マキュニシェの戦い⑭
戦が終わり、兵達は陣に戻って休みを取っていた。
そして、アカツキ隊も当然休みを取っていたのだった。
「いやあ、凄かったねギヨウと武の将の戦いは」
副長のジェスが上機嫌で語る。
陣に戻ってから行われる話のほとんどは、ギヨウが武の将オグルブを討ち取った話だった。
「もしかして隊長……将軍になるんじゃ?」
「まさか、まだ三千兵隊長だし、五千兵隊長があるんだぜ」
「でも、四傑将を二人も討ち取ったんだぜ」
「すげえよな……俺、アカツキ隊にいて良かったよ……」
アカツキ隊に初期からいるジャラハクガが、そう言って涙を流した。それにつられて、何人かが感極まって涙を流し出してしまう。
「それで、肝心の隊長はどこいったんだよ?」
しかし、その話の中心人物であるギヨウは、ここにはいなかった。
「ギヨウなら、戻ってすぐに呼ばれて本陣に行ったわよ」
そこに、ミュエネが姿を見せた。
「ミュエネ副長!」
「お体は大丈夫ですか!」
「俺達、心配で心配で……」
ミュエネが現れると、仲間達はミュエネの元へと殺到する。
「ちょっと……べ、別に大丈夫よ。何もされてないわ」
その勢いに、ミュエネは照れながら答えた。
「ほ、本当に?」
「ミュエネ隊長の体で!?」
本陣に行ったギヨウの事などいざ知らず、アカツキ隊はミュエネの話で盛り上がるのだった。
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そして本陣では、ゼルバが今回の戦の戦功を讃えていた。
「――の将を討ち取ったとして、褒章を与えます」
今回の戦に置いて、セニオガネスやセロガも相当数の敵将を討ち取っており、ゼルバから感状をもらっていた。
しかし、セニオガネスはともかく、セロガの顔はそれほど嬉しそうではなかった。
それもそのはずで、自分よりも大きな勲功を上げた者がいるからである。その名は、言うまでもない。
「では次に、この戦で四傑将を討った者がいます」
その言葉に、ギヨウに緊張が走る。
「ヨギ将軍!」
「ああ」
呼ばれる気満々だったギヨウは肩透かしをくらってしまう。
「秀の将ジアヒスを討ったとして、褒章を与えます」
「ふっ、ありがたくもらおう」
(俺がオグルブを討っている間に、もう一人討たれていたのか)
ギヨウはヨギを見る。
傷だらけのギヨウとは違い、ヨギの体どころか鎧にすら傷一つなかった。
(ゼルバが前に言ってたけど、やっぱり凄い奴なんだな)
「三千兵隊長ギヨウ!」
「は、はい!」
突然名前を呼ばれて、ギヨウは驚いて、少し変な形で返事をしてしまう。
そのため、普段のギヨウを知る者から笑いが出る。
「武の将オグルブを討ったとして、褒章を与えます。共に、五千兵隊長に昇格とさせていただきます」
「お、おう!」
ギヨウは更に驚くが、今度はいつも通り返事をする。
驚いたのは、昇格はあるかと思っていたが、今この場で言い渡されるとは思っていなかったからである。
感状をもらうと、ギヨウはセニオガネスとセロガの近くへと戻る。
「くそー、また先を越されたか」
「すぐに追いつく」
二人は小声で、ギヨウに聞こえるようにそれぞれ反応をした。
更に、少し離れたところにいるガンビカも何か言いたそうな顔をしていた。
(ガンビカも五千兵隊長だからな……)
ガンビカが何を言いたいかは、ギヨウにも容易に想像がついた。
「さて!それでは、これで終わりということで!」
ゼルバが明るく言う。
元より、この場にはゼルバの部下が多いし、そうでなくとも見知った顔ばかりである。身内ばかりということだ。
「それで、これからどうするんだ?やっぱり、このまま進むのか?」
だからこそ、ギヨウも遠慮せずに喋る。
「いえ、もう帰ります。エルエ軍に大きな被害を与えたのは間違いありませんが、こちらの被害も相応に大きいですからね。代わりにガエロオ将軍と、マチェバナン将軍の軍に出てもらいましょう」
それは、理にかなった話である。
「ただ――」
だが、ゼルバは話を続けた。
「少し、私の我儘に付き合って欲しいのです」
こんなことをゼルバが言うのはとても珍しい。その場にいる多くの者がそう思った。ただ、一部の歳老いたゼルバの部下は、何故か顔を抑えている者がいた。
「俺は帰るぞ」
しかし、内容も聞かずに、ヨギだはそう言ったのだ。
何故なら、ヨギにはゼルバが何をしようとしているのか、わかっているからである。
「ええ、構いませんよ」
ゼルバは、笑顔でそう言う。
ゼルバからしても、ヨギはそう言うと思っていたからである。
「では、失礼する」
ヨギはすぐさま背を向けてしまう。
そんなヨギに続き、ベルエッも頭を下げると去って行った。
「それで、我儘ってのはなんなんだ?」
ヨギが去ってから、ギヨウは聞く。
「いえ、大したことではないのです。ただ、行きたいところがあるというだけで」
「行きたいところ?」
ギヨウにはまるでわからない。
「ええ、そんなに遠くではありません。敵もいないと思います」
そう言われては、断るものなどいなかった。




