと集めたよ」


 だが、それは逆にギヨウの調子のいい言葉を引き出してしまうだけの結果となった。


「ふっ……そうかそうか!まあ、なんかあったら言えよ!」


 しかし、ガンビカはそれに負けることなく、ギヨウの背中を叩いたのだった。


「そろそろ、よろしいでしょうか?」


 話が終わったのを見て、ゼルバが声をかける。


「はい!申し訳ありません!」


 それを聞いて、ガンビカは一瞬で背筋を伸ばして返事をした。ギヨウに対しての態度とは大違いである。


「それで、次の戦が始まるんだな?」


 ギヨウは、期待を込めてゼルバへと問う。


「そうですね」


 そして、ゼルバは期待通りの答えを出したのだ。


「ただ――」


 しかし、ゼルバのその言葉には続きがあった。


「戦と呼べるものになるかどうか……」


 ゼルバの意味深な言葉に、ギヨウは疑問を浮かべる。


「どういうことだよ?エルエ国と戦いに行くんだろ?」


 ギヨウの言葉に、ゼルバは困ったような、呆れたような顔をする。


「ギヨウ、あなた今戦線がどこにあるか知りませんね?」


 そう言われて、ギヨウは焦る。

 元々、あまりそう言う事を気にする性格ではないが、それくらいは把握しておいてほしいというゼルバの気持ちを感じ取ったからである。


「え!ま、まあ、アカツキ隊の編成とか……色々大変でよ」


 色々の部分で、ギヨウは三人を見る。

 代わる代わるに襲い来る三人の相手で、ギヨウは寝不足である。

 だが、さしものゼルバにも、その状況を読むことは出来ず、珍しくゼルバは小首を傾げる。


「まあ、いいでしょう。地図を見てください。今の戦線は――ここです」

「ここは……!」


 ゼルバが指差したところを見て、ギヨウはひどく驚いた。


「そう、貴方が倒した、守の将ズェガェの城です」


 そして、それはつまり、


「エルエ国の王都と目と鼻の先じゃねえか」


 そう言う事になる。

 だが、そうなるとギヨウには疑問が浮かぶのだ。


「どうしてそんな事になってるんだよ。ガエロオ将軍とマチェバナン将軍は一直線に進んでいったのか?」

「いいえ、ここから、ここまでの領土は既に占領を終えています」


 ゼルバが示した範囲は、エルエ国の半分ほどであり、現在の戦線からフェズ国側の全ての領土であった。

 それに、やはりギヨウは困惑する。


「なんで……こんなに早く?」


 今までの苦戦が嘘のようである。


「言うまでもありませんが、敗北を続けたエルエ国にはもはや兵が残っていないのです。人と言うのは、無限に生えてくるものではありません。もはやエルエ軍には我々の攻撃に抵抗する力はありません」


 さらに言うのであれば、四傑将が三人も討たれた事実も大きい。

 その事実は、兵だけではなく、民からも抵抗する気力を奪っていたのである。


 戦にならないかもしれないと言うのは、そう言う事である。

 あっさりと終わってしまうかもしれないのだ。


「でも、戦線がここってことは、ここで止まってるんだよな?」


 ギヨウが意外に鋭い事を言う。


「最後の抵抗といったところでしょう。それを、我々が壊しに行きます」

「なるほど」

「そして、そのままエルエ国王都ルトへと攻め込みます」


 それが決着というわけである。


「でも、エルエ王ってもう逃げてたりしないのか?」


 ギヨウが、やはり鋭い事を聞いた。


「私もそれは考えたのですが……おそらくエルエ王は、まだ王都にいますね」

「なんでそう言えるんだよ」


 ゼルバは頭を押さえ、嫌そうに答えた。


「ただの勘ですね……」


 それは、予想ですらないのだろう。

 だから、ゼルバは嫌そうな顔をしたのだ。


「私はエルエ王の事をよく知らないので、余り滅多な事は言えませんが……この手の人間は、最後まで王としての責務を果たそうとするものですよ」


 それに加えて、戦線の敵の必死な守りというのもある。

 だが、その両方の理屈よりも、ゼルバに取ってその答えは、ただの勘でしかなかったのだ。


「まっ!王がいようがいまいが、王都を落とすのは大事な事だもんな」


 結局ギヨウは、そういう単純な答えに辿りつくのだ。


「そう言う事ですね」


 その簡明さに、ゼルバは小さく笑った。


「という事で、戻って軍備を始めてください」


 そして、それに影響されたのか、ゼルバも簡単にそれを言ったのだ。


「エルエ国を滅ぼしますよ」

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