女達の想い②
ギヨウを悩ませているのは、アカツキ隊の編成だけではなかった。
「なあ、ミュエネ」
それは、ミュエネの事である。
相変わらず、同じ家どころか同じ部屋に住んでいる。
しかし、今まではギヨウと距離の近かったミュエネだが、最近はどうにもよそよそしく、今も名前を呼ぶと、顔を赤くしてシルルの後ろから返事をするのだ。
「な、なにかしら?」
それは、オグルブに捕えられてから帰って来て以来である。
「ああ、森の民ってうちの部隊にはいれれないかな?」
「そ、そうね。族長に聞いてみるわ」
それが、誰に対してもであるなら理解できるのだが、
「ミュエネ副長、レシヘストさんが呼んでましたよ」
「今行くわ」
それはギヨウに対してだけなのである。
「なあ、シルル。なんか俺の事避けてないか?」
ミュエネがいなくなってから、ギヨウはシルルに問いかける。
「そうだな」
「だよな。なんでか、わかるか?」
「さあ、私も話は聞いてないからな」
ミュエネと一番仲の良いシルルにもわからないとなると、ギヨウにはお手上げである。
「でも、まあ――なんとなく理由はわかるけどな」
しかし、シルルには予想がつくようだった。
「なにっ!なんでだ?」
そこにギヨウは食いつく。
いつまでもミュエネと気まずい感じではいたくないからである。
しかし、理由がわからなければ、解決する方法もない。
「それは――」
「それは?」
シルルはもったいつけたが、
「そのうちわかるだろうな」
答えを出さなかった。
「いや、なんなんだよ!」
それに対して、ギヨウは大きな声を出す。
「大きな声を出すな。わかったよ。話を聞いてこよう」
シルルは、あまり気は進まないようであるが、立ち上がってミュエネの後を追う。
「ああ、頼んだ」
結局、答えをもらえなかったギヨウは、ただ待つ事しか出来ないのだった。
♦
部屋を出たシルルだが、何故かローゼオロメメアが廊下に出ていた。
「どうしたんだ?珍しいな」
ローゼオロメメアは、いつも部屋から出てこない。
部屋を覗いても、本を読んでいるだけである。
「別に、用があるから出て来ただけだ」
だが、ローゼオロメメアはそう答えただけだった。
「そうか」
シルルはローゼオロメメアの隣を通って、階段を降りていく。
そして、一階に降りると足を止めて振り返った。
「なんで付いてくるんだ?」
そこには、ローゼオロメメアがいたのだ。
「用があると言っただろう」
どうにも面倒な性格である。
「私に用があるのか?」
つまり、そういうことになる。
「いや、これから話す事に、私も関係あるからついて行くんだ」
それを聞いて、シルルは頭を悩ませる。
「関係あるとは思えないんだが……」
そもそも、
「何の話をしに行くのか、わかっているのか?」
そう言う話になる。
「もちろんだ。あれだけ大きい声で話していれば聞こえても来るさ」
やはり、シルルは頭を抱える。
「まあいいか」
しかし、自分に関係ない話だと分かれば、ローゼオロメメアも部屋に戻るだろうと考え、シルルはミュエネの元に向かう事にした。
そして外に出ると、レシヘストと話しているミュエネを見つける。
そして近づくと、ちょうどレシヘストはミュエネと別れる所だったようであった。
ミュエネの手には、上等そうな反物が握られていた。
シルルは声をかけようとしたが、振り返ったミュエネが先に口を開く。
「ああ、シルル。ちょうど良かったわ。その……少し話があるんだけどいい?」
先手をうたれて、シルルは面食らう。
だが、元々はミュエネの方から話してくれるのを待っていたので、むしろ良い展開であるとすぐに考え直した。
「ああ、構わないぞ」
「人気のない所に行きましょう。それと――」
ミュエネはローゼオロメメアの方を見る。
邪魔だと言いたいのだろう。
「私にも関係ある話だ」
しかし、ローゼオロメメアは頑なにそう言って、離れる気はないようだった。
シルルが肩をすくめると、ミュエネは困った顔をしたが、
「まあいいわ。行きましょうか」
そう言って、三人で話すことに決めたのだった。




