女達の想い⑨
朝になる。
横で裸で気持ちよさそうに眠っているローゼオロメメアを見て、ギヨウは頭を抱える。
(なんでこうなったんだ……)
昨夜は混乱していたとしか言いようがない。
術中にはまってしまったとしか言いようがないだろう。
だが、起こってしまったものは仕方がないとして、ギヨウはローゼオロメメアに布団をかけると、散らかった服を片付けだした。
「ギヨウ?」
その時、部屋の扉が開いてシルルとミュエネが入って来る。
「お前……」
そして、目に映る光景を見て、シルルが何かを言おうとしたが、途中でやめる。
その言葉がなんだったかはギヨウにはわからないが、いい言葉ではないのはギヨウにも容易に想像がついた。
何故なら、シルルもミュエネも引いたような顔をしていたからだ。
「早く朝食作ってね……」
二人は、いつものようにそれだけ言うと、部屋を出て行った。
その音で、ローゼオロメメアが起きる。
「ん……」
ローゼオロメメアはすぐさま起き上がると、裸のままどこかへと行こうとする。
「お、おい、どこに行くんだ!」
流石に寝ぼけて裸のまま外に出られても困るので、ギヨウは慌ててローゼオロメメアを止めた。
「どこって……自分の部屋に帰るんだよ」
しかし、別に寝ぼけてもいないようで、そのままローゼオロメメアは部屋へと帰ってしまう。
♦
それから何事もなく、四人で朝食を取る。
シルルやミュエネもその頃には普通になっており、ローゼオロメメアも普通に特に変な様子はなかった。
しかし、朝食を取り終えるとギヨウは身構える。
流れを考えると、ローゼオロメメアがギヨウに付いて回ると考えたからだ。
「じゃあ、私達は用事があるから」
だが、三人はギヨウを置いてどこかへと行ってしまう。
それ自体は変な事ではないが、身構えていたギヨウからすると肩透かしを食らった形になり、取り残されたような気分になったのだ。
♦
それは、三日前の話である。
ミュエネの様子がおかしく、シルルが話を聞きに行った時の事である。
「それで、どうしたというのだ?最近様子が変だぞ」
シルルには、ミュエネの様子がおかしい理由はわからない。
ただ、ギヨウの事を意識していると言うのだけは簡単にわかる。
(おおかた、敵に捕らわれて、ギヨウへの気持ちが溢れていると言うところだろう)
そのため、シルルはそう予測していた。
「その前に……」
しかし、その話をする前にミュエネはローゼオロメメアの方を見る。
「私に席を外せと言いたいのだな」
直接的には言われなくとも、ローゼオロメメアにはその意味が理解できる。
「だが、私にも関係ある話なんだ。話していいぞ」
そして、話の内容がわからなくても、ローゼオロメメアにはこれから話す内容も容易に予測が出来るのだった。
「え……」
「さっきからこうなんだ……諦めるしかないぞ」
シルルは戸惑ったが……ローゼオロメメアの様子を見て、シルルと同様に諦めて話し出した。
「オグルブに囚われていたでしょう?その間、オグルブが毎日……その、してて……」
「ああ」
「毎日、その声を聞かされていて、私もギヨウといつかそうなると思ったら……意識しちゃって……」
シルルが考えていたのと少し違うが、意識しているのはあっていた。
「それで、ギヨウを避けていたわけだ……だが、いつまでもそう言うわけにもいくまい」
「うん。だから先に謝らせて、シルルごめんなさい!」
ミュエネは突然シルルに謝る。
「あ、いや、なんだ急に?」
突然の事に、シルルは戸惑うしかない。
「私が先に……ギヨウと……いい?」
ミュエネは話しづらそうに、シルルに言う。
直接的なことを言われなくても、シルルにもなんのことかはわかる。
「わ、私はギヨウの事は別に……」
そもそも、そういう前提で話されてもシルルは困る。
そのため、シルルはもじもじとする。
そんなシルルに、ローゼオロメメアが肩に手を乗せる。身長の差があるので、かなり無理をして手を伸ばしていた。
「機会を逃すと、一生手に入らなくなることもある。素直になった方がいいぞ」
そして、したり顔でそう言ったのだ。
だが、的確な助言ではあった。
「あ、ああ……いや……そうだな……」
だからこそ、シルルはぶつぶつと迷ったように呟くと、意を決したように言った。
「私も……ギヨウが好きだ」
「うん」
ミュエネは短く返事をし、ローゼオロメメアは得意気に胸を張って頷いていた。
「じゃあ、これ……」
そして、ミュエネはシルルへと布を渡す。
「なんだこれは?」
シルルは受け取って、薄い布を広げるが、何かわからなかった。
「何って……服よ……自分の分だけというのは、悪いかと思って……」
「服?服か!?これが?」
普段のシルルからすれば、この布が服だとは認識できなかったのだ。
「それで、今夜……私が先に行くから……シルルは明日ね」
「今夜!?早くないか?」
ミュエネの行動は、余りにも極端である。
「じゃあ、その次が私でいいな?」
だがシルルを置いといて、ローゼオロメメアがそんな事を言い出したので、二人は驚いた顔でローゼオロメメアの方を見た。
「一応聞くけど……何話してるのかわかっているのよね?」
「当たり前だ」
そもそも、ローゼオロメメアは冗談を言う方ではない。
「私は子供が欲しいんだ」
更に続けて、ローゼオロメメアはとんでもない事を言った。
「私の体と性格上それが難しいのは理解している。だが、ギヨウなら問題はないだろう」
ローゼオロメメアは自信満々にそう言うが、どこからそんな自信が湧いてくるのか理解できない。
「お前、そんなにギヨウの事好きだったのか?」
差し当たって、シルルが一番聞かなければいけない事を聞く。
「男の中では一番好きだぞ。少なくとも、ギヨウ以外は考えられない」
それに、ローゼオロメメアは即答した。
しかし、なんとも微妙な回答である。
「ギヨウは手を出さないと思うけど……」
ミュエネが控えめに言った。
「私が策もなしに挑むわけがないだろう。あいつは意外と情にもろくて流されやすいからな。そこをつけば簡単だ」
二人は悩む。
「まあ……いいんじゃないか?ギヨウが手を出すかは別として、ローゼオロメメアも同じ家に暮らす家族ではあるんだし……」
「変な相手が入るよりはいいかもね……」
どう見ても引く気のなさそうなローゼオロメメアを前にして、二人は折れるしかなかったのだ。
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そして現在に戻る。
三人は、ギヨウを置き去りにして談笑していた。
「正直、こんなに上手く行くとは思わなかった」
「流されやすいの問題ね」
「私達がしっかりと見ていないといけないな」
三人は、楽しそうに笑う。
紆余曲折はあったが、結局三人はギヨウを巡って対立することはなく、仲睦まじい関係を築いたのだった。




