女達の想い⑤
朝になる。
ギヨウは目を覚ますと、自分が裸であることに気が付く。
それはすなわち、夢ではなかったという事である。
そして、夢ではないと言う事は、隣を見ると裸のミュエネがいるわけであった。
もう朝も遅くではあるが、昨晩は遅くまで起きていたため、ミュエネは起きていなかった。
ギヨウはなんとなくミュエネのお腹へ手を伸ばすと、その腹を撫でる。
(いや、別に腹を触るのが好きなわけではないんだけどな)
頭の中で言い訳をすると、ミュエネの腹からすぐに手を離す。
そしてギヨウは立ち上がると、ミュエネへと布団を被せ、おもむろに寝所の外に散乱した服を片付けだした。
「ああ、ぐちゃぐちゃだ」
ミュエネが着てきた服は、上等なものであり、ミュエネにとてもよく似合っていた。
勝負服という奴なのだろう。
ただ、ミュエネがこんな服を持っているのはギヨウも知らなかったが、この服を着て部屋へと入ってきた時点で、最初からギヨウとする覚悟を決めてきたのだろうと思う。
ギヨウがそんな考えを巡らせていた、その時だった――
「おい、ギヨウ」
部屋の扉が開き、シルルが部屋へと入ってきたのである。
ギヨウはひどく焦った。
状況が悪すぎるのだ。
ギヨウは裸で、大きくしており、ミュエネの服を持っていて、後ろには裸のミュエネが寝ているのだ。
どうあがいても言い訳でいない状況である。
「いや、シルル……これは……」
無駄であってもギヨウは言い訳しようとする。
そもそも、昨日は帰ってこなかったくせに、今帰って来るとは間が悪いものである。
「早く朝食を作れ。腹が空いた」
しかし、何故かシルルは平然とそう言うと、扉を閉めて下へと行ってしまった。
あまりにも不自然である。
普段のシルルであるなら、ギヨウの裸を見た時点で殴りかかって来るだろう。
「ん……どうしたの?」
話し声に反応したのか、後ろでミュエネが目を覚ます。
「ああ、今シルルが入って来てな」
これを言えば、ミュエネも驚くだろうと思ったが、
「なにか言ってた?」
ミュエネは何故か平然としていた。
「いや……早く飯作れって」
「そう。私も行くから、少し待ってて」
そう言うと、ミュエネは顔を少し赤くしながら寝所の布で体を隠し、ギヨウから服を取ろうとする。
「いや、これは着れないぞ。洗わないと」
「あ……途中まで来てたものね……」
ミュエネは相変わらず顔を赤くしたまま、もじもじとしながら別の服へと着替えだした。
「行きましょうか」
「ああ」
そして、部屋を出て一階へと向かおうとしたのだが、部屋を出たところでローゼオロメメアに遭遇する。
「やっぱり大きかったじゃないか」
「え?」
ローゼオロメメア開口一番そう言う。何のことかわからずミュエネは困惑したが、
「声だ」
「あ……」
意味を理解すると、更に顔を赤くしたのだった。
♦
それから、四人で朝食を取ったのだが、驚くほど普段通りであった。
ローゼオロメメアはもちろん、シルルも、ミュエネもである。
少しそわそわしていたのは、ギヨウくらいだったのかもしれない。
しかし朝食が終わると、ローゼオロメメアはいつも通りに部屋へと戻り、シルルはどこかへと行ってしまった。
そこまでも変ではない。
だが、ミュエネはギヨウにぴったりとくっついて離れなかったのである。
いや、それ自体は変な事ではない。
元々はそうであった。
ただ、ここ最近は少し離れていただけである。
そして、洗濯をするために外に出たのだが、妙に周りからじろじろと見られているとギヨウは感じた。
「お、おう、おはよう隊長」
「きょ、今日はいい天気だな」
更に仲間達がどこか空々しいのだ。
「おい、イズエラ。なんか皆変じゃないか?」
そこで、ギヨウは偶然近くにいたイズエラへと声をかける。
「え、えっと、そりゃそうだろ……」
イズエラもしどろもどろである。
「なんでだよ」
「え!」
ギヨウが問い詰めると、イズエラは驚いたようにミュエネの方を見たのだ。
イズエラからすれば、言うべきかどうか悩んでいるのである。
「ミュエネがどうかしたのか?」
しかし、本人達が気付いておらず、ギヨウに問い詰められれば言うしかない。
「いや……その、みんな聞こえててさ……そりゃ気まずいよ……」
それを言われて、ミュエネは顔を赤くして、ギヨウの後ろに隠れる。
ローゼオロメメアに指摘されたとはいえ、そこまでとは考えもしなかったのだ。
「え……あ、ああ……そうか。悪かったな」
ギヨウも少し恥ずかしくなってしまい顔を赤くする。
そして逃げるように、二人はそそくさと川の人気が少ない場所へと向かったのだった。
その間二人は無言であり、川についてからも、お互い顔を赤くして黙りこくっていたのだ。
「そういえばさ」
その空気を変えるべく、ギヨウは洗濯しながらミュエネへ声をかけた。
「これどうしたんだ?」
それは、ミュエネが昨日着て来た服である。
「レシヘストに頼んで、ジェスの店から取り寄せてもらったの」
「そうか……昨日は言いそびれたけど、凄い似合ってたぜ」
ギヨウは笑顔で、素直にそう言った。
「そ、そう?ありがとう」
ミュエネはその素直さに戸惑いながらも礼を言う。
それで空気は変わり、洗濯を終わらせて家へ戻ると、二人は夜になるまでいつも通りに過ごしたのであった。
しかし、夜になるとギヨウは考える。
(あれ、これどうなるんだ?)
今はミュエネとギヨウの二人きりである。
何故シルルがいないのかわからないが、ここにシルルが加わるわけである。
その場合、昨晩みたいな事は出来ないと言う事になる。
だからと言って、シルルを追い出すわけにもいかないのである。
「ギヨウ」
ギヨウが考え込んでいると、ミュエネが話しかけて来て、ギヨウは身構える。
今、シルルがいないからである。
「ちょっと出てくるわ」
しかし、ミュエネはそう言うと部屋から出て行ってしまったのである。
「え」
なんだかギヨウからすると拍子抜けである。
「まあいいか」
しかしそう結論付けると、ギヨウは眠すために寝所へと入ったのだった。
そして、少しして部屋の扉が開かれる。
ミュエネが帰ってきたのだと思い、ギヨウはそちらを見る。
しかし、ギヨウの考えは外れる事になる。
「起きているな?ギヨウ」
部屋へと入ってきたのはシルルだった。




