表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
184/395

マキュニシェの戦い⑮

 そこは、ゼルバの言った通りにそれほど遠くなく、敵軍にもあわずに、半日も行軍すれば着いた。

 ただ、それはつまり、エルエ国内ということである。

 そこは、街であり、城であった。

 しかし、荒廃しており、長らく人が住んでいないようであった。


「ここは?」


 ギヨウはゼルバへ聞く。


「ここは、シセナという土地です」


(シセナ?)


 どこかで聞いたような気がするが、ギヨウには思い出せない。

 

「ゼルバ様!」


 しかし、シルルは何かに気が付いたようで、驚いたように声を上げた。


「はい、ここは、昔私の父が治めていた領土です」


 シセナと言うのは、ゼルバの名前である。

 そして、ゼルバの生まれ故郷と言うわけだ。


「なんでこんなに荒廃してるんだ」


 エルエ軍が占領したというのはわかる。だが、それなら人が住んでいるはずである。


「人が住めないからですよ」


 それに対するゼルバの答えがそれだった。


「私の父は名将でした。そして、その父はエルエ国から見ると非常に邪魔だったわけです」


 そして、ゼルバは懐かしそうに城を眺めながら語りだした。


「ですが、正攻法ではゼルバ様の父上に勝利するのは難しかった」


 ベルベンがゼルバに続いて答える。

 ゼルバの出身地という事は、かつてゼルバの父に仕えていたベルベンからしても、思い入れのある地なのだろう。


「そして、エルエ国は汚い手に出たのです。それは、水源を毒で侵すと言う愚かな策でした」

「しかし、その効力は抜群でした。町民や兵の多くは苦しみ、一部の将にも影響が出ました」


 それを語るベルベンとゼルバは、とても苦しく、悲しそうな顔をしていた。


「そこに、エルエ軍が攻め込んできたのです。まだ子供だった私は逃げ、父は最後まで戦いました」

「私はゼルバ様を逃がすために、共に逃げたのです」

「そしてエルエ軍は勝利しましたが、水源が毒に汚染されていては人は住めません。そのまま放棄したのでしょう」


 とても自分勝手な話である。


「20年以上前の話ですけど、まだ使えるようになっているかどうか……」


 それだけ長く影響のある話なのである。

 そのため、普通は使われない卑怯な策なのである。


「帰ってこられただけいいでしょう。ベルベン、中央の広場に旗を立ててきてください」

「はっ!」


 ベルベンが、いつも以上に嬉しそうな顔で、その命令を受けた。

 そして、広場まで向かうと、ゼルバ軍の旗を立てる。


「長かった。本当に……」


 ゼルバが空を見上げる。


「ゼルバ様……」

「うっ、うう……」


 ゼルバの父に仕えていた古い家臣達は、歓喜し、あふれるほどの涙を流していた。


「さて、帰りますよ」


 しかし、ゼルバはあっさりと言った。


「いいのかよ?」


 ギヨウは聞く。

 20年ぶりに生まれ故郷に戻って来たと言うのなら、もっとなにかあるだろうと思う。


「ええ」


 だが、ゼルバはすっきりとした顔で言ったのだ。


「もう、いつでも来れますからね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ